第19話、すべてを受け入れる仲間。
「預言の内容はどんな内容だったのですか?」
「西通りを力のある商人と住民が協力して再開発するようにという内容でした」
「え、再開発するなという預言ではなくてですか?」
「いえ、逆です。再開発するようにという預言です」
一体どういうことだ?と思ったけれど、ポイントは多分「力のある商人と住民が協力して」というところなのだろう。最初に却下されたのは力のある商人を巻き込んでいなかったからということか。
確かに預言には一理ある。力のある商人がいないと資金力や設計の面で限界があるから、せっかくの再開発が中途半端になってしまう可能性が高い。
「でも、今の再開発には住民の協力が不足しています」
修道女さんの説明を聞いて、巫女様が鋭く突っ込んだ。
そう、預言の内容は「商人と住民が協力して」なのだ。前回の再開発計画が商人の協力がなかったために却下されたのなら、今度の再開発計画は住民の協力がないから却下されないといけないはずだ。でも、実際には住民の協力なしに強行しようとしている。
「修道女さん、その内容、証明することはできますか?」
「ここに、正式の書式で預言内容の写しを取ってきました」
「さすがですね!」
「(そんなすぐ褒められると困ります)」
僕が褒めると、修道女さんは照れたように顔を横に向けてしまった。そして、何か聞こえない小さな声でぶつぶつと呟いていた。
「じゃあ、これで丸金屋のところに乗り込みましょう」
「行きましょう!」
「ちょっと待ってください!!」
僕と巫女様が勢い込んで商人のところに向かおうとするのを、修道女さんが力いっぱい引き留めた。
「どうしたんですか?」
「言いましたよね、自重してくださいと」
「でも、これだけ証拠が集まっていれば……」
「本当なら神殿で預言に耳を傾けていないといけない巫女様が、仕事を放棄して街中で政に口を出したというのは問題です」
「でも、預言が無視されているのは神殿にとっては大問題です」
「ええ、だから巫女様の正体は伏せて、あくまで神殿からの使者ということにしてください」
僕も勇者と名乗るのは避けた方がいいということで、あくまで神殿の中級神官という肩書で行くことになった。そのため、一度分社の方に立ち寄って、神官服を借りることになった。
中級神官の神官服を借り受け、着替えのために部屋を1つ貸してもらうと、修道女さんも神官服を持って一緒に部屋に入ってきた。
「修道女さんまで行くんですか?」
「そうですよ」
「危険ですよ」
「そんな危険なところならなおさら巫女様だけを行かせるわけにはいきません」
大変もっともな正論なのだけど、巫女様はスキル共有で職業補正なしとはいえ忍者スキルが使えるのに対して、修道女さんはそうではないのでリスクがその分高くなってしまう。何せ、相手は確実にピストルで武装しているはずだから。
「勇者様、どうして修道女さんはスキル共有が使えないんですか?」
巫女様がまたもや鋭い突っ込みを入れてきた。さっきから巫女様、特に冴えてるな。
「スキル共有ができるようになるには、すべてを受け入れる仲間にならないといけないみたいなんです」
「すべてを受け入れるとはどういう意味ですか?」
「多分、どんなことがあっても、僕を信じてくれる覚悟があるってことだと思います」
「何の話をしているんですか?」
修道女さんには僕と巫女様のスキル共有のことをまだ教えていなかったので、この場で教えてあげた。スキルの解放で巫女様が危険だったところだけは微妙にごまかしながら。
「そのすべてを受け入れるってもしかして……」
「何かわかったのですか?」
「いえ、なんでもないです」
修道女さんはそう言ったものの、顔を赤くして僕の一部にちらちらと視線を向けていた。
「なるほどです!」
巫女様も何か思いついたみたいだ。
「修道女さんも、勇者様を受け入れて1つになるといいのよ」
「しかし、それは巫女様に対する裏切りです」
「私がいいって言っているんだから」
「それはそうですけど……」
「私と勇者様が仲良くしているのをいつも羨ましそうに見てたでしょ」
「み、巫女様!?」
「私は修道女さんと3人で仲良くしたいなって」
巫女様と修道女さんは2人で何か話をしていたけれど、そのうち巫女様がこっちに来て僕を手近なソファーの上に押し倒した。
「巫女様、いきなりどうしたんですか?」
いつもより10倍くらい艶めかしい雰囲気をまとった巫女様は、僕の上にまたがって視界を塞ぐようにキスをしてきた。神官服に着替えるために上着を脱いでいるので、薄手の布越しに柔らかい体の感触が伝わってきてやばい。
「み、巫女様、修道女さんに怒られますって。て、修道女さん!?」
巫女様を制止して修道女さんの方を見ると、修道女さんは全裸だった。
「ゆ、勇者様のすべてを受け入れさせてくださいっ」
え、えええっ!!?
結論として、修道女さんの暴走は正解で、スキル共有は修道女さんにも使えるようになった。ただし、今日中に神殿に帰れないことは確定となってしまった。
「すいません。私がいながらこんなことに……」
「修道女さんのせいじゃないです。歯止めが利かなくなったのは僕の方ですから」
「いえ、あの、私の方も、その、思った以上に気持ちよくて、つい……」
途中から我慢できなくなった巫女様まで参戦してきて、最後の方は3人で何が何だか分からない状態になっていて、はっと気づいたときにはもう日も傾いてきていたのだった。巫女様は最後に2人がかりで攻められてソファーの上でぐったりしている。
「この後、どうしましょうか?」