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13章 再会

2台の白バイはそのまま道路を疾走した。

やはり追手は存在し、ヘリコプターにマークさせられていたようであった。

GPS機能を駆使した、白バイの海と化した警察隊に追いかけられる2人はバックミラーでその光景を目にした時、面倒さと同時に呆れが生まれたのであった。

ユウゲンマガンは一掃すべく、手榴弾を取り出すや後方へ投げたのだ。

彼女の投擲は、大きく弧を描いては追手として追い付こうとする警察隊のバイクの海に降り注いだ。


その瞬間、市街地で大爆発が発生、多くのバイクが吹き飛ばされたのであった。

レイラとユウゲンマガンはアクセルを踏み込むと、視界の奥に見据えられた建物へと急いだ。


「―――見えてきましたね」


◆◆◆


当の本人は、しっかりと保護されていた。

党首のルナチャイルドがサニーミルクと会話していたのだ。

自販機か何処かで買ったのであろう、ペットボトルのお茶を飲みながら。

其処に来客として2人はリリカに案内された。アットホームのような感覚が否めない。


「こちらです」


リリカが案内した先にいた2人に、激浪の戦いを歩んできたレイラとユウゲンマガンは報われたような気がしたのだ。

どっと疲れが押し寄せた。置かれていたソファにユウゲンマガンは寝込んでしまったのである。


「だ、大丈夫ですか社長!?」


駆けつけたサニーミルクとレイラは疲弊仕切っていた彼女を心配していた。

しかし社長は唐突として捕まってしまったサニーミルクに再会出来て、何処か幸せな感覚であった。

やはり大事な社員であった。忘れる訳が無いのだ。

貞操概念を捨てられた以上、この上ない大変な人生を歩むことになるが…其れは其れで仕方ない事なのかもしれない。


「…あー、私はサニーに出会えて良かった。無事だったんだな」


過呼吸ながらも、彼女は笑顔を作って見せた。

ぎこちない笑みであった。硬い笑みであったが、サニーは其れを見て何処か感銘を受けた気がしたのだ。

何故か、不思議であった。この会社に勤めて良かった、と言う過去への思いが生まれて…。

自分の為に、ここまで傷を負って来てくれる社長が他にいるだろうか?其れはレイラにも言えることであった。


「―――それよりも、お久しぶりですね。サニーミルクさん」


「うん。来てくれて…ありがとう。…流石に奴らも此処には来れないみたいね」


サニーミルクはペットボトルのお茶を飲んだ。

党首のルナチャイルドは2人の登場に胸をなで下ろした気分であった。

ソファで寝転ぶ2人も、よく此処に来ていた存在であった。家みたいな感覚に使ってくれようが、家族の一員のような気がしたのだ。


「―――まあ、藜羹れいこうだけども、御持て成しはさせて頂くよ。

―――わざわざ来てくれたんだしね。…レイラにユウゲンマガン」


「いつも、ありがとうございます。でも、私も…もう無理です」


レイラはルナチャイルドに丁寧なお辞儀を見せるや、疲れ果ててしまった。

そのまま地面に寝込むレイラ。相当な疲弊が、その様相から見て取れた。

サニーミルクは自身の犯した罪、そして仲間をも巻き込んでしまった自分の愚かさを身に染みて感じたのだ。


―――やはり、あのまま死ぬべきだったのか。


―――ギロチンで首を削ぎ落とされた方が、良かったのか。


そんな思いが沸々と、頭に浮かんできた。

其れは彼女の頭の中に湯気が立ち込めるかのように、考えも何もを隠してしまったのだ。

霧や靄のように、何処となく何かへの殺意や怒りが湧いてきた。やがて其れの対象が霧の中からうっすらと姿を見せたような―――。


―――そうだ、ドレミー・スイート大統領だ。奴さえ、奴さえいなければ。


「一先ずは、お2人を寝かせましょう。宿泊部屋にお運びいたしますね」


その時、丁度良くやって来たメルランはやって来た2人の様子を見ては目を丸くした。

リリカはメルランを呼びよせては、2人を運んでゆく。

其れは引っ越し作業員の丁寧な運搬のようであった。そのまま運ばれていった2人を前に、サニーはその光景を眼に映えさせた時、改めて自らの立場を理解したような気がしたのだ。

残酷で、そして悲しい「何か」が彼女を取り巻いているかのように……。


「―――ねえ、ルナチャイルド」


彼女は静かにルナチャイルドを呼んだ。

物静かな声に彼女も最初は気づかなかったが、何度か呼んだうちに反応してくれた。

しかし、当のサニーミルクは顔を真っ青にしては絶望を顔に具現化させていたのだ。


「……ど、どうしたのサニー!?顔が…顔が真っ青だよ!?」


「……私、これからどう生きようかな、って思って」


彼女は天井を見上げては、虚空を眺めた。

限りなく遠い世界を望んでは、自ら置かれた境遇を呪っていたのだ。

彼女は溜息混じりに、そう話した。其処から彼女の気持ちが滲み出ていた。


「―――どうするも何も、生きなくちゃ駄目!…だからサニーはここにいるんでしょ!死んじゃ駄目!」


「……へへっ、何時もは堅苦しい口調も急に柔らかくなったね」


彼女は気持ちを入れ変えるや、改めてゼラディウス・ウィングを右手に持った。

光が刀身にうち輝いては、何処と無い世界を見せているようであった。其れはサニーの真っ暗闇な未来を示しているかのようであった。

彼女は改めて自信を持った気がした。


―――その時、突如として轟音と共に揺れが襲い掛かったのだ。


「―――サニーミルクを取り押さえろ!」

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