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第21話、身代わり。

 連判状を見て少しあきらめ気味になった僕だったが、巫女様は険しい顔で連判状をじっと見つめていた。


「これを集めるためにあんな暴力的なやり方で営業妨害をしていたんですね」

「何のことでしょうか?」

「とぼけないでください! 西通りでチンピラが営業中の店の店員に絡んで妨害しているのを見ているんですよ」

「これは異なことを。そのチンピラと私と何か関係があるとおっしゃるのですか? その証拠は?」

「……」


 証拠と言われて巫女様は黙ってしまった。確かに証拠はないのだ。


 いや、そうでもないか。


「ではこれについて説明していただけますか?」


 そう言って僕は机の上に何かを取り出した。


「……、どういうことですか?」

「見ての通り、ピストルの銃弾ですよ」


 僕が取り出したのはピストルの銃弾2つだった。もちろん、ピストルと同様、禁制品だ。隣で修道女さんがとんでもない顔になっているが、怖いので見なかったことにしよう。


「こちらは西通りで営業妨害していたチンピラのピストルから抜き出したもの。こっちは先日こちらのお屋敷に伺ったときに撃たれたときのものです。見てください。よく似てますね。同じものじゃありませんか?」

「……、く、だから証拠は残すなと言っておいたのに!」


 勝った! 商人はさすがにピストルの銃弾を見せられて言い逃れができなくなったのか、観念したようにつぶやいた。


「ええい、何をやっておる!」


 これで終わりだと思って気を抜いた瞬間、部屋の中に見知らぬ人物が飛び込んできて怒鳴り散らし始めた。


「こやつらはご禁制のピストルの銃弾を所持していた大罪人ではないか! 神殿の神官でもその罪は免れん。武士の情けでこの場で始末してやろう。者ども、出合えぃ。出合えぃ」


 全く持ってどこかで聞いたことのあるようなセリフと共に、部屋の中に数人の刀を持ったガラの悪そうなチンピラが飛び込んできた。入れ替わりに、怒鳴り散らした張本人と商人は後ろに下がった。


「勇者様!」

「2人とも、結界の中から出ないでくださいね」


 そう言うと、僕はソファーや机を蹴り飛ばして動きやすいスペースを確保しつつ、侵入してきたチンピラの動きをけん制し、一番近くまで来ていたチンピラを当て身(=パンチ)で気絶させ、刀を奪い取った。そして、瞬く間に残りのチンピラどもを切って捨てた。


「安心せい。みねうちじゃ」


 鉄の棒で殴られて倒れ伏している時点で安心も何もないのだけれど、こういうのは決まり文句なので気にしてはいけない。


「く、おのれ、抵抗するか。ものども、手加減は無用だ。やってしまえ!」


 後から入ってきた人物がそう怒鳴り散らすと、またチンピラが何人も入ってきた。今度は手にピストルを持って。


 慌てて僕が円結界の中に退くと、その瞬間に一斉にチンピラの手にあるピストルが火を吹いた。が、銃弾はすべて円結界によって遮られて力なく地面に落ちた。


「!」

「!!」

「ええい、撃て、撃て! 何度でも撃てぇぃ!!」


 チンピラたちは第2射、第3射と撃つが、すべて円結界によって阻まれて僕たちのところには全く到達することはなかった。そして、すぐに装弾数をすべて使い切り、撃ち方は止んでしまった。


「これはさらに決定的ですね」


 僕は結界の外に一歩出て、飛んできた薬莢の1つをつまんで拾い上げながら言った。薬莢はまだ熱かったから、ハンカチでつまんで拾った。


「もはや、誰がピストルを所持していたかは確定的に明らか。大人しくお縄に付いて……」


 と言いかけた瞬間、正面にいた親玉の手元が動いた。薬莢に意識が向かっていた僕は、それに気づくのがワンテンポ遅れ、アッと思ったときにはすでに手遅れだった。


「影走り」


パァン


「はぅっ」


 ハッと気が付くと、僕は床に転げていて、その前には同様に床に倒れ、苦悶に顔をゆがめる巫女様がいた。


「巫女様!」

「巫女様ぁぁ!!」

「……、み、巫女様だと!?」


 一体何が起きたのか分からなかったが、ピストルの銃弾は僕に当たることはなく、本当なら安全な円結界の中にいたはずの巫女様の身体を貫通してしまっていた。ステータスを見ると、HPが大きく減少して、しかも現在も減少中だ。出血が続いているせいだ。


 僕は怒りに任せてピストルを撃った親玉を刀の背で力いっぱいぶん殴り、隣でぶるぶる震えている商人に怒鳴りつけた。


「何をしている! 包帯と薬を早く持ってこさせろ! それから、神殿に使者を飛ばせ! 巫女様がピストルで撃たれて重傷だと! 早くしろ!!!」

「は、はいぃっ」


 画面蒼白になって飛び出して行った商人を目で追うこともなく、再び巫女様のところに戻ると、巫女様は苦痛に顔を歪ませてはいるものの、意識はあるらしく、僕の方を見て声を掛けて来た。


「良かった。勇者様は無事だったのですね」

「しゃべるな。今、手当てするから」


 と言っても、僕は忍者スキルしか取得しておらず、忍者には他人の怪我を治すスキルは存在しない。それに、今の僕は新しいスキルを取得することはできないのだ。


「修道女さん、お願いがあります」

「スキルですね」

「はい」


 なので、僕の代わりに修道女さんにスキルを取ってもらうことにした。本当なら、修道女さんはかなりの高レベルで上級職への転職が近いことを考えると、あまりたくさんスキルを取ってポイントを使ってもらうのは心苦しいのだけれど、そんなことを言っている場合ではない。


「『身代わり』を取ってもらえますか?」

「分かりました」

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