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end 12月26日

20XX年12月26日。

澪が死んで、2年と1日が経った。


 ◇ ◆ ◇


「久しぶり、元気?澪?」

僕は白い息混じりに、澪に問いかける。

もちろん、答えは返ってこない。


「お誕生日おめでとう、澪。

 プレゼントは、前から欲しがっていた指輪。

 ―――――ちゃんと、左手の薬指につけてね?僕もつけてるんだから」

そう言って、墓の上に箱に入ったままの指輪を置く。


「僕は今でも君を忘れていないよ。

 今でも君のそばに居るからね?」

そう言い残して、立ち去ろうとした。



「太陽、くん…?」

声の方へ視線を合わせると、おばさんがいた。

「お久しぶりです。

 ―――――お元気そうで、何よりです」

「太陽くんも…元気そうで、よかったわ」

沈黙が舞い降りる。


おばさんたちとは、澪のお葬式のあと一度も会っていなかった。


「…澪は、幸せね」

「え?」

「これだけ澪のことを愛してくれている人が居るんだもの」

おばさんは微笑む。

その目に涙を溜めながら。


「これ…、澪から太陽くんに…」

「澪から!?」

おばさんは頷く。

「澪は自分の記憶がなくなる前にコレを書いたの…。『コレは私が死んでも…私が太陽を忘れても、太陽が私のことを好きだ、と言ってくれてたら…渡して』って、澪に頼まれてたのよ」

おばさんは、僕に白い封筒を手渡す。


そこには澪の字で、『太陽へ』と書かれていた。


「…ありがとうございます」

「お礼を言わなくちゃいけないのは、私たちの方よ。

 ―――――澪を今でも愛してくれて、ありがとう」

涙をこぼしながらおばさんはそう言った。


 ◇ ◆ ◇


僕は家に帰り、おばさんから渡された手紙の封をきった。

便箋は、澪の文字で埋め尽くされていた。


『太陽へ

 この手紙を読んでいる頃、きっと私はいない…または、太陽のことを覚えていないことでしょう。

 

 最初に謝っておきます。

 ごめんなさい。

 太陽は幼馴染という理由だけで、無条件に私を愛してくれて…

 それなのに、私はあなたのことを忘れてしまう。

 薄情者だね。

 

 病気のことが分かって、凄く不安だった私に、太陽言ってくれたよね?

 『澪が僕を忘れても、嫌いになったり、忘れたりしない。

  ずっと、澪のそばに居る』って。

 すごく、うれしかった。

 太陽がそう言ってくれたから、すごく、安心できた。

 ありがとう。 


 今きっと太陽は、凄く怒ってそう…。

 私は一足先に天国で待ってるけど、怒りすぎてあまり早く来ないでね?

 

 最後に、こんな私を今でも愛してくれて、ありがとう。

 愛してるよ、太陽!

 澪より』


手紙の一部は、澪の涙でにじんでいた。


「…、みお………っ…ぅあ…」

僕は堪えきれず、涙を流した。


澪が死んでしまってから、泣いていなかった。


「ありがとう、澪」

僕の誕生日に、涙をくれて。

「ありがとう…澪」

こんな僕でも、愛してると言ってくれて。


「ありがとう…澪。

 ―――――愛してるよ」


『太陽、愛してるよ!』




どこかで澪の笑う声が聞こえたような気がした。

ここまで読んでくださって、ありがとうございました。

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