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思い返せば前回、せっかく収まったいじめの代わりに、凪が近づいてきたんだった。
中学校時代から地味な格好をしてたあたしを変えてくれたのは凪だった。
怒られない程度のカラーリング。
コンタクト。
ネイル。
メイク。
全部凪が教えてくれた。
男に免疫のないあたしをしょうがないなって笑って、皆であそびに行くときに混ぜてくれた。
変われたって思った。
でも、信頼させて、裏切られた。
レイプされた。
凪の指示で。
話を聞いて、慰めてくれたのは凪だったのに。
それを知ったのはずいぶん後で、あたしの評判が地に落ちてから。
それほどにあたしを蹴落としたかったんだ。
理由なんて、優太しか考えられない。
凪は、優太が好きだった。
時々でも、優太と話すあたしが気に食わなかった。
そんなとこでしょう?
できれば、顔も見たくない。
今回は絶対に会いたくない。
そう、思ってた。
でも、高校からの持ち上がりで、凪のような派手な女はいないって思ってたから、気づかなかった。
こんなに地味な子になってるなんて……
目の前で、美味しそうにココアを飲む凪。
あちって顔をしかめるとこ、
目が合えば、真っ赤になるとこ、
なんか動きが、小動物っぽい。
可愛いんですけど。
どうしましょう、これ。
「俺は、関わんない方がいいって言ったよね」
うん、言ってました。
「じゃ、それなに」
それとは、あたしの後ろにへばりついてるこれのことでしょうか。
優太の笑顔が怖いんですけど。
そりゃ、あたしだって、こんなになるとは思ってなかったの。
「それじゃないです。凪です」
へばりついてる物体が返事をした。
あたしを通りこして、凪を睨みつける優太が怖い……
「離れろ」
「嫌です、今日も一緒に帰るのは私です」
お互いの間で、火花が散った。
うっかり可愛いって思ってしまってから、ちょっとお話とか、色々したの。
そしたら懐かれた。
学校ではべったりくっつかれて、部活で練習中も傍で聞いてる。
帰りも一緒。
さすがにどうかなって思ってたとこに、あたしより先に優太が切れた。
「先に帰れば?杉崎君はああなったらなかなか落ち着かないだろ?」
あたしから少し離れたとこで、なにやら言い合ってる二人を呆れつつ見てたら、後ろから声がした。
「古屋君、……うるさくてごめん」
「いいよ、俺ももう帰るし。なに、あれ待ってるの?」
「うーん……帰りたい」
「じゃ、帰るよ、ほら早く」
鞄をもって、あたしの腕をつかんでさっさと歩き出した。
「ちょ、古屋く」
残してきた二人が気になるけど、それ以上に腕をつかんでる手にドキドキした。




