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34章 月影の淘汰

「今夜未明、大統領はゼラディウス大通りにて、セグメント侵略に於ける成功を祝福した凱旋パレードを開催すると発表しました。政府は隣国セグメントへの進撃が成功と発表、無事鎮圧に落ち着いた模様です。

開催時刻は今日の午前8時より、今回のパレードには大統領の姿も直々見せるとのことです」


スマホの画面の中から流れるニュース。

ニュースキャスターは淡々と内容を述べたが、其れは彼女たちにとって特別な思いを握っていた。

かの邪知暴虐な大統領が姿を見せる事は、逆をとって言えば暗殺が可能と言うことである。サニーは既に決心していた。

彼女には既往きおう、貞操概念は無い。何をも、全てを滅茶苦茶にした元凶を潰す―――やっつけた点で世界が変化するのを期待していたのである。


「―――大通りへ急ごう。午前8時はもうすぐだよ」


彼女たちは分かっていた。長く険しい旅が終わりに近づいてきたことに。

それぞれ武器を持っては、遠い世界を睨み据えて。


「……みんな、バハムートに乗って。空からの奇襲を狙うよ」


◆◆◆


「こちら上空です…たっ、只今、大統領が姿を見せました!手を振っておられます!」


上空から撮影された中継では、画面の中で大統領の手を振る姿が映されていた。

スマホの中で中継を確認していたリリカは、その容姿の憎たらしさに何処か怒りを覚えていた。

苛立ちも其処にはあった。今までの横暴さを忘れたかのような立ち振舞いに、瞋恚を感じていたのである。


「……ただじゃ済まさないよ」


リリカは怒りの示唆を口調に含めていた。

スマホの画面には、相変わらず大統領の姿が大きく映し出されている。その姿を見る度、彼女たちは今まで受けてきた幾つもの暴虐たりし行動によって大きく妨げられた事を脳裏に浮かべては、握りこぶしを作っていた。


バハムートはやがて歓声に包まれる通りに近づいた。

大空には多くの報道陣のヘリコプターが浮かんでは凱旋パレードの様相を撮影していた。

機械龍は多くのヘリコプターの合間を縫っては大通りへ接近する。多くの民衆に囲まれ、何台もの車が列を連ねては行われている凱旋パレード。

その中の、4人のガードマンに囲まれて手を振っていたのは紛うこと無き大統領…ドレミー・スイートだったのである。

サニーはその姿が視界に映った時、今までは耳にしか聞こえなかった存在が目の前に存在することに不思議な感覚を抱いたと同時に、改めて怒りを覚えていたのであった。


「……みんな、用意はいいね」


サニーは最後に、準備の有無を仲間たちに問うた。

全員は頷いた。何をも恐れないような勇ましさを持って。


「―――バハムート!急降下して!」


◆◆◆


彼女たちは多くの旋風舞う中、一気に急降下を図った。

ヘリコプターの合間を縫うように、銀色の翼は報道陣のカメラを堂々と遮ったのである。

手を振る大統領の前、4人のガードマンに包囲されている大統領に機械龍は目立ってほしさなのか、派手に降り立った。サニーたちもまた、大統領の前に姿を見せつけたのである。

風圧と衝撃でガードマンは道に吹き飛ばされた。唐突な存在に観衆は惑い、辺りは騒然とした。

吹き飛ばされたガードマンたちは威勢よくサニーたちに殴りかかってきたが、レイラの華麗な銃捌きが彼らへの運命を決した。


血が舞う。凱旋パレードは突如として中止となり、彼女たちの元には大量の警察官たちが勇猛果敢にも襲い掛かってきたのである。しかし、此処で動いたのはリリカとメルラン、そしてルナサであった。


「私たちに任せて!」


彼女たちはガードマンが持っていた拳銃を奪っては、何人かの警察官を射殺しては、その警察官の拳銃を奪うというスパイラルの下、撃退を執行していた。

背中を3人に任せて、サニーはゼラディウス・ウィングの先を目の前にいる大統領に向けた。

鋼の刀身は太陽の輝きを受けていた。また、大統領の口元も月の欠片のように引きつった弧を描いている。


「―――お前に会いたかったよ、大統領」


「私もだ、サニー。だからこそ、この凱旋パレードを開催したと言っても過言では無い」


彼女は両手を広げ、4人を見下すような眼差しで彼女たちを見据えた。

其処には普遍をも残酷に切り裂くような、何をも彼女の横暴さが滲み出ていたのであった。


「……政府、もとい内閣の最高責任者にして、セグメント鎮圧の首謀者は私だ、諸君」


「貴様……!!」


ユウゲンマガンは曾てない怒りを、その場で露わにした。

そしてガンハンマーを構えては、その一時的な感情で一気に殴りかかったのである。

しかし彼女は武器もろとも弾かれてしまった。其れは彼女の前にあった謎のバリアよろしく結界が、音を立てて彼女の攻撃を弾いたからであった。


「社長!」


サニーとレイラは弾かれた彼女を起こし、ルナチャイルドはガンハンマーを拾った。

無様且つ滑稽な光景を前にして、大統領はただただ笑うばかりであった。


「滑稽だな、果然として」


「お前は……自らが犯した罪を分かって…其れを言ってるのか!?」


彼女はユウゲンマガンの問いに対して、不敵な笑みを浮かべた。

対峙してるとあれ、たかが一つの愚民であることに変わりはないのだから。


「―――人は争う。また、人と人が争い、やがて国と国が争う。

……世は混沌カオスに満ち溢れている。私はこの世界に生まれた、新たな調停者…もとい斡旋あっせんする為に、今や此処に立っている。

―――創造を原初として、何をも平和に暮らす為にも」


スーツ服を風に靡かせて、静寂に包まれた世界で静かに言い放った。

サニーたちは畏怖を抱くようになっていた。大統領の、言葉では上手く説明出来ない、只ならぬ存在に、恐れをなしていた。

恐怖にまみえ、裕にも世界を超越する何かに。


「―――不浄の淀みに満ちた此の世界で、諸君は何を恐れようか。

諸君は今、こうしてこの場に立っている。其れは何をも、私が此の場に呼びよせたからだ。

……諸君は運命づけられていた。生まれた時から…否、この世で生を決定づけられた時から……」


「やはり貴方は…只者ではありませんでしたね………!」


レイラは恐れを捨て、銃口を差し向けた。

同様にして、他の3人も武器を携えた。大統領は4人の案の定の反応に、やはり笑っていた。

大きく手を広げては、何をも寄せ付けない威圧を放って。


「只者?……私を、諸君と同じ扱いにされては困るな!」


その瞬間であった。彼女が急に発光し始めたのは。

神々しく、そして神聖な光に覆われ、彼女は真なる姿を見せたのである。

其れは機械に取り込まれた彼女自身…否、機械そのものだったのである。ボディに三日月を模した彫刻を刻んでは、その禍々しい眼で4人を見据えて……。

残った一部の観衆や野次馬は恐怖に凍り付いた。実存性を否定するような、非現実的なものだったからである。


「―――我が名はエクリプスシルテウス…。…存在の糧を露わにし、実存を否定するもの」


「お前は……エクリプス=インジケーターだったのか?!」


彼女は驚きに包まれていた。目の前の存在に、見覚えがあったのだ。

しかしユウゲンマガン達にとっては何も知らない存在であった。サニーが発した言葉は、サニーだけの世界になっていたのである。


「え、エクリプス=インジケーターとは何なのサニー!?」


「話は後で!今はコイツを…エクリプスシルテウスをやっつけることが優先!」


ルナチャイルドの質問に、サニーはゆっくり答えている暇は無かった。

彼女たちは武器を構え、目の前に存在する機械の存在に…元々は大統領であった存在に武器を向けた。

彼女自身、恐怖に揺らぎながらも…ゼラディウス・ウィングは決して意を曲げたりなどしない。


「―――終焉にひざまずけるか?愚かな存在たちよ…」


「私は私の道を選んだだけ…。…私の未来を邪魔するなら、私はお前を倒す!ドレミー!」


「そうか。…ならば、超えて見せよ!そして世界に希望をもたらすのだ!」

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