18章 アムザーの来臨
サニーはゼラディウス・ウィングを銃化させ、引き金を引いた。
空中で羽ばたいては佇んでいたアムザーは銃弾をセンサーで気づいたのか、咄嗟に飛び立った。
そして、そのまま3人のいるヘリポートへ降り立っては地上戦を仕掛けてきたのだ。
飛べない3人にとって、寧ろ此の方が戦いやすいであろうが、敷地範囲が狭い屋上のヘリポートで、体積が大きいバハムートに占められてしまい、逃げ道が少ないというのが最もであった。
銃弾は鋼鉄の鎧で覆われたアムザーには効かず、弾かれてしまう。
鮮烈な音の響きが空中に木霊して、より一層アムザーの恐怖を引き立てるものであった。
ユウゲンマガンはサニーの攻撃を余裕そうに受けては機械の大翼を広げるバハムートの頑強さを、身に染みて感じたのだ。
硬いというレベルでは無い、攻撃を「受け付けない」のだ。
「流石は国が作った兵器……侮っちゃいけないね」
レイラは銃を向けてみるものの、やはり其れが無駄であることを知ると戦意を喪失してしまった。
手が震えた。自らより巨大な存在を前にしては、やはり心に地震が襲い掛かっては揺れ動くのだ。
しかし、このままでは攻撃される一方である。現にバハムートは3人に向かって、体内で精製していた煮えたぎるような炎を噴こうとしていたのだ。其れは噴火する火山のように……。
「―――だからと言って、逃げるわけにもいかないんですけどね」
サニーはそう言うや否や、一気に斬りかかった。
ゼラディウス・ウィングを地面に引き摺るようにしては、飛びかかったのだ。
其れは翼を生やした天使のように―――世界を一瞥するかのようにして。
其れに続いて、大きなガンハンマーを担いだユウゲンマガンも動いた。
ゼラディウス・ウィングの一撃を、炎を吐こうとするバハムートの頭部に突き刺すと電気が溢れる。
すぐに引き抜いては、溢れる電流の中に飛び込んでは背中に掴まるような形で乗りこんだのだ。
背中に乗られては自由を失ったバハムートは彼女を落とすべく、振るい落とした。しかし、直後に待っていたのがユウゲンマガンのハンマーであった。
唐突な一撃は、バハムートの顔部に付いていた自動サーモグラフィー型センサー装置を破壊した。
人の動きや人特有の体温で、敵の居場所を特定出来るセンサーなのだが、其れが壊れた以上、バハムートは盲目当然であった。然り、機械龍は暴走状態に陥ってしまったのだ。
「グギャアアアアアアアアアア!!!」
ゼラディウスの町中に響き渡るような咆哮は、その場にいた3人を凍て付かせた。
耳を塞ぎ、必死に耐え凌ぐサニーとユウゲンマガン。しかし、ユウゲンマガンは余裕そうな表情を浮かべた。
立ち竦む2人の横をゆっくりと歩いていく様相は、不気味ささえ呈していた。しかし、レイラは不敵な笑みを口元に浮かべたと同時に懐から黒い物体を投げたのだ。
「―――くらいな!」
其れは紛れも無い―――手榴弾であった。手榴弾は咆哮を放っていた機械龍に案の定炸裂し、其れは面白い事に機械の外装が剥がれ落ちたのだ。化けの皮が剥がれたように、中の精密な緻密機構が露呈したのだ。
レイラはここぞとばかりに銃を構えては、人で言う心臓の部分であるエンジン起動部を狙撃したのだ。
穿たれ、穴が開いたエンジンに機能の役目は無い。
残酷にも、完全暴走に陥ったバハムートは一気に3人に向かって突進して来たのだ。
其れはエンジンを狙撃され、機械として絶命したバハムートの最後の一撃であった。
予想外の攻撃に3人は驚き、立ち竦んでしまったのだ。
「あ、あ、ああ………」
彼女はああ、このまま終わってしまうのだろうか。
物語のクライマックス―――所謂、物語に幕が下りたのか、と思った矢先の出来事であった。
突然、閃光が解き放たれたと同時に機械龍は大爆発を起こしたのだ。
その光の中、埋もれる影が5つ存在したことを、その眼で彼女たちは理解した。
「―――お久しぶり、サニー。10分ぶりぐらいで」
「……来てくれたんだね、みんな」
其処には、ルナチャイルドやスターサファイア、プリズムリバー3人組がいたのだ。
全員、凛々しそうな顔つきを浮かべては、頼りさえ持てそうな勇ましい風格を解き放っていた。
まるで戦争から帰ったかのような顔つきで、到底頼りがいがありそうな……。
「まあね。内部が露呈してたアイツに爆弾をぶつけるだけの簡単お仕事。時給920円」
冗談交じりにそう言ったルナチャイルドは、笑っていた。
そんな彼女の笑みに、サニーもつられて笑いそうになった。何処か、おかしかったのだ。
黒焦げになっては残骸として燃え行くバハムートの前で、彼女もつられて笑みを溢した。ほんの、ちょっとだけ。
「―――まあ、誰かが困ってたら助けるのは当然ですからね」
「……どうやら、まだ私たちは困ってるようだね………」
リリカの発言を皮肉ったかのように言い放ったユウゲンマガン。
彼女が見ていた先を、他の全員は見据えた。其処には、空中に浮かぶ「眼」が存在していたのだ。
プロペラが回る音が鮮烈に響き渡る。ショットガンを片手に、存在していた人物―――。
「―――お久々!って感じ?」




