優太-1
きっかけは何だったか、はっきりとは思い出せないけど、俺はあいつの側を離れた。
思えばそこが、分かれ道だったように思う。
あんまり話さなかった小学校時代。
あいつのそばには首藤がいて、あいつも笑ってた。
でも、いつからかな様子が変だって感じ始めたのは。
首藤とも話さなくなって、一人でいることが増えて。
下を向いて無表情を貫いていた。
気づいた時にはそんな感じだったし、その頃には話すことなんて滅多になくなっていて、どう声をかけていいかわからなかった。
話さないまま、別の中学に進学してそこでやっといじめがあったことを知った。
中心が首藤の取り巻きたちだったことも、……俺の取り巻きたちだったことも、そこで気づいた。
離れて気づいたってどうしようもなくて、無意な三年間を過ごしたと思う。
野球部の練習試合であいつの中学校に行った時、あいつを見かけた。
俯いて、黒縁のメガネをかけて、一人で歩いてた。
まだ、いじめられてるんだって、直感した。
あいつが気になって練習試合はボロボロだった。
一瞬だけ見たあいつが気になってしょうがなかった。
隣の家に訪ねるのも気が引けて、俺は単純だから、高校は同じとこで影ながら見守ってやろうって決心した。
ま、そうやって他に気をやってるもんだから、中学校でできた初彼女はあっという間に離れて行った。
で、必死に勉強して入った高校で、信じられない噂を聞いた。
あいつが中学校の音楽教師と付き合ってるって。
廊下ですれ違った時、お互い笑いあうとか、密会してるとか。
噂はいろいろあったけど、その噂を流してるのはあいつの側に友達面して立ってる女だった。
あの女のお陰で、あいつは綺麗になった。
それは認めてやる。
でも、本当に時々、俺と話すあいつが嬉しそうにあの女の話をするのが我慢ならなかった。
あの女の本性を知ったら、お前、泣くだろ?
だからずっと言えなかった。
だけど、言っておけばあんなことにはならなかったかもしれない。
後悔しても遅いけど、守りきれなくて……
こっそり仇討ちに行った先で首藤にあったのは予想外だったけど。
気まづげにそらされた視線に、首藤の気持ち、分かっちまったからな。
あいつをほったらかしにしてるのはお互い様で何も言えなかった。
そのすぐ後、報告、相談って名目であの女が俺に近づいて来た時、元凶は俺だって理解した。
気づいちまったら、そばになんて行けねえじゃねえか……
傷も癒えないまままにいろんな男と付き合い出したあいつにも少しイラついたけど、ズケズケ言える仲でもないんだよな……
な、お前信じられる?
俺、彼女できてもさ、お前と比べてんだよ。
お前の側にいる男はレベルの高いやつばっかりで、社会人になってからは、正直諦めてたよ。
適当に付き合ってた女と結婚して、適当に生きて行こうって思ってたし。
25歳になって、相手から結婚を匂わされて、潮時かなって思った。
そんなに苦痛な相手でもなかったし。
相手の都合でよりによってあいつの誕生日の日。
挨拶に行った先で、急にめまいに襲われた。
俺の名前を呼ぶ両親の声を聞いてフェードアウト。
「…ゆうくん、おねむ?」
小さい子の声。
真っ暗だった世界に光。
うっすらと開けた目に映るのは、懐かしい笑顔だった。
まだ、苦しいことも、嫌なこともあまり分からないだろう小さい君。
眩しかった。
この笑顔、ずっと、見ていきたいな。
そう、思わせる笑顔だった。




