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「笙子ちゃん、説明」
優太?
君の可愛いとこはクリクリの大きな眼だよ!
そんなに眼を細めてシワ寄せたら可愛くない!
「ね、なんで名前で呼んでるの」
なんか怖い。
目が笑ってないってこういうことなんだね。
「先週転校してきた……」
「知ってる」
僕が聞きたいのはなんで呼び捨てしてるかってことだよ。
って目が言ってる。
「あたし許可してない。勝手に呼んでる」
「ふーん」
納得はいってないみたいだけど、やっと目線が外された。
優太の膝でケーキを食べているあたしの妹、律子に袖を引かれたためだろう。
4歳になった律子は優太が大好きだ。
幼稚園から帰ってきたら、まず優太にくっ付くことを日課にしている。
そんな律子について回っているのが優太の弟、紘。こっちも4歳。
前回はいなかったあたし達の妹、弟。
生まれたときはホントにビックリした。
「しょうこねえちゃん」
律子に全く相手にされず、悲しそうに寄ってきた紘を抱き上げる。
4歳の身体はちょっと重いけど、膝に乗せて顔を覗き込めば、悲しそうな顔がにへらって笑顔になった。
優太にそっくりな大きな眼に、ふくふくのほっぺた。
可愛くてぎゅっと抱きしめた。
「ひろちゃん!」
みれば、可愛らしくほっぺたを膨らませた律子が紘を睨んでいる。
あたしのつり気味の目とは違う、大きなたれ気味の目が今は細められている。
律子は我が家のお姫様。
自分中心。あたしに親や優太、紘の関心が向けられると癇癪を起す。
「笙子、ごめんお使い行ってきてくれない?」
キッチンの奥から、母の申し訳なさそうな声が聞こえた。
律子の目から逃げられるのは嬉しいから、すぐに返事をした。
奈津子ママは原稿の締め切りが2日後という切羽詰まった状態なので、お使いはあたしの役目。
「悪いわね、ありがとう」
「大丈夫、ママは仕事だもん。頑張って」
紘を下ろして立ち上がる。
「優太、律子と紘、よろしくね」
「……僕も行く。律子、おりて」
「やだ」
「律子」
お?なんだか優太の声が不機嫌ですか?
えー、まだ何か怒るのかな。
しぶしぶながら膝を降りた律子は紘の隣に座った。
不服そうな顔も可愛いな、わが妹。
隣の紘は嬉しそうだけど。
「さ、笙子ちゃん行くよ」
何だろう、恐いです。笑顔が。
「なんでずっと一緒にいるの」
「……一緒にいるのは付いてくるからで……」
「今日の放課後、手、繋いでた!」
「すぐほどいたよ」
「僕はなんでクラス違うの?!」
「先生に聞いて」
「笙子ちゃーん!」
え?そりゃ、注目の的だよね。
恥ずかしいわ!




