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26章 新世界の幕開け

あの瞬間、彼女は多くの仲間を失った。

謎の爆弾はプロメテイア・エレクトロニクス社を跡形も無く破壊し、残されていたのは虚構だけであった。

爆弾は、彼女たちを絶望へと追い込んだ。爆風は彼女たちの希望を突っ撥ね、黒煙は彼女たちの未来を暗くさせて―――。

バハムート・ジェネシスから望む、下界の景色はさぞ居心地が良い物では無かった。

スターサファイア、其れにリリカとメルランにルナサ、多くの社員たちが取り残された世界を背景に、サニーは寡黙した。


今までの思い出が消えたような、そんな感覚であった。

しかし、機械龍を追う者は地上だけでは無かった。空では多くのヘリコプターの偵察隊が巡回しており、サニーたちを見つけた途端にホーミングミサイルを撃ちこんできたのだ。

其れに気づいたのは、過敏になっていたレイラであった。


「あ、危ない!」


彼女がそう言うや、センサーでミサイルを察知した機械龍は華麗にも躱していく。

その様子はまるで飛行機のようであった。背中に乗っていたサニーたちを落とさないようにバランスを保ちながら、空を駆け巡った。

ホーミングミサイル同士を衝突させては爆発させ、大空では各地に黒煙が舞い上がった。

機械龍は悲しみに暮れるサニーたちを安全な地へと避難させるためか、そのままゼラディウスの街から遠く引かれた水平線目指しては飛んでいったのであった。


◆◆◆


―――都市国家セグメント。

人工はゼラディウスと比肩するに少ないものの、民主主義が保たれている国である。

ドレミー内閣のような存在も無く、人民が選挙で決めた人が大統領と為っては政治を大頭している。

此処にも、プロメテイア・エレクトロニクス社の社屋はあった―――と言うのも、本社では無いが派遣先用として建てられた、小さな二階建てである。

外見、個人事務所と例えるのが最も正しい表現であろうか。


機械龍は誰も使っていなかった月極駐車場に降り立った。

サニーたちも降り立つや、其処にはゼラディウスとはまた違う世界が広がっていた。

追手は既に消えており、バハムート・ジェネシスに乗ってやって来た存在に気づいた通行人たちは野次馬のように押し寄せてきたのであった。


「―――来たか、セグメント。私たちを此処へ連れて行ってくれるとはな」


「流石は国が作った兵器ですね。アイツらが使うには早すぎる」


自動AIは、彼女たちを安全な場所へ避難させたのであった。

先ほどの焼夷弾で多くの犠牲を払いながらも、サニーは涙腺の跡を風に乗せては乾かしていた。

もう、過去には戻れない。だからこそ、なのだろうか。

過去との決別―――タイムマシンなどSFの領域になっている世界で、過去から何かを見出す事は難しいのだから。

思い出は、確かに彼女を束縛した。彼女の自由を蝕む、何本もの鎖は彼女の手枷足枷となり、過去との決別を図ろうとするサニ―の決心を打ち壊してしまっていた。


「―――さっきの爆弾で……まあ、多くの命が、その……何て言うんだろうな」


社長はつっかえつっかえ、言うのを躊躇いながらも、最後まで話し続けた。

多くの社員が尊い犠牲となってしまっていた。だが、泣きたくても泣けないのであった。

其れは自分たちが何時向こうの世界へ行くことになるのか、その緊迫した状況と常に隣り合わせに身を置いているからである。


何時か、葬式は開こうとは思っていた。だが、先ずは犠牲になってしまった人たちの為にも、果たすべきことは果たそうと考えていた。…全員、そう思いを抱いていたのだから。

自由をこよなく愛する彼女たちは武器を構えるや、駐車場から出ては大通りにその身を置いた。


スーツ服を纏っては、焼け焦げた跡や傷を残していた彼女たちは多少目につく存在であったとしても、人の波の中で溶け込んでいた。

右往左往、人は縦横無尽に動いている。その様相はまるで蟻のようであった。ビルが犇めき合い、多くの人の流れが出来ている中、4人はその場で佇んでいた。

行き来する人々が何処か光の軌跡を残しているかように―――残照を伴った視界の色は、永遠たる夜景を残しているかのようであった。


「―――先ずは私が案内する。みんなはついてきてくれ」

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