第二話目『3つの国、8つの聖堂、そして伝説』
―前回までのあらすじ―
死んだら異世界にとばされ、魔物に追いかけられ国についたと思えば追いかけてくる魔物の大群を指揮していると思われ戦ってみたらなんか俺強かった。
強いやつに憑依しているということはわかった。
門番の名前は『ファイ・エネーシア』俺の名前を教えてくれといわれても、たぶん大和武といえば不思議がられることはあたりまえなので、『イリス・ルヴェル』という名前を勝手に付けて自己紹介をした。
こっちはまったく自己紹介してないじゃないか、などの誹謗中傷は受け付けない。
「で、この世界についてききタイのか?」
「あぁ。」
そう返答をすると、不思議そうに門番は俺をみる。この世界についてききたいというなら、お前はどこで生きているんだ?と言いたいのであろう。
さて、なにか言い訳を考えなければ。
「森の奥深くに最近まで住んでたんだ。」
そう言うと、門番は納得したように頷いた。そしてこの世界について説明を初めて行く。
「この世界は『シルヴェアニア』という名前でな、三つの国で成り立っている。」
世界そのものが三つの国?どういうことだ?
疑問に思ったが説明に横槍をいれてもしょうがない、とりあえず聴き続けることにする。
「三つの国、それはひとつひとつ分野にたけている。さて――」
説明を簡略化させてもらう。
・ケルベドランド
産業が盛んで、貿易等で国を成り立たせている国
・ファルディアス
観光、そのうえに農業が盛んで、もっとも美しい国
・エリシアス
軍事系がとてつもなく強く、軍事兵器などを中心にしている。
この三つがあるらしい。
そしてそのうちに、8つの聖堂があり、それがある場所が実質国の一番発展した都市、もしくは二番目か三番目らしい。
『火の聖堂』
ケルベドランドにある聖堂で、火の神を祀っている。
『水の聖堂』
ファルディアスにある聖堂で、水の神を祀っている。
『地の聖堂』
ケルベドランドにある聖堂で、地の神を祀っている。
『風の聖堂』
エリシアスにある聖堂で、風の神を祀っている。
『光の聖堂』
ファルディアスにある聖堂で、光の神を祀っている。
『闇の聖堂』
ケルベドランドにある聖堂で、闇の神を祀っている。
『時の聖堂』
エリシアスにある聖堂で、時の神を祀っている。
『空の聖堂』
ファルディアスにある聖堂で、空間の神を祀っている。
この8つの聖堂がある場所が国の重要な場所らしい。
その場所に城などがたっているらしい。
「じゃ、ひとつ聞くけど――この国はどこの?」
「いや、ここは中立都市、記念都市と呼ぶ人もいるけどね。」
「記念都市?」
「記念都市、何千年も前の伝説でね、『魔王』という存在がいたらしいんだけど、それを倒した人の出身がここなんだって。」
「魔王と勇者の物語のはじまりの地、ってこと?」
そう聞くと、コクリとファイはうなずいた。
「この都市の名前は『レシェント』中立と平和の象徴。そのためにすべての国から魔法使いを教育する機関がある。その名は『レシェント魔法学院』」
「そのまんまだな。」
そう返答すると、ファイは苦笑いを浮かべる。
「そういうなよ、たぶんこれで大体のことは話したぞ?勇者の物語はこの国の図書館にでもいってくれ、とりあえず森の奥にいたんだからどうせ金もないのだろう?手配魔獣を金にかえれば、このレベルだしひと月は楽できるんじゃないか?」
Aランクの名に恥じない金をもらえることに正直安堵した。
金はもっているかもしれないが、それはちゃんと落ち着ける場所をみつけてから確認するつもりだった。
「じゃあ、ヨロシク頼む。」
「あぁ、任せておけ、っと、とりあえずこいつを運ぶか。」
そういって魔獣を指す。そして苦笑いをしながら「俺もてないからよろしくたのむ」といってさっさと門に戻ってしまった。
俺は持っていけるか分からなかったが、とりあえず魔獣の死体を担いで見る。
なんてちーとぼでぇー、軽々と持ち上げる自分に驚きながらも、俺は魔獣からたれている血がかからないために引きずることにした。
―国内
ファイがまっていて、先にいってこっちだと指をさす。
どっかの牧場物語の村長の村の説明みたいな感じだ。
引きずっていくと、人の視線を感じ、そちらをみる。そうすると町娘のような人と目が合い、そらされた。
疑問に思っていると、ファイの声が聞こえたので思考を中断し、そちらに視線を戻す。
指しているのは建物、近づくと『魔獣対策部 本部』という文字が見える。
そして目の前の掲示板に大量にビラが貼ってある。
それをみながら、俺は玄関の前の二枚トビラをあける。
扉一枚の面積じゃ魔獣が通らないかもしれない、そう思うとファイがもう一方のトビラの鍵をあけ、入るようにする。危険な気遣いはできないが、こういう気遣いはできるやつなんだな。
中に入って魔獣を置くと、そこには色気を振りまく女性と、屈強そうな男性がいる。
「おうっ、お前がこの魔獣を倒したのか?倒せる奴なんてこの国でもひとりくらいっていうのにやるなー。」
そう人懐っこそうな笑みを浮かべた屈強そうな男性の似合わなさに、一瞬固まるが、すぐにハッとする。
「とりあえず倒したのですが――これからどうすれば?」
そう聞いてみると、女性は色気のある声で返答をしてきた。
「とりあえずここに名前と倒したという証明を書いてくれないかしら」
そう言われ、近づき、その証明をみる。
『討伐に対する証明』そう書いてあるのを確認する。見たことがない文字だが、読める。
この体の恩恵というものだろうか、たぶん染み付いたものは取れないのだろう。
文字なんてものは読むというよりみればわかるといったものだからだ、戦闘もこの体は当然のようにしていたのだろう。
渡してくる女性のその細い指からペンを受け取ると、書いていく。
『イリス・ルヴェル』そう書いていくと、スラスラと書けていく。
書き終えて渡すと、コクリとその女性はうなずき、その紙をバインダーのようなものにいれると、袋のようなものを渡してくる。
「200000エリスよ。」
「エリスっつーのは、この世界の通貨だ。ついでに100エリスでりんご一個くらいだ。」
ファイのその声にうなづく。
俺の世界での円という通貨単位とほぼ同じなのだろう。
りんご一個100円というのは質によって違うだろうが、質をあるていど良くするとそれぐらいにはなるだろう。
それを受け取り、ペコリと頭をさげる。
「とりあえず、自己紹介をしとくべきだと思うわ。これからさき、お世話になるかもしれないし。」
頭をあげると、そう女性が言い放つ。
それはたしかにそうかもしれない。
「では、私はイリス・ルヴェルと申します。」
そういって自己紹介をすると、色気をもって微笑みをもってちょっと息を女性はつく。
「かたいわね、私はフィリーネ・ガルヴァよ。」
「僕はメイス、メイス・ターニャだ。どっちが名前なんだとかよく言われるけど、メイスって呼んでくれ!」
ほほえみながら、一方は元気良く自己紹介をしてもらう、メイスは気持ちいいくらいの挨拶だ。
コクリとうなずくと、「よろしく」と手をさしだす。
フィリーネもメイスもその手を握ってもらった。
「よろしくね。」
「よろしくなっ!」
その声を後に、外へとでる。ファイもそれについてくる。
「さって、ファイ、とりあえずお礼に飯でも奢るよ。」
「おう、そりゃうれしいな。」
そういって笑いあう、この国の男性は人懐っこいのだろうか?
思わず笑みを浮かべてしまう俺を感じながら、俺はその後で宿を教えてもらうおうと思った。
―side ????
暗い暗い世界で彼を待つ。
ときが経つごとに彼のことを思い出せなくなってくることに嫌気がさしてくるけれど、私は彼をこの部屋でまっている。
「―――――♪」
歌を歌おう、彼が気づいてくれる。
この歌は彼が口ずさんだ歌。
彼のお気に入り。
彼の気配を近くに感じとることができることに、嬉し涙を流す。
彼はなにもの?
ワカラナイ
でもきっと、彼は私の―大切な人だったはず。
―side end
―side 主人公
ファイが教えてくれた店は安くて上手いという店。
異世界の料理というから、いろいろなことを考えてみた。
日本の料理は美味いと聞く、口に合うかどうかはわからないが、食べてみたいという好奇心があった。
ファイと同じ料理をたのみ、恐る恐る一口。
「美味い…」
そのひとことにファイは嬉しそうに笑う。
「おう、この店は安くて美味いッ。」
そうにこやかなファイにうなづくと、俺はさらに食べるスピードをはやめる。
ガツガツとくっていると、ふいに視線を感じ、そちらをみると、ウェイトレスと目があった。
ウェイトレスはすぐに視線を外し、パタパタとかけていく。
その様子に怪訝になったが、ファイの視線を感じたので戻す。
「ふぉうふぃふぁんふぁ? (どうしたんだ?)」
リスのように頬いっぱいに食べ物を含んだファイに、なんでもないと手振りで示すと、ファイは食事に視線を戻した。
美味いせいもあってか、すぐに食べ終わる。
外に出ようとすると、「ありがとうございましたー!」という店の主人とウェイトレスの声が響きわたる。ウェイトレスの声がうなずっているように聞こえた。彼女はきっとアルバイト初日なのだろう。がんばってほしいな、なんて思いながら俺はファイに宿屋について聞くと、ついてこいといわれ、宿屋を教えてもらった。
そこの宿屋で、部屋を取ると、部屋があまっているようなので鍵をうけとった。
「じゃ、俺は門番にもどるぜ。」
ファイは部屋にはいった俺にそう告げると、手をヒラヒラとさせる。
「なんかあれば言えよー!昼飯で手をうってやる。」
そうにこやかに笑っていう彼に、苦笑しながら手を振り返す。
ファイはそういってすぐに消えていった。
俺は荷物に視線を戻す。
小さな小袋に視線を落とし、その中に手を突っ込んだ。
巨大な瓶が出てきた。
「法則無視ッ!」
さすが異世界、そんな馬鹿げたことを思って、俺は瓶を引き抜く。
チャプンッという音をたてて、内部の重さで瓶は揺れた。
内部には青い水っぽいものがはいっている。
だがそれは綺麗な海のように青く美しい。
思わず、それを一口。
底から元気が湧いてくる、そんな感覚がして俺はその招待をおおまかでああるが理解した。
FFでいえばポーション、そういったものなのだろう。
効力はよくはわからないが、でかい瓶を眺めながらもう一口飲んで見る。
疲れがうそみたいに消えた。
「――ふぅ。」
息を吐き、瓶の中にあるものがまったく減っていないことに気づく。無限にある、ということはないだろう。瓶と水とは思えないほどにこれは重い、この中に入っているのは無限ではないが、この重みの分なのだろう。
ポーションのはいった瓶をコトンと机に置く。
そしてさらに袋をさぐる。
本のようなもの、青紫の透き通った液体の入った瓶。
本はペラリとめくると手書きなのがわかった。印刷技術が低いのかもしれないが、袋の中から書かれている文字と同じ太さがかけるペンがでてきているのをみて、俺の体の元の使用者が書いたものだと理解した。読めば魔法について書かれていることを理解した。あとで読もうと思う。
高級そうな箱をみつけ、それをおそるおそる開けてみる。
「うぉっ!?」
8つの光が俺の中にはいていった。
思わず服を脱いでみる。
そこには色とりどりの紋章があった。
8つの、紋章?
なにがなんだかわからない、これはなんだ?
混乱したが、扉越しのノックで意識を取り戻し、ドアをあける。
宿屋の主人が笑顔を浮かべてその場にいた。
「夕食です。」
そう言った宿屋の主人に「ありがとう」と告げると、俺はさきにいった主人を追いかけるように、部屋に鍵をかける。
そして、反射的に口が『閉じろ、護れ』という言葉を発する。
思わず立ち止まってなぜそんなことをいったのかわからなかった。だがこれもいつもやっていたことなのだろう。
部屋に結界のようなものをはられることを感じながら、夕食の場所へといった。
夕食は視線をひたすらに感じた。
だが気にしないことにした。国に入ってから幾度となく向けられる視線、熱いまなざし、それがなにを示すかはわからないが、俺は夕食をすぐに食べ終え、戻ってくる。
「――なんだこれは。」
戻ってきた俺が目にしたものは、ヒビの入った結界。だが破られてはいない、すぐに結界を解き、室内に入り瞬時に結界を張り治す。
内部は荒らされていなかった。そりゃ、結界は壊れていないからどうだけども。
ホッと安堵をして、ベッドに腰掛ける。
薬品で疲れはとれたとしても、精神的な疲れは残っている。
俺はゆっくりとまぶたをとじ、ねることにした。
―夜
音がしない、音がしないからこそ聞こえる音がある。
ゆっくりと、覚醒した。
『――――♪』
歌が、聞こえた。
もっと寝たいという体に反し、精神はゆっくりと起き上がる。
宿の外へとでる。そしてまるで操られているかのようにたどたどしい歩きをしながら、俺はゆっくりとその声がする場所へと歩きだす。
街の、小さな森林。
小さなもので、子供の遊び場にしかならないその森林は、日本の小さな公園のような大きさで、俺はその公園の下に、歌を聞いた。
思わず、その地に手をつかむ。
その瞬間、光が発生する。
黄色い魔方陣が起こり、思わず腰の剣を引き抜いた。だが抗えない。
魔法陣の発行が収まると共に。
――イリスの姿はそこから消えていた。
ふぅ、簡単ではありませんね、小説を書くということは。
書き方というもののアドバイスがあればうれしいです。