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「信じらんない!!もうヤダ!絶対あれ、別人!!」
「先生じゃない時点でそれに気づいていればなあ……」
うんうん
頷く須藤にいら立ちの籠った拳を仕掛けてみる。
かわされた。
より、むかつく。
「な、お前。先生じゃなく、古屋が好きになったんだろ」
にやり
悪代官の笑い。
「なわけないでしょ。好きになんてなってない」
そんなわけないでしょ?
あんな事言われて惚れるバカいないって。
「はは、悪い。……性格違っても顔は同じなんだもんな」
よしよし、お前はつらい恋ばっかだねえ
分かったような顔で頷く須藤の背中を思いっきり叩く。
「いやいや、俺だって不安なのよ?あいつが嫌な奴になってたらどうしようって」
前回、結婚を真剣に考えた人がいたらしい。
その人に伝える前にこんなことになってしまったらしく、須藤は彼らしくない弱々しい笑顔を見せた。
出会いも、付き合ってたのかも全然教えてくれないけど、この話題になるたびに遠い目をする。
「……変わってないよ、大丈夫だよ」
小さくつぶやけば、びっくりした後、本当に嬉しそうに笑った。
「ありがと」
なぜか赤くなってしまった頬を両手で隠す。
須藤とこんな話をするのは楽しくて、切ない。
前回を、思い出してしまうから。
今はもう慣れた新しいお母さん。
違う家。
妹。
優太。
同じようなとこもあるけど、やっぱり少しずつ違う。
時折、ふと、帰りたいって思うことがある。
あっちの世界だって、楽しいこともあったかも。
不器用なだけだったのかもしれないお父さん、お母さん。
少ないけど、友達もいた。
そして…先生がいた。
思い出すたびに胸が苦しくて、生きてた中で一番の…恋…だった。
何度彼氏が変わっても、心の隅にずっといた。
中学校の三年間。
遠くから、こっそり見てました。
少し話せればそれだけで嬉しくて、学校に来るのが苦痛じゃなくなった。
今は、心から、ありがとうって言いたい。
この世界の先生は、あたしの見てた先生じゃない。
仲良くなんてなれない、したくないけど、前回できなかった恩返しをしたいって気持ちもあるんだ。
何ができるか分かんないけどね。
少し考えてみようと思う。
とりあえず部活は頑張る。
大会終了したら辞めるかもしれないけど、今は頑張る。
古屋君はこの頃おとなしくなった、比較的。
あたしと目が合うと、逃げるように去っていく。
そんなにきっついこと言ったかな……
避けられると傷つくんですけど。
……ま、とりあえず大会でいい成績とること。
恩返しはこれくらいじゃ返せないくらいだけど、手始めにね。
「頑張ります」
「お、どうした、急に」
「なんでもない」




