27章 ゼラディウスの末裔
彼女たちが社長を先導にアジトへ辿り着いた時、厖大な疲弊感が急に姿を見せ始めた。
身体に纏わりつくような形で伴った疲弊は、サニーを恐ろしく果てさせた。
何処となく、行き場のない悲しみを心の中に仕舞って、彼女は無造作に置かれたソファに寝っ転がった。
机を隔てた先には家庭用テレビが置かれている。地面に座った社長がリモコンを操作するや、黒々とした第一面に映ったのは隣国ゼラディウスに関するニュースであった。
「―――速報です。隣国ゼラディウスの国防長官、西行寺幽々子氏がセグメント国防省へお出でになられました。幽々子氏は、『更なる二国の発展を目指す』との目標を掲げていると共に、新たなる政権政策を提案するとのことです」
このニュースを耳にした時、ルナチャイルドはハッとした様子で覚めたのであった。
何かに感じづいたかのように、唐突に立ちあがっては虚構に身を置かせた。
この行動を不思議そうに見ていたレイラは、その真相を問いただすことにした。
「―――る、ルナチャイルドさん?どうかなされたんですか?」
「……このニュース、ゼラディウスのデモと関係あるよね」
その時、サニーは寝ながらも彼女の言葉とニュースを結び付けようとした。
―――思えば、ジェネシスで此処に来た際に各地でデモ隊が行進を行っていた。
彼女は其れを「どうでもいい」扱いをしていたが為に眼中にすら入らなかったが、考えてみれば其れは国家への反逆―――国民のヘイト上昇を具現化したものであった。
しかし、ドレミー内閣はある意味屈強と言えるだろう。
どれだけのアンチよろしく抵抗者がいても、今までは「刑務所送り」と言う言葉を掲げては好き勝手に独裁を展開していたからである。
しかし、今回のサニー逮捕事件からの一連の流れに、少なからず勇気を持った国民はいたのだろう、デモが活発化になった今、ドレミー内閣が動かないはずが無いのだ。
大統領は隣国セグメントに対して、表沙汰は仲の良い関係を演じているが、裏は都合よく解釈しかしていないとサニーは知っていた、と言うのも自然とそう言う情報が入ってくるのはアルカナ党の後ろ盾であるプロメテイア・エレクトロニクス社に勤める社員としての宿命だったのかもしれない。
今回のニュースは、幽々子国防大臣が何かを画策するが為に派遣されたとしか思えないのであった。
「―――関係、あるかもな」
社長がそう発した時、サニーは立ち上がった。
これから起きるであろう、予測される事象が今さっきのアルテマ焼夷弾と重なったのだ。
悲劇や惨劇を招くのがゼラディウス内閣の得意技だ。これからも、そして、この先も。
「―――やらない善より、やる偽善。
……この国でも敵視されるかもしれませんが、幽々子を止めたほうが―――」
「ふふふっ、サニーさんならそう言うと思ってましたよ」
レイラは自身の象徴とも言えるべき二丁銃を取り出すや、構え直した。
彼女の意図を汲み取ったのだろうか、口元には自然な笑みを浮かべては遥か彼方の、曇っていて見えない未来を見据えているかのようであった。
テレビの中のニュースは別の関係ない事件を報道していた。彼女は、そのニュースの流れから一連の動きを全く理解していないものと見た。…止められるのが、自分たちだけだと知ったのだ。
「―――ルナチャイルドさんは、此処に残ってください。
……私たちで、幽々子を止めに行きます。嫌な予感しかしませんので。社長はどうなさいますか?」
「―――何だ、行かないといけないような雰囲気だったろうに」
ガンハンマーを担いでは、行く様相を見せつけるユウゲンマガン。
レイラは社長のその姿を見ては、静かに微笑みを見せた。何処となく勇ましさを残して。
ドレミー・スイートによって今まで苛まれ、苦しめられてきた存在の大反逆―――セグメントも、ゼラディウスの思い通りでは無い事を、ゼラディウス国民が伝えるのだ。
「―――私は此処で待ってる」
「ああ、ルナチャイルドに任せた。私たちは行ってくるからな、異変があったらすぐ連絡してくれよな」




