9章 特攻のエレクトロニクス
ユウゲンマガンとレイラはそのまま会社を出た。
巨大なオフィスビルを背景に、多くの信号を無視しながら突き進んでいったのである。
公道である為にやはり追ってからも見つかりやすく、サニーミルクを捜していた自衛隊のヘリコプターにその存在を見つかってしまったのである。
スポットライトを照らされ、敵視された2人にユウゲンマガンは苦そうな顔を浮かべていた。
「案の定、来たか―――」
彼女は事前に持っていた手榴弾を前方に投げると、其処は交差点であった。
多くの車が走っている中、手榴弾は光と共に炸裂しては大爆発を起こした。多くの人々の悲鳴が上がったのである。2台のバイクはその中を突っ切り、燃え上がる煙に隠れるよう走行した。
空中では手榴弾の煙が邪魔で見えず、行方を失ってしまった自衛隊員が地上の警察に連絡を入れた。
「こちらエレクトロニクス追跡組!只今、市街地に手榴弾を展開!多くの人が犠牲になっている模様です!
我々は人々の救出に回りますので、追跡の担当はお願いします!」
スマホ越しに連絡を入れた自衛隊員はそのままロープをヘリコプターから降ろしては救援活動に回った。
この連絡を聞いた多くの警察官が白バイに乗って、手榴弾を展開した2台のバイクの追跡を開始した。
手榴弾によって混乱に陥っている道の中を颯爽と駆け抜ける2人は、新たにやって来た存在に苛立ちさえ覚えていた。
レイラは右手で運転しながら、左手で銃を持っては銃口を後ろに向けた。
「―――来ましたよ、続いて」
「面倒な奴らだ……」
取締役もガンハンマーと言う重たい武器を左手で構えては、右手で運転した。
バイクのスピードメーターは裕に90を超えていた。重力に多少任せながらも、重たいハンマーを持つユウゲンマガンは混乱で生じた、前方の車の玉突き事故を見計らった。
逃走中の進路妨害である事故を起こした車に向かって、ガンハンマーの一撃を喰らわせると車は圧し折れるようにして、道が出来上がったのである。
その上を通っては、警察官と言う追手にうんざりしていた。
「……私がいきます。社長は無理やりでも進路を作ってください」
「分かった。頼む」
取締役はハンマーで進路の妨げとなる車を破壊していく。その間にも迫り続ける警察に、レイラは引き金を引いた。銃声と共に、一つの爆発が起きてゆく。
伴う断末魔の声。残酷な世界が、その絵には描かれていた。
血飛沫と共に、太陽の下のビル街は悲鳴に包まれていったのである。
「私たちをマークしてくるとは……大統領は何を考えてるんだ!?」
ユウゲンマガンの一筋の叫びには、世界の不条理さを如何に表していたのか、よく分かるものであった。
必死に平和への道を歩もうとする自分たちの道を妨げる存在に、頭を疑って。
サニーミルクの唐突な逮捕をきっかけに起こった事件に、2人は混乱していた。
どうしてこうなったのか。大統領の意図も、全くという程分からなかったのである。
「きっと私たちに弱みでも握られてるんだと思いますよ。私たちが其れに気づかないってだけで」
「その余計な手出しが、更に私たちを敵に回してるけどな!」
◆◆◆
多くの警察官が彼女たちに襲い掛かったが、レイラの銃弾が全て撃退した。
しかし、追手はこれでもかという程湧いては、立ちはだかって来るのだ。レイラも人を撃つことに鬱になり始めてきたが、それでも撃ち続けた。
やがて見えてきたのは高速道路入り口であった。其処に乗り込んで、アルカナ党への近道が出来ると確信した2台のバイクは料金所で待つ暇も無かった。
ETCカードなぞ知らず。バーを打ち破って強行突破した2人に更なる追手として、NEXCOゼラディウス―――高速道路警備隊がバイクに乗って襲い掛かってきたのだ。
銃弾が2人に向けて放たれる。それらを避けながらも、2人は反撃の狼煙を上げた。
「……私たちは此処では負けるわけにはいかない!」
ユウゲンマガンは後ろに手榴弾を投げると、高速道路警備隊を巻き込んで大爆発を起こしたのだ。
一度に沢山の悲鳴を上げながら派手に吹き飛ぶ人たち。バックミラーで、残虐な絵はまじまじと映えていた。
手榴弾の煙が急に途切れたか、と思った時、2人に新たな刺客はやって来た。
黒いスーツ服を纏って、バイクに乗っては2台のバイクと並走する人物…。
ユウゲンマガンはその人物の顔を見た時、じっと睨み据えた。
「……ゼラディウス国防大臣―――ロリス!」
「そうですよ。如何にも、って感じ?」
バイクに乗りながら彼女は2人に拳銃を向けた。
物騒な面構えに苦い顔を浮かべたユウゲンマガンはガンハンマーを構えた。
しかし、先に先制したのはレイラであった。銃弾はロリスの頭部を貫かんとするが、身体を逸らされてしまう。
「―――全く、物騒だね。危ない危ない……。
まあ、やっちゃうよ!こっちだってドレミー・スイート大統領の命令だし!って感じ?」




