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頭を殴られたような衝撃
息をすることも忘れた様に、その人を見つめるしかできなかった。
「朝の会始めまーす、ほら、席に着いて」
先生になりたての若い女の先生。小野先生。
初担任のクラスが何かと問題ありってかわいそうだとは思うけど、頑張ってください。
今日は先生の顔が少し緊張気味。
何人かが先生の様子に気づいたのか不思議そうに首をかしげた。
「今日は転校生を紹介します」
なんと。
こんなばらばらのクラスに転校生。
だから緊張してんのか。
入口から入ってきた姿を見てあたしは息をのんだ。
周りからは女子の黄色い声と、男子の若干残念そうな声が入り混じる。
「首藤雅史です。よろしくお願いします」
いないから、安心してた。
ある意味前回の小学校生活をぼろぼろにしてくれた人。
前回は1年生から一緒だった。
席も近くて話しやすくて友達だって思ってたのに。
結局小学校卒業まであたしをいじめてた人。
きっかけは本当に思い出せない。
前回も大人になって偶然すれ違った時でさえ胸が苦しくなった。
目があった瞬間逃げ出した。
そのくらいあたしに影響を与えた人。
先生が何か言ってたけど、全然聞こえなかった。
ただ、彼を見てる事しかできなくて、彼と目があって慌ててそらした。
「紺野さんの隣が空いてるからそこに座ってね」
ひいいいいいいっ
心の中の絶叫は誰にも聞こえてないことを祈ります。
ゆっくりと近づいてくる気配。
「よろしくね」
かけられた声にゆっくり顔を上げて曖昧に頷いた。
ああぁ……変わらず麗しいお顔ですね。
そう、すごくカッコイイ子なんです。
顔はともかく前回のことが気になってしょうがない。
もう、絶対関わらないようにしよう。
幸い、対立中だし、関わらなくても不自然じゃないよね……
って、思ったのに。
そうね、席が隣ですもの。
教科書くらい見せるよね。
距離が近い。
なんかこっち見てる?
「なんですか?」
あんまりにも視線がウザったくて、きいてしまった。
なんで嬉しそうに笑ってんだろう。
「ううん、ね、どっかで会ったことない?」
「……気のせいじゃないですか?」
「じゃ、なんでそんなに慌ててんの?」
余裕の表情で囁かないでください。
授業中だから小声なだけなんですけど、なんだか囁くって表現のほうがぴったり。
「ほんとは覚えてるんでしょ。だって対応がそのまんまだもん」
はじかれたように、見てしまった。
目があった瞬間、確信を得たように彼はにやっと笑った。