15章 解脱のゼラディウス・ウィング
サニーを先頭とした一行は外へ出た。
絢爛たる太陽の陽の光は衰えず照り続けている。血の跡はやはり変わらず、そのまま残り続けた。
何処からか物騒な声が聞こえ渡る。其れは援軍か、ただのマスコミか。
どちらにしろ、今の彼女たちにとっては厄介な存在に変わりは無い。礎の翼を携えては、いなくなった3人の姿を捜した。敢無く、その姿は裕に発見された。
彼女たちもまた、戦っていたのだ。二枚腰三枚腰の警官の姿勢に四苦八苦しながらも、何とか倒しきっては一息ついていた3人の姿があった。
「る、ルナサ!何処行ってたの!?」
「ああ、私は……て言うか、私も絡まれてて。柵に囚われてたんだ」
ルナサは3人に、自ら起こった事象の経緯を説明した。どうしていなかったのか、彼女は其れを一から十まで説明するや、ルナチャイルドは頷いて見せた。
彼女も戦っていた事を証明するのは、彼女の衣服に付着した染みで充分だった。
リリカとメルランも、いなかった存在に理解を覚えていた。
「……ったく、1人で自販機に飲み物なんか買いに行くなよな」
「す、すみません………エヘヘ」
頭を掻いては少し笑みを浮かべながらも反省の色を示すルナサに、何処となく怒りを忘れてしまっていた。
ルナチャイルドは少し溜息を吐くや、周りを見渡した。
先程と比べて、若干騒がしくなっている気がした。其れはユウゲンマガン、レイラも同じであった。喧噪的な、そして胸が騒めくような思いが、彼女に押し寄せた。
胸苦しい。サニーの世界が遠のいて見えるようになっていく。
忌々しい事象は何度でも蘇りて、運命を刻もうというのだろうか。その揺れた思いは、懐の中のスマホの揺れと一致させた。
「もしもし?あー、私だよ、スター。元気にしてる?」
サニーミルクが応答するや、相手はスターサファイアであった。
馴れ馴れしい口調が、彼女のぽっかり空いた心を埋めるかのように安堵を与えた。
幸せ、とは表現違いであれども、それでも何処となく希望に満たされた気がしたのだ。
「あー、うん。私は」
「そう、良かった良かった。今ニュース観てたけど、アルカナ党襲撃があったんだってね。
どうやらマスコミは視聴率が取れればいいのか、もうサニーのことなんてどうでもいいみたい。
だって、テレビで今、警官隊が何処にいるのかGPS機能や空中撮影を用いて捉えているんだよ。
―――そう、作戦がバレバレ」
スターサファイアは得意げになって話していた。
彼女が通話してるのを、他の仲間は気になっていたが、スマホから漏れる声を聞いては納得したようだ。
一応、サニーは他の仲間には左手の手のひらを向けては「話しかけないで」アピールを取る。
「今、警官隊は一時撤退してて、あと5分後にはもう一度襲撃するみたい。
でも、壊滅させる必要は無いかも。構ってほしいだけの連中だし、今すぐ逃げた方がいいね」
「まあ、そのつもりだからね。今からそっちへ向かう」
「あー、分かった。じゃ、頑張ってね」
スマホの通話が切れ、耳の中でツーツー…と虚空を抱いた音が鳴り響いた。
すぐにスマホを懐に入れ、教わった情報を信じては躊躇う必要もなくなった。
「―――すぐに避難する必要が、あるようだな」
ユウゲンマガンは腕を組みながら、通話し終えたサニーにそう問うた。
フフッ、と彼女は鼻で笑うや、首を縦に振った。相変わらずのバイタリティーであった。
他の仲間も、彼女の姿を見ては自らが置かれた状況の選択に迷いは無い事を悟った。
「……さて、逃げましょうか」
◆◆◆
党員用のバイクに乗って、そのまま脱出を図るサニーミルク一行。
以前、ユウゲンマガンとレイラがアルカナ党へ赴く為に用いた高速道路はロリスによって破壊されてしまった為、遠回りをしなくてはならなくなった。…そう、「can」では無いのだ。必然的な「must」である。
しかし、やはり予想していた通りに敵は存在していた。バイクで追跡してくる、警察官たちだ。
諦めが悪い存在に、サニーはバックミラーで確認しては仲間たちに手振りで伝えた。
親指で後ろを示すや、全員は理解したようであって、最前線をサニーのバイクが切った。
スピードを落とし、警察官たちのバイクと並走するや彼らは彼女に銃口を差し向けた。
放たれる銃弾。それらはサニーを穿たんと牙を剥くが、身体を器用巧みに反らして躱す彼女に当たるはずもなかった。
すぐにゼラディウス・ウィングを銃化させ、銃口を向けては引き金を引く。
銃弾は警官の腹部や胸部を射貫いて、血飛沫を道路上に噴きださせた。
警察官が射落とされ、運転者を失くしたバイクはそのまま暴走しては他の車に突っ込んだ。
其れが玉突き事故へと繋がり、そのまま壁として事故が生まれたのだ。
「……これでバリケードは出来たかな」
―――目的の場所はすぐそこだ。




