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第一章 第二十一葉 次の一手 SIDEワカバ

私、ワカバ。今、あなたの後ろにいます。

いえ、いません。冗談ですよ。



糾弾イベントも無事終わったわ。

結局あの後パーティーはお流れ。

まあ、あの後何事も無かったように踊る程図太い人はそうはいないよね。


シナリオ通りにセリフを繋げば全てヒロインに都合の良い原作通りの流れに向かっていくのって楽でイイわ。。

最初この世界に来たばかりの時は、取り敢えずヒロインっぽい発言や行動をイメージでやって、

それなりの反応やそれなりの結果で満足してたけど、

完全にヒロインを演じきれば、完全な結果が付いてくるのね。

これならクラーネも戦闘パート以外は怖くないかも。


さて、次のイベントへ向けて宇佐美こと攻略本ちゃん…あっ、逆だった――まあどっちでもいっか。

攻略本ちゃんと作戦会議と言う名の私の記憶の掘り起こし作業に入って行かなきゃ。


次ってどんなイベントだったっけ?

奴隷移民脱走? 美術館? それとも森の中だったっけ?


この世界に来るって分かっておけばもっと真剣にストーリーモードを見てたんだろうけど、

基本シナリオは高速スキップモードで、選択肢の所で止まる程度だったからね。

っていうか、誰も自分が明日異世界に転生する事を想定したりできないと思うし、

してたら妄想に憑かれ果てた危ない人だよね(笑)


さて、今日はこの辺りで寝ます。


















皆おはよう。聞いてよ。

今日、起きた時にクローが真横に立ってた。

いつの間にかフラグ建ってたっ!?

って凄いビックリしたけれど、何のことは無かった。

私の部屋からずっと目覚ましが鳴り続けて消しに来ただけだったって。

…っていうかそういう時は使用人とかが動いてくれるんじゃないだろうか、侯爵家なんだから。


大型カラクリの目覚まし時計で起きる公爵令嬢なんて多分私くらいだよね。

ところでどうしてそんな目覚まし時計を使っているかっていうと、そういうイベントがあるから。

この目覚まし時計はクローの婚約者のブレターさんがプレゼントに欲しいって言ってた高級品として引継ぎされてた。


この目覚まし時計はランダムで設置した目覚まし時計が急に夜中になり出して、

深夜に異形とイベント戦が始まって倒すとレアアイテムが出るとか、

目覚まし時計がこれまた勝手になり出して、

日付が変わったり、ゲームを起動したときにランダムでバッドエンドになるっていう理不尽中の理不尽な、

ある意味クラーネ以上に危険な暗殺者が来たことを知らせてくれたりとかするアイテムだから絶対必要なのよね。

うん、これを引き継げてたことは大きいわね。

…起きれなくちゃ意味ないけど。


そういえばそろそろ使用人さんが私達にお茶を持ってきてくれるはずよね。

確か、昨日いろいろとお土産のお菓子を貰ったから―――――――――――――



「で、昨日はどうだったのよ。上手くイベント消化できた?」


黙ってよモブ。

朝食を食べてすぐだっていうのにお客さんがやって来た。そう、ウザみ…じゃなくて宇佐美だった。

攻略本さん、さっきから態度デカいけど、あなた私が平民に優しくて大切にしている…って設定が無かったら私の部屋に入るどころか、

屋敷に入る事も許されないって解ってる?

向こうの世界でなら兎も角、こっちの世界であなたがお菓子を食べられるって奇跡的なことなんだから。

…そんな内心はおくびにも出さないのが、私のヒロイン適性の高さの所以よね。



私は、宇佐美にははっきりと自分も転生者だとは答えていない。

曖昧にそう取れるように流しただけ。

転生者にも、転生者が何かわからないけれど宇佐美の話に理解があるようにも、

何も転生の事は知らないけれど、宇佐美を利用しているようにも見える様にはしているの。

とはいえ、宇佐美がどこまでの段階まで見えるのかは期待していない。

だって、乙女ゲームの内容を覚える事では優秀だったけど、その他の知識や思考する能力は高い様には見えなかったもの。

好きなことだけ話して、嫌いなことには目を向けず、自分で何かを考え産みだす力に欠けている。

話していてわかったけど、彼女は駄目な方のオタク。そんな感じがするわ。

正直、私の裏がどこまでかを読ませない演技とかの大部分は無駄になったとみてもいいと思う。

まあ、此方の確かな情報を与えないようにしているという意味では無駄じゃないし。


「イベントって、私がクラーネ様から平民兵士の立場を守るって話だよね?

うん、それならばっちり。

そう言えば今回、パーティーから帰ろうとしたとき面白い子に会ったよ。」


「どんな子よ。」


うん。アレは面白い事には間違いないよね。


「私の異形との戦闘を見て、偶々なんだけどギリギリのタイミングで全部が上手く行っちゃったの。

そしたらその子、色々終わった後直ぐ私の所に来てその事を褒めてくれたんだよ。」


「…肝心のその子って誰よ。」



「ビアス家のアンジュ。平民兵士達の英雄よ。」


「…聞いたことのない名前ね。だったら転生者かもね。」


ほら、自分の知識にないから転生者扱い。

多分実際そうなんだろうけど、そもそもアンジュと言えば宇佐美と同じ平民達の人気者よ?

どれだけ自分の周りに目を向けてないの?

それともこっちでも人とのコミュニケーションによって情報を手に入れられないボッチなの?

こっちにはパソコンもネットも無いんだから人とのコミュニケーションは排除できないのに。

それに貴族の動向ばかりに目を向けようが、本来宇佐美のグループは平民なんだから、

平民として合わせていける情報を仕入れるべきよね。

その容姿と能力で、ヒロインの様な世界の祝福(デウスエクスマキナ)でもないのに攻略キャラが振り向くワケ無いのに。

…でも私はそんな宇佐美個人周辺の情報は特に求めていないけどね。




「鳥も有翼、竜も有翼、鳥が通って竜が通れぬ通りはない。」


「?」

…元ネタ解らないのかな。


「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、

ほめてやらねば、人は動かじ。

話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。

やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず。」


「聞いたことがあるような」

これは改変も無いのに知らないの?



「動かざること山の如し―――――――」


「真田信玄ッ!?」


真田信玄じゃなくて武田信玄だけれどね。


「それって…。」


「聞いたことが無いの? 宇佐美さん。

今、平民たちの中で人気者になっているビアス家のアンジュさんの名語録集よ?」


此処でも尚、私は武田信玄でしょ、とか、本来は馬も四足――とか、山本五十六を知らないの?

なんていうヘマは犯さない。犯さないんだけれども彼女相手にそこまでするのは何処と無く無駄な気がしないでも無いかな。


「平民寄りの姿勢を持った貴族の人って珍しいでしょう?

だから気になってたの。

話してみたら普通の戦闘マニアだったけど。」


「因みに派閥は何処なの?」



「風のカルコサズハリ。」


「ダゴニットのとこ!? その子ダゴニットとはどういう関係なのっ!?」

……呼び捨てにしている所を聞かれたら危ないな、って思う。言わないけど。



「さあ、良く解らないわ。血縁的には遠縁でも無い様だけど、

歴代のカルコサズハリ公からの信認は厚いわ。

将来、ダゴニット様の右腕か左腕として活躍する可能性は高いと思うわ。」


「くっ、モブキャラが調子に乗って攻略キャラに迫るんじゃないわよ。」


もしこの世界にネットがあれば…本日のお前が言うなスレに乗せたい迷言ね。


「最近クラーネ様に模擬戦で完敗してから修行を一からやり直しているそうよ。」


「そこにはダゴニットはどう絡んでるのっ。」



「さあ、判りません。ダゴニット様が戦闘能力を鍛えられていると言うお話は聞かないもの。」


「あっ、そう。特に勝手にちょっかい出してないならいいけど、

ストーリーぶち壊すチートとかだったら面倒じゃない?」


…そうなればあなたの価値も薄まっていくし、私だって大ピンチだけど、

ゲーム本編のストーリーに絡まなかっただけでそう言うキャラが元々いた可能性だってあるかもしれない。

だって、元々ヒロインや初代皇妃とかよその世界から来た可能性を示されてるんだから。まあ、今更だけどね。


まあ、そんなことよりも、





「所で私は、次は何をしていけば良いのかな。教えて、宇佐美さん。」

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