聞こえる
「よっと。」
俺は4mあろうかという脚立に乗り、甘そうな真っ赤なトマトをもぎ採る。
ボトッ。
「キャー!かっこいい!さすが悠梧様だわー!!!」
「本当ね、亜美香ちゃんが羨ましい!・・ってあ、危ない!」
「ん?」
ビチャッ!
「キャアアア!!」
「あ、亜美香ちゃん?大丈夫!?」
「う、うん・・・。」
「あー、やっちまった。目に入ったか?」
「え、どうだろう。もしかしたら、そうかも・・・。」
亜美香はくりくりしたとても大きい目をパチパチ瞬きさせ
「い、痛い。入ったみたい・・・。」
と、痛々しそうに呟いた。
俺のクラスのストーカーチックな女子の軍団に高い所に出来たトマトを採ってくれと頼まれ仕方なく採っているところだった。
そのトマトを女子が受け止めなかったから亜美香の頭にバシャッ・・・
となってしまった・・・。
「う~、亜美香に悪いけどトマトの実が吹き出て血みたいだぞ~。なんか不気味。」
と、その時・・・。
「本当に血かもね・・・。」
ん、なんだ?
誰かの声が聞こえた。響き渡るような声をしているのに小さい声。でも、
透き通るような声が聞こえた。男の。
俺はあたりをキョロキョロしながら、
「ん?今なんか男の声しなかったか?」
と聞いてみた。皆も聞こえたはずだ。
「はぁ?そんな声しなかったわよ!それより、早く保健室行くからどいて!」
的外れな返答をしてきた。しかも怒られた。
亜美香は目を押さえながら怒ってポケットのハンカチを探る。
俺は、
「一人じゃ危ないぞ、連れてくよ。ほら、ハンカチ。」
と、ポケットに入れていた青いハンカチを渡す。
「べ、別に良いのに・・・。でも、あ、ありがとう。」
亜美香は本当可愛い。俺は顔がにやけてしまい、にやけているのがバレないように
そっぽを向くと亜美香の腕を掴み引っ張って歩いた。
それにしてもさっきの声はなんだったんだろう。
俺の幻聴か?変な薬は飲んだ覚えはない。
あたりを見回しても人はいなかったし。
う~ん、なんだったんだろう。
俺は下を向いてハンカチで目を拭く亜美香を見ながら
保健室まで歩いていった。
俺はまだこの時気付いていなかった。
あんなことが起こるだなんて。
理解不能なところが多いかもしれませんが素人の小説なのでご了承お願いいたします。