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40章 創星歸のゼラディウス・ウィング

バハムートは空を飛翔していた。青々とした、途方もない世界を。

するとサニーのスマホに通話が掛かった。相手はルナチャイルドであった。

彼女はスマホを右耳に充てるや、彼女はその声の主の憔悴さを身に染みて感じた。


「サニー!今、町が大変なの!機械が暴走してるの!」


その声を聞いた時、彼女は返答する間もなく電話を切った。

そしてバハムートを操り、2人に緊急事態であるとの視線を差し向けた。

空には何も異常が見られないが、遥か下の街並みでは何か異常が起きているに差異は無い―――そう言われれば、じっとしていられないものだ。


「行くよ、町が大変な事になってるみたいだ」


彼女がそう言った時、バハムートは彼女の言葉に呼応を示したかのように一気に下った。

風を切り、虚空を舞う姿は一種の天使のようにも見えるものであった。


◆◆◆


機械龍がゼラディウスの大通りに降り立った時、其処は一種の地獄絵図であった。

ゼラディウス工廠産やプロメテイア・エレクトロニクス社産の兵器たちが暴走し、我も儘に狂っていたのである。あちこちに設置された信号も、其れは狂乱したが如し、各地では混乱の勢いが収まらないでいた。

彼女たちは改めてゼラディウスに何かある、そう確信したのであった。


「―――兵器が暴走している……!?」


あちこちで上がるは悲鳴、慟哭。恐怖に怖気づき、多くの観衆が逃げ惑っていた。

元は独裁に近い政治を行っていたドレミー内閣の足元にあるゼラディウス工廠、兵器の種類は伊達では無く、身を翻そう、結局は湧いて出るかのように現れる機械の餌食になってしまうのであった。


「……兵器全体がおかしくなっている。何かの妨害電波か何かに違いない。しかも、相当高度な電波だな」


その時、彼女は閃いた。過去の記憶が、静かに脳裏に蘇ったのである。

多くの脳漿の流れる様を見てきた彼女がついに辿り着いた真実―――。


「……スターだ。スターは以前、そう言うのを開発してるって言ってた。

その時は冗談混じりの発言としか感じなかったけど、あれは本当だったんだ。全部、スターの画策だったんだ」


サニーがそう気づいた時、そんな3人の前にとある兵器が牙を剥いたのであった。

其れは本能的に活動するだけの兵器……ゼラディウス工廠製の巨大兵器「レイル=シリウス」であった。

其れは以前戦ったレイスヴィンの色違い―――計画が凍結されても、其れを基とした試作兵器の1つである。

両腕に付けられた、黒塗りの回転のこぎりの刃には血が滲んでおり、多くの無辜の民を傷つけてきたことが其処に証明されていた。漆黒のボディには赤く滲んだ跡が鮮明に映えており、レイル=シリウスの持つ残虐さが垣間見える。


「―――こういう電波は全てエレクトロニクス社の地下実験基地で行われていた。

………でも、先ずは目の前の敵をやっつけてからですね」


サニーは礎の翼を構えるや、他の2人も呼応して武器を構えた。

多くの民衆が逃げ惑う中、大通りで対峙して見せた3人。漆黒の兵器はさぞ不機嫌そうに、回転のこぎりの刃を回転させては、電気を纏って。

―――すこぶる電圧を其のボディに染みこませて、レイル=シリウスは暴走していた。

そんな漆黒に彼女は怯える様相も呈さず、真剣な眼差しを浮かべて―――剣先を向けた。


「行くよ、レイル=シリウス!!」


◆◆◆


彼女は一気に攻撃を仕掛けた。

真正面からゼラディウス・ウィングの剣先を差し向け、飛びかかったのだ。

鋼の色に呼応させるは漆黒の影。礎の翼を一気に刺したのである。しかし、漆黒のボディに刺さる事は余りなく、浅さを露呈させた。やはり外殻は固かったのだ。

彼女は硬さを剣伝てに理解しては、静かに離れた。


「……やり方は前と同じ、外殻を先に破壊してから中の精密部分を狙う」


「了解です!」


レイラは懐から取り出した手榴弾をレイル=シリウスの方に向けて投擲したのである。

黒い悪夢は空中を駆け巡った。しかし、回転のこぎりは無慈悲にも悪夢に過った。…世界は明るくなった。

刃の餌食となった手榴弾はレイル=シリウスの右腕を完全に捥ぎ取ったが、其れは緻密設計な漆黒の兵器を更に暴走させる火種となった。

兵器は右腕損傷による神経プログラムの崩壊によって、中枢プログラムが完全崩壊、自己を操れなくなったのだ。


―――ギギギギギ………!!


その時放たれたのは、威勢良いホーミングミサイル数十発。

ミサイルの形容をした其れは3人に向かって思いっきり放たれたのであった。

しかし、そんな攻撃は手慣れな物、軽々と身を熟していく。躱す事など別に問題では無かったのだ。

其れは日々、戦ってきた彼女だからこその思うことであろうか。


「―――図に乗るなよ……!!」


ユウゲンマガンは重たいガンハンマーを引き摺っては、一気に襲撃を図った。

其れは暴走しては左腕の回転のこぎりを振り回していたレイル=シリウスの攻撃と相殺し、綺麗な金属音が摩擦として現れた。


「今だ、サニー、レイラ……!」


彼女が攻撃を受け止めている間、動いたのはサニーであった。

ユウゲンマガンが受け止めていたレイル=シリウスの左腕に乗っかっては一気に兵器のボディ部分まで行き、手榴弾の効果を受けては黒焦げて脆くなっていた外殻部分に向かって、一気に突き刺したのである。


ゼラディウス・ウィングは、外殻を貫いた。

同時に電気が溢れ、彼女はすぐに剣ごと身を撤退させた。続いてユウゲンマガンも離れる。

漆黒の兵器は電気を漏れさせながらも、左腕だけと言うアンバランスさながら回転のこぎりを猛スピードで回転させていた。やがて火の粉も上げるようになっていた。


「オーバーヒートしてるな、一気に畳みかけるぞ!」


ユウゲンマガンは重たいガンハンマーで左腕に向かって一気に殴りかかった。

同時に引かれたトリガーはガンハンマー内の火薬を爆発させ、更に衝撃を発生させた。其れは容易くレイル=シリウスの回転のこぎり付きの左腕を破壊させる物であった。

更に電流が溢れ、限界が見えてきた。黒煙を捲き上げ、兵器としての終わりが近づいていたのは明白であった。

サニーはそんな兵器に向かって、一気に斬り抜けた。


「―――終わりだッ!レイル=シリウス!!」


◆◆◆


漆黒の兵器はとてつもない大爆発を発生させ、その破片が辺りに飛散した。

大通りのコンクリートにも罅が入り、爆発の凄まじさを物語っていた。


「―――これで邪魔は消えた。ずっとこのままにいてもアレだから、エレクトロニクス社の地下実験基地に行ってみよう。…何か、あるはずだ」


社長が声を発した時、2人は静かに首を縦に振った。

そのまま機械龍に乗り、空中へと飛び立った時、ゼラディウス内は悲鳴で覆い尽くされていたのが改めて感じられた。

彼女たちは正義の味方では無い。彼女たちは―――「信念の為に抗う」存在なのだ。

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