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悩んだ。本気で。
今の周りに不服はない。
でも、行けば、逢える。
「え?!なんで?!」
「なんでって……行きたいから」
来年は中学生だね、何の部活に入る?テニスとか男女あるし、一緒にやらない?
そんな優太の笑顔をぶっ壊してまでも、行きたいって思った。
前回であたしの中学校生活を支えてくれた人に逢いに行きたい。
好きかって聞かれたら、多分初恋だったって言える。
あの人のおかげで、前回のあたしはあったんだ。
「聞いてない!」
「うん、今初めて言った」
「僕も行く」
「無理じゃない?」
「なんで?!」
「あそこは……勉強できないと……」
笙子ちゃんのいじわる!!
泣いて走り去っていく後姿をゆっくり追う。
だって帰り道だもん。
同じ方向だもん。
だから、ストーカー的なことじゃないのよ?
……説明口調になってしまうのは、周りが怖いから。
6年生になって、優太は女の子にもてている。
わんこみたいで可愛いって……
そんなわんこっぷりはあたしに対して発揮されているもんだから、周りの御嬢さんたちの目が怖い。
優太と一緒にいると、前回のことを思い出す。
話しただけで文句を言われて、いじめの標的にされたこと。
あいつは顔が良いから、女の子が寄ってくる。
それは須藤にも言えることだけど、思えば、当時のいじめは嫉妬されてたんだろうか……
まさかな……
「ただいまー」
「おかえり、笙子。さっき優太君が中学校の願書のコピー、持っていったけど。やっぱり一緒に行くって?」
苦笑したママはそうなると思ってたって、今日届いた受験票を手渡してくれた。
「願書締め切りまであと、一週間か。さすがの笙子も罪悪感があったか」
……だってさ、あんなキラキラの目で中学校生活の三年間一緒を何度も言われれば、だまっていくのはちょっと、心苦しいよ。
「笙子ちゃん!父さん、母さんも良いって言ってくれたよ!」
決断早いなあ。
って思ってたら、多分こうなるだろうって予測してたらしい。
仲良く受験に行って、共に合格しました。
前回とは違った流れ。
不安もあるけど、4月に逢えるはずの人を思えば、嬉しい気持ちが勝った。
機嫌のいいあたしを見て、優太は自分のいい方に解釈してるらしい。
うん、でもあんたの初彼女になる予定の子は別の中学校になっちゃったよ?
さんざん、自慢してたじゃない。
可愛いって、紹介もされたなあ。
優太のことは放っておいても大丈夫でしょう。
それより、自分のことだからね。
絶対、出会って見せるんだから!
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