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第14話、いちゃいちゃ潜入作戦。

「え、ここで一泊ですか?」

「はい。思った以上にデートの効果が高くてポイントの伸びがよいので、ここに1泊滞在すればさらに多くのポイントを貯められるのではないかと思うんです」


 商人の屋敷に忍び込むのに、昼間は難しいので夜にしようと思ったものの、そのためには街に1泊しなければならないということで、それらしい理屈をでっちあげて修道女さんの許可を得ようとしていた。


「でも、明日は巫女様の仕事がありますし……」

「朝早くに起きて日の出とともに出発したら十分に間に合うのではないですか?」

「それはそうですが」

「大丈夫、任せてください。早起きには自信があるんです」

「口から出まかせは止めてください」


 はい、嘘をつきました。僕は早起きは苦手です。特に最近は巫女様と夜に大相撲を取ることが多いせいで余計に朝が弱くなって……。


「はぁ、仕方ないですね」

「ありがとうございます、修道女さん!」


 そう言って修道女さんの両手を包むようにして感謝をすると、修道女さんは顔を赤らめて横を向いてしまった。


「こ、今回だけですからね」


 ということで、僕たちは門前町で宿を取ることにした。王国各地から参拝に来る観光地なので、宿はたくさんある。僕たちはその1つの脇本陣という高級な宿を使った。最初、修道女さんが代官の屋敷を手配しようとしたので、慌てて全力で止めた。


「こういう機会ですから、宿の中でなら少しはハメを外してもいいです。離れですから多少大きな声を出しても構いません。でも、明日は早いんですから、あまり夜遅くまではいけませんからね」


 修道女さんは真面目くさった顔で僕と巫女様にそう言った。さっきまで3人でお風呂から上がったところでそろそろ寝ようか(意味深)という雰囲気になってきたころなのだ。


 僕と巫女様は宿に入った時から終始いちゃつきっ放しで、夕飯はお互いにあーんして食べさせ合い、お風呂では巫女様が僕の体を洗うだけでなく、僕も巫女様の体を洗い、今も浴衣の隙間からお互いの体を乳繰り合っているところなのだ。


 そんな微妙な空気の中、終始ポーカーフェイスを保って僕と巫女様の世話をしてくれる修道女さんはある意味超人だと思う。時々、耐えられずに顔を赤らめるのも可愛いけど。


 ところで、僕たちは決して欲に負けてこんなに際限なくいちゃついている訳ではない。これは作戦だ。こうしていちゃついていれば、修道女さんが警戒を緩めてくれるので、その隙きを突いて宿から抜け出して商人の屋敷に忍び込もうというのだ。


 まあ、途中からお互い作戦であることを言い訳にやりたいことをやっていた可能性も否定はできないけど。


「行きましたね」

「行きました」

「でも、まだ近くで見てるかもしれませんね」

「かもしれません」

「だったら、もう少しこのまましてる方がいいかもね」

「そうですね」


 ということで、修道女さんが完全に気を許すまでもう少しこのままいちゃいちゃしてる方がいいのてはないだろうか。そうに違いない。


「巫女様」

「勇者様ぁ」


 もうちょっとだけ。もうちょっとだけしたら、宿を抜け出して商人の屋敷に行こう。できれば黒幕が寝る前に悪巧みをしている現場とかも押さえたいし。だから、もうちょっとだけだから。


 ……………


 と言いつつ、結局最後までしてしまった。もう、修道女さんはとっくに寝てしまっていた。巫女様が可愛すぎるのがいけない。


「じゃあ、巫女様はここで待っていて下さい」

「私も行きます」

「それは……」

「ダメ、ですか?」

「行きましょう!」


 商人の屋敷に忍び込む前に、僕が得た新しいスキルの使い方を教えておくことにした。新しいスキルであるスキル共有は僕が巫女様のスキルを使えるようになるだけでなく、巫女様も僕のスキルを使えるようになるからだ。


「いいですか、常に「隠密」を発動させていて、何か危険なことがあったら、とにかく「影走り」のスキルを使って逃げてください」

「この「手裏剣」ってスキルは何ですか?」

「また今度教えますから」


 巫女様は新しく使えるようになったスキルに興味津々だけれども、とりあえずそれはまた今度。今は巫女様を連れて商人の屋敷に偵察に行き、無事に帰ってくることが一番の目標だ。


 ということで、再び商人の屋敷に戻ってきた。昼間、騒動を起こしてしまったけれど、夜になった今ではもうすっかり落ち着きを取り戻しているようだ。千里眼を使って中の様子を伺ってみたけれど、見張りの数はそれほど多くはない。


 僕はもう転職して勇者になったので、忍者ではないけれど、一度得たスキルは転職した後も使うことは可能だ。職業補正がなければスキルの効果が限定的になってしまうという弱点はあるけれど、それでも使えるだけで有効な場面というのも少なくはない。


「もう少し向こうから侵入しましょう」

「はい」


 千里眼で中の様子を確認して、見張りの視覚になるところを探し、影走りで塀を飛び越えて商人の屋敷に侵入した。ここから先は見つかったら終わりだ。慎重にいかないと。


「床下に潜りましょう」


 忍者といえば屋根裏に侵入して、天井の穴から部屋をのぞき込むというのがお決まりのパターンのようになっているけれど、実際にそれをやると天井がぎいぎいと音を立ててすぐに見つかってしまう。それよりも千里眼のスキルを使って床下から上の様子を見る方が見つかりにくい。


 なので、元の世界では機密性の求められる建物の場合、床下に用意に侵入できないよう、様々な監視装置が仕掛けてある。忍者はそれをかいくぐるため、隠密スキルの習熟度を高めて対抗するのだ。


 でも、この世界では忍者のスキルに対して無頓着なので、職業補正の入っていない隠密スキルすら使うことなく、簡単に床下に侵入することができた。


「遅かったみたいですね」


 床下を物音を立てないようにしながら這いまわって調べてみたけれど、もう宿直以外はみな寝てしまったようでしんと静まり返っていた。


「仕方ないです。手紙か何か、証拠になるようなものがないか探してみましょう」


 千里眼は視覚を拡張して見えないものを見えるようにするが、制限がある。壁の向こうなどを透視するときは十分な空間のあるところしか透視できないので、重なった紙に書かれた文字や衣服の下の下着や裸など、狭い空間しかないところを透視することはできないのだ。


 なので、床下からそれらしい部屋を探した後は、実際にその部屋に入ってみてガサ入れする必要がある。


「ここから入れます」


 僕はそれらしい部屋を見定め、床板を外して室内への侵入口を開き、中の様子をうかがってから足音を立てないように部屋の中へと滑り込んだ。そして、巫女様にも同じようにして入って来てもらった。


「隣の部屋に商人が寝ています。音に気を付けてください」

イラストは鋭意作成中です。もうしばらくお待ちください。

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