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21章 終わりなき暗澹

ロリスがレイラに撃たれ、投げ出された時に彼女は笑みを浮かべた。

不気味とまで謳われそうな笑みは全てを包むが如く、3人に向かって―――。

彼女は無神経にも懐に手を忍ばせていた。自らだけでなく、彼女たちに招待状を書き記す為にも……。

撃った本人であるレイラは落ち行く彼女を視界に映した時、ゆっくりと光が彼女の眼を覆い尽くしたのだ。


―――その瞬間、世界は崩れたのだ。


◆◆◆


「―――中継です、只今、プロメテイア・エレクトロニクス本社上空へ来ております。

こちらを見て下さい、およそ62階から最上階まで掛けてまで大爆発が発生、約8階分のフロアが崩れ去ったと言う事件が起こりました。爆発はダイナマイトによるものと見られ、我々は解析を進めております。

崩壊したフロアは粉々に砕け、真下の大通りに落下、今のところは32名の死傷者が出ております。

―――見解によれば、襲撃を図ったロリス国防長官が未だに姿を現さない為、一部ではロリス氏の特攻によるものだと考えが見られています。以上、現場からは以上です―――」


テレビからはヘリコプターから中継を行っていたリポーターの焦りを伴った声が聞こえ渡った。

32名をも死傷者を出したこの事件はどのテレビ局でもここぞとばかりに放映した。

視聴率合戦がテレビの中で繰り広げられている中、その様子を静まって観ていたのはサニーであった。

彼女は固唾を飲んでは様子を見守っていた。不安な気持ちに感情を隠して。


ベッドの上で寝ていた彼女は左足と右腕に大きな切り傷を負い、頭部に打撲を負っていた。

まだ軽傷で済んだのは、近くにあった野球場のネットに引っかかった事がクッション代わりとなった為であった。まさに奇跡とも言えることであった。

他の2人もサニー同様、野球場のネットに引っかかっては一命を取り留めたのだ。しかし、ロリスは瓦礫の山と共に大通りに落ちていったのである。


彼女は今、入院させられている。

一階で戦っていたリリカたちの助けによって、国に捕まる前に助けられたのだ。

偽名を使い、偽りの個人情報を用いて入院させられている。スピリチュアルながらもながらえた命、彼女は胸をなで下ろす思いであった。


「―――やはり、視聴者アンケートによればサニーミルク容疑者の自決と言う声が一番多いですね。

脱走しては多くの罪なき人を殺害してきた彼女にとって、そんな事は容易く出来てしまうんでしょうね」


ニュースキャスターは何時の間にかやっていたアンケート結果を開示しては、結果に声を乗せていた。

結末としてサニーへの侮辱で終わるニュースの話に心底うんざりしていた彼女はすぐにリモコンでチャンネルを変えた。同じネタに飽きないマスコミに呆れを感じながら。


彼女は激闘の末のせいか、腹の虫が呻っていた。

近くにあった菓子パンを勝手にかじって見せる。かんばしさがパンの柔らかい蘭麝らんじゃとなって、美味しさをより一層引き立てた。

コンビニのパンであったが、久々に食べたことや空腹が相俟って、それはそれはどんな料理にも勝ると言っても過言では無い程であった。改めて、最高の調味料が空腹であることを彼女は悟ったのであった。


しかし、その美味しさも自身に向けられた侮辱―――テレビでこれでもかという程放映する彼女のニュースによる胸糞悪さが最悪のテイストに仕上げているが。


「―――サニーミルク!貴様、偽名を使ってまで療養したいと言うのか!?」


彼女の病室に雪崩れ込むように入ってきたのは、マシンガンを携えた警察官たちであった。

病人らしく、静かに寝ていた彼女に襲い掛かったのだ。銃口を背中に向けられ、思うように行動できない彼女は焦燥感を募らせていた。

貞操概念の崩壊―――国として、邪魔者を排除するという荒々しい気質が垣間見えた今、彼女は此処で死ぬべきではないと全ての感覚がそう告げていたのだ。

警察官の1人がそう言った時、彼女は無抵抗のまま、寝ながら答えた。


「―――私は何も悪くない。全て、国が悪い。

―――どうせ捕まったら死ぬんだ、だったら最後まで足掻いて見せる。其れが、私に託された運命だと思ってる。諦めが悪くてごめんね」


彼女が瞬間的に飛び起きた瞬間―――片手に持っていた、銃化したゼラディウス・ウィングは全てを射貫くが如く、ベッドの上で回転しながら連射したサニーの前にいた警察官たちは全滅していたのだ。

血飛沫が真新しい病院内で飛散した。多少面倒な顔を浮かべた彼女は、多少休めたと自分に言い聞かせては、身体の仕組みにまだ欠陥を残しながらも戦う事にした。


倒れている警察官たちから何丁かの拳銃を盗んでは、懐に忍ばせた。

彼女の思う貞操概念が欠落した今、彼女の行動全てが悪なのだ。だからこそ、彼女はその状況を巧く活用しては未来を見出そうと必死にもがいていたのだ。

人生への諦観を何も持てずに、ただ無神経に足搔き続けていた彼女なりの……信念なのかも、しれない。


「サニー!大丈夫か!?」


「私たちも来ました!」


サニーと同じく、野球場のネットに引っかかって助かった2人が姿を現した。

ユウゲンマガンとレイラは武器を持っては、纏っていたスーツに真新しい血の染みを付けていた。

サニーは其れを確認するや、ゼラディウス・ウィングを構え直した。

するとレイラが思い詰めた顔を浮かべながらサニーに面を向けて話し始めたのだ。

何処となく不安げな、そんな思いを募らせて。


「―――どうやら、情報をリークしました。

国が―――ゼラディウスが誇る兵器、「バハムート・ジェネシス」の稼働だって」

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