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なんか、ちがくね?
「しょーこちゃんのママ、おりょうりじょうず!」
「ゆう君ありがと~、かわいいわ~、うちの子になって!!」
奈津子ママ(元、優太の母。現、あたしのお母さん)のすごく嬉しそうな顔。
出されたケーキを食べてニッコリ笑顔の優太は可愛い。
奈津子ママ、骨抜き。
「笙子はあんまり笑ってくれないからゆう君に癒されるわ~」
「いやされる~」
きゃーって二人で笑いあってる。
すごく疎外感を感じます。
そっかー、あたしこっちの家に生まれても疎まれてるってこと?
目の前のイチゴのショートケーキは奈津子ママが作ったのかな。
すごいなあ、うちのお母さんなんて料理全くしない人だった……
一口食べて甘い匂いに少し泣きそうになった。
「かなしいおかお!!」
「?!」
びしっとあたしの目の前に出てきた指先に驚いて息をのんだ。
「ケーキはうれしいおかおなの!」
めっ
怒ったような優太、困ったような顔の奈津子ママ。
「だめ、やりなおし」
その言葉が、なんだかガツンと来た。
何にも知らないはずなのに、全部知ってるみたい。
そういえば優太は昔からあたしに笑えって言ってた。
やり直しの人生。
自分から変わらないとだめってこと?
少しは、みんなに好かれる様なる?
「……うん」
優太が真剣に見つめる中、あたしは何とか笑って見せた。
多分ぎこちない笑顔だったんだろうな、優太があたしを見て笑った。
その能天気な笑顔になんだかちょっとだけ救われた気がした。
パシャ
「?」
「笙子の笑顔!レアものね」
うふふっと笑うママの手にはカメラ。
「はい、笙子~もう一回笑って~」
なんだか照れくさくなって、両手で顔を隠す。
「あら、恥ずかしがっちゃって」
ママの声は楽しそうで、余計に恥ずかしくなった。
ピンポーン
「はーい。ゆう君多分お迎え来たよ」
パタパタと走っていくママ。
優太は嬉しそうに笑って残りのケーキを食べている。
なんだか、胃のあたりが重い。
あたしはあの嫌な家を優太に押し付けたんだ……
そう気づいてしまったから。
お迎えに来るのはあのころは毎日来てくれてた家政婦さんだろう。
二人分の足音が近づいて、あたしはおそるおそる顔を上げた。
「優太、遅くなってごめんね」
母が、いた。
あたしのことは迎えに来たことなんてなかったのに。
あたしには向けなかった笑顔を浮かべて。
「ママ!おそいよ」
むくれる優太のほっぺたにキスをして、謝ってる光景を呆然と見てた。
あたしがいなければ、あたしじゃなければ、こんなにも優しい母だったの?