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第10話、どきどきらぶらぶデート。

 トッショ神殿は人里から離れたところにある神殿で、街まで行くには竜車に乗って行く必要がある。近くの開けたところで花や泉を見ながらピクニックという形のデートも可能ではあったのだけど、ポイント集めのためには今まであまり行ったことのないところに行く方がいい。


「どうしましょう? 私、街でデートするような服、持ってません」

「大丈夫ですよ。巫女様の巫女服、可愛らしいですよ」

「ゆ、勇者様ったら」


 とはいえ、確かに普段姿を見せない巫女様が巫女服で歩く回っていたら騒ぎになってしまうかもしれない。


「修道女さん、何かいいアイデアはありませんか?」

「誰か私服を持っていないか聞いて来ましょう」


 そう言って修道女さんは部屋を出て行って、しばらくすると何着か服を手にして帰ってきた。


「サイズは大体あっていると思いますけど、デザインのことは分からないので何着か持ってきました」


 と言っても、僕もこの世界のファッションセンスについてはさっぱり分からない。修道女さんも分からないと言っているし、巫女様もこの調子ではダメだろう。


「とりあえず、順番に着てみようか」


 ということで、急遽、巫女様の生着替えファッションショーが始まった。もちろん、着替え中は僕は目を瞑っている。それだけでは信用できないのか、修道女さんが着替え中は僕の目を両手で覆って隠しているのだけど、これはこれでご褒美なんじゃないだろうか?


 最初の服はカジュアルなブラウスにズボンという出で立ちだった。ブラウスの襟と袖の部分に和風テイストが入っているのが興味深い。いつもの巫女服もいいけれど、これはこれで素朴な可愛さがあってよい。それはともかく、この世界は全体的に和風ベースなのに、ファッションは洋風ベースなのが不思議だ。ビキニまであったし。


 次の服は珍しく和風色が強く、大正ロマンっぽい小袖袴に裾は短めで帽子をかぶっていた。これで足はブーツを履いて足元を見せるらしい。帯で腰を高めに締めるせいで巨乳がさらに強調されて素晴らしいことになっていた。


 最後の服はセーラー服だった。しかも夏服!! というか、セーラー服まであるのか、まじか。まるで女子高生だけれども、この世界には義務教育のようなものはなく、当然その先の高校大学もないので、女子高生というものは存在しない。代わりにセーラー服は普段着のファッションとして着こなされているようだ。


「勇者様、どれがよかったですか?」

「そうですね」


 夏服セーラー服最強、と言いたいところだけれども、大正ロマンは捨てがたい。というか、大正ロマンって案外いいよね。それに、最初のブラウスとズボンというのは一番私服っぽくて、いざデートをしてみたらプライベートって感じでよいかもしれない。


 ああ、悩ましい。どうしよう。


「あまりよくなかったですか?」

「いや、逆にどれもよすぎてどうしようかと思って」


 セーラー服か、大正ロマンか、私服ブラウスか。

 セーラー服か、大正ロマンか、私服ブラウスか。

 セーラー服か、大正ロマンか、私服ブラウスか。


「……、セーラー服でお願いします」

「はい!」

「あ、靴はローファーで」


 ということで、やってきました。


 竜車に乗って30分ほどで街の入り口までたどり着きました。隣には夏服セーラー服姿の女子高生巫女様。ぐぐっと持ち上がった胸元に付けられたリボンが大変魅力的です。その下に隠れるものはさらに魅力的です。


「巫女様は街にはどのくらい来たことがあるんですか?」

「そうですね。年に4回は来ます」

「案外多いですね」

「でも、巫女としてのお仕事ですから、ほとんど街を見たことはないんです」

「じゃあ、今日は初めての街歩きですね」

「はい。私の初めてをもらってください!」


 うぉぅ。そのセリフ、セーラー服で言われると破壊力が倍増するんだけど。やばい。これ、デートが終わるまで理性が持つだろうか?


「こほん。勇者様、巫女様、くれぐれも自重してくださいね。どこで誰が見ているかわかりませんから。特に、巫女様」

「わ、分かってるってば」


 お目付け役で付いてきた修道女さんは中に残して、僕と巫女様は竜車を降りた。ちなみに僕の服装はシンプルにワイシャツにスラックスだ。とりたてて言うほどのことは特にない。


 街は神殿の門前町ということで、全国各地から参詣に人々が集まってくるらしく、大変な賑わいだった。街の中心には神殿の分社が立っていて、一般の参詣客はここでお参りをするらしい。巫女様のお仕事というのもこの分社で行われる行事のようだ。


 僕たちは人がごった返す神殿の近くは避けて、少し離れたところで落ち着いた茶屋を見つけたのでそこにひとまず入ることにした。


「いらっしゃいませ」


 挨拶してくれた店員さんは元気がよくて可愛らしい女性だった。ポニーテールに結んでいてうなじのラインが魅力的だ。胸はやや控えめな感じだけれど、全体的にスタイルが良さそうなので良いと思う。


「勇者様?」

「ん、あ、何か注文する?」


 店員さんをじっと見ていると、巫女様がジト目でこちらを見てきたので慌ててメニューを渡して誤魔化した。するとその店員さんが水を持ってこちらにやって来た。お盆の上にはきれいな切子のグラスが2つ載せられている。


「あの、この辺でデートをするのにオススメのスポットってありますか? できればあまり混んでいないところで」

「混んでいないところですか?」


 そう言うと、店員さんは少し考えてから口を開いた。


「昼間は芝居小屋は席が空いてるんじゃないかなと思います。相撲も大丈夫だと思いますけど、ちょっとデートには向かないかな。基本的にこの街の露店はどこも混んでるから、お店に入っちゃうのがいいと思います」

「なるほど。ありがとうございます」

「うちも2階に個室があるから、良かったら使って下さい。サービスしますよ」


 一体、デートで個室に入って何をするというのか。そして、サービスとは何をしてくれるのか。興味は尽きないけれど、その中身を確かめるのは恐らく今ではない。


 とりあえず、僕は葛切りを、巫女様はあんみつを食べて、さてお薦め通りに芝居小屋にでも行こうかと思ったときに事件は起こった。


「おい、店長はおるか?」

「店長出せやこらぁ」


 唐突に柄の悪そうな男2人組が声を荒げながら店内に入ってきたのだ。ってか、なぜに関西弁? こういうステレオタイプが積み重なって、大阪にいわれのない悪評がついてしまうんだと思う。風評被害には断固として立ち向かうべきだ。


「何ですか、あなたたちは。まだ営業時間中ですよ!」


 そんな余計なことを考えていると、店員さんが気丈にも男たちの前に立ち向かった。が、やはり怖いのか膝が震えている。


「おうおう。俺たちは客として来とるんやがな。はよ店長出せや!」


 と、突然、巫女様まで立ち上がった。え、何するの?

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