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29章 ゼラディウス内閣の真実

社長の顔は広く、堂々として3人は国防省内を歩いた。

行き交う人々が彼女たちとすれ違った際に、其の見た顔がかの有名な人物と照らし合わせるために振り返る。

肩幅が狭い思いであったサニーは、改めてユウゲンマガンの存在が彼女を此処まで引っ張ってきたことを実感させてくれるのであった。


厳かな雰囲気の中、社長の先導についていくと、一つの大きな部屋の前に出る。

木目が鮮明に浮いた、お洒落なドアであった。するとユウゲンマガンは扉を前に、2人に向かって振り返った。其処には緊迫な状況に於いて、裕を見せると同時に憔悴を感じていた表情であった。

レイラはそんな社長の顔面の色に気づき、何処か緊張を走らせた。

サニーミルクもまた、今自分たちが何処にいるか、大体は察知づいていた。


「―――今から入るぞ。中に奴はいるはずだ」


「了解です」


2人は承諾の意を示すと、社長は理解した。

そして扉をノックするや、彼女は静かな室内に足を踏み入れた。

ひんやりした通路の空気と相殺するように室内の暖かな空気が溢れだす。

中にはセグメントの国防長官であるミスティアと、サニーたちの天敵であるゼラディウスの遣い、幽々子が面と面を向き合わせては会談を行っていた。

しかし、突如として開いた扉に2人は気づき、顔をそっちへ向けた。


「―――お久しぶりです、ミスティアさん」


「ああ、久しぶりですね、ユウゲンマガン社長」


幽々子には待つよう手で仕草し、咳を離れる国防長官。

待たされた当人は3人の姿を見るや、じっと凝視しては脳裏の何かと照合させていた。

サニーやレイラもそうであった。目の前には、かの宿敵が存在していた。ドレミー内閣の犬、会談内容も言葉巧みにセグメントを陥れるだけであることが顔を見ただけで附属的に捉えられた。


「―――其れに其れに、お久しぶりです幽々子さん。

……我々の会社は貴方たちの攻撃によって潰されてしまいましたがね。…物象的にも、抽象的にも」


「―――早速の皮肉、どうも」


彼女はそう言うや、発言したユウゲンマガンの首元に拳銃を突きつけたのであった。

カチャ、と言う音が鮮烈に室内で響き渡る。しかし、彼女自身の首元にも冷たい感触は伝わった。

其れは僅か一瞬の出来事であったのだ。サニーは礎の翼よろしくゼラディウス・ウィングを、レイラは銃口を差し向けたのである。

1人と2人…彼女は不利な状況に置かれた事にたじろぎ、ユウゲンマガンは案の定の反応に得意げな顔を浮かべては不安そうな顔面のミスティアに状況を説明した。


「……お判りでしょう?彼女はとても…好戦的。

―――貴方たちセグメントも、所詮は道具としか思ってない…」


「―――デマを流すのも程ほどにしな」


「私たちプロメテイア・エレクトロニクス社は貴方たちの爆弾によって木っ端微塵になったものだ。

―――どの口でその発言が出来るのか、私は貴方の神経を疑うね」


幽々子の発言に打って変わって、ユウゲンマガンは論理的な口述をした。

其れは何も知らないミスティアにとっては鮮烈で、何よりイメージ変化に繋がる発言であったのだ。

干渉してきたゼラディウス内閣の恐ろしさを知った。其れは社長であるユウゲンマガンの発言力によるものであろう。

元より関係はあった。彼女が顔を持っているだけで、会談中の国防省に入れたのは其の所以である。

だからこそ、であった。幽々子が企む、本当の事実が馬脚を現したのは。


「―――幽々子さん、これって…どういうことですか」


「……私は人を騙すのが下手だからね。…敢えて言わせて貰うよ。

―――彼女の言ってることは正しい。私たちゼラディウス内閣はエレクトロニクス社本屋を破壊した」


開き直りの述懐であった。彼女は自分たちがやった行動を全て肯定したのだ。

其れは今までの会談を水の泡に回帰させるようなものであった。事実、ミスティアは瞋恚と絶望に震えては、彼女を憎み、そして恨んでいた。

隣国のニュースは余り入らないのが不変の定義、ゼラディウス内閣の横暴さに鼓膜すら響かせることは無かったが、社長の口から言われると動揺も隠せない。


「多くの私たちの仲間を殺し……多くの研究結果を一瞬で吹き飛ばした―――。

ゼラディウス国の国内総生産に多く関わってきた私たちの会社を、奴らは嫉妬とか羨望とか、そんな簡単な感情で吹き飛ばした―――。

……ミスティアさん、分かってくれたでしょう。私たちは貴方たちの味方です。

彼女たちは貴方たちの国を徐々に陥れるつもりなのですから」


サニーはミスティアにそう語った。

彼女の名前も科学者としては基本的に有名な人物柄で、発言力や説得力も高かった。

ミスティアは急に幽々子に畏怖を抱き始めたと同時に、銃を下ろした幽々子を信用できなくなってしまった。簡単な事であったが、感情は確実に揺らいでいた。


「―――私たちは、何もしていない。無辜の人民に過ぎない。

―――幽々子、ゼラディウス内閣に代表して聞かせて貰う。…お前は何が目的だ?」


すると彼女は溜息をつくと、一段落して口を開いた。

片手には拳銃を持ち、いつでも応戦出来る形でありながら…彼女は事実を語ったのだ。

其処の点だけ注目してみれば、彼女は潔い性格だったのかもしれない。


「……私たちはプロメテイア・エレクトロニクス社を潰した。…過去形だ。

―――理由は簡単、ドレミー・スイート大統領が気に入らなかったからだ。私たちにもゼラディウス工廠と言う機械工場は持っていたが……生産力は圧倒的にお前たちの方が上だ。

第一はゼラディウス工廠の競争相手を潰し、取引相手の依存をさせることで経済力を高めることだ。

もう一つの観点から言えば、野党であるアルカナ党がゼラディウス内閣に敵意を差し向けた際、その後ろ盾にエレクトロニクス社があったことだ。

―――これだけで充分、彼女には潰す理由があった。ドレミー・スイートはすぐに実行する人物だから」


彼女は枢要的な内容を、如何にもそっけなく話した。

自分には何ら関係もないような、適当さを口調に含めて。しかし、聞いていた方は不愉快であった。

独裁そのものを比喩では無く、まじまじと事実を耳にしては怒りしか生まれなかったのであった。

全てが彼女自身の勝手であり、他人の実存など何も気にしていない―――。


「―――私が此処に訪れたのは、セグメントへの干渉だ。…表だけを見たら。

……裏は事実、此処を戦場にしろ、と大統領に言われた事だ。ゼラディウス国内で発生しているデモの欝憤を隣国である此処に差し向け、戦争しようとしている。

―――簡潔に言おう、全てはドレミー・スイート大統領が自らの座を守るためだ」


咄嗟に、彼女はゼラディウス・ウィングを構えた。

その面には涙腺までもを浮かべては、果てしなき存在への抗いを決意していた。

ミスティアはそんな彼女に哀れみの感情さえ浮かべていたと同時に、今自分たちの国がどうなろうか、行く末を案じていた。

幽々子は話し終えた後、憎悪を鮮明に浮かべる存在に同情さえ示していた。


「―――これが、世界の流れだ。

……不条理だろう。理不尽だろう。しかし、私には何も出来なかった―――。

……私は流れには逆らえなかった。無理だった。世界のリビジョンなど、私には到底―――」


彼女はサニーに対抗の色を示したかのように、拳銃の銃口を差し向けたのであった。

其れは彼女の恐怖からであった。彼女自身も国のやり方には不満を覚え、国防長官として多くの国と干渉、そして騙しては相手に憎悪の顔を何度も浮かべられた存在であった。

……それは幽々子自身、恐怖に怖気づいてからであった。出来ればサニーたちと協力したい気持ちも山々であったが、其れは不安な未来への道を歩むに過ぎないのであった。


「―――私は貴方たちと戦う方が、国に抗う方より怖くない。

……畏怖への抗辯なんか、私なぞ到底不可能だ。だからこそ、私は戦う。…貴方たちを倒し、私自身を守るために!」


保守的な口実であった。

彼女には何ら背徳感は感じられず、寧ろ同情を差し向けたいほどであった。

しかし、対峙してるのは事実であった。彼女が戦意を持つ以上、サニーも応えるしか無いのであった。

分かり合えない存在に、心の中では囚われた感情が蠢いていた。礎の翼の光る刀身は、世界を遍く未来の可視を示唆しているかのようであったが、幽々子の拳銃は真逆であった。


彼女に続いて、社長やレイラも構えた。

ミスティアは怖さが感情を縛りつけたのか、顔が引きつったまま4人から離れる。

静かな空気が其処には流れを見せていた。スーツ服や黒服は天井の照明の光を反射させている。


……その時、世界は満ちた。


「私は……自分を守って見せる!」

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