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第十話目『沈黙の女神』


『レシェント魔法学院』


『レシェント』、中立国家、平和の象徴としてもいわれるこの国家は、三国の国からたくさんの人々が魔法の研究と勉強のためにこの学校にくる。

だからこそ色々な人々が来るものだ。





「では、施設の紹介をはじめますね~」


そういって学生証を配り始めた女性、『アメリア』苗字のほうが『アストアリア』なので、アストアリア先生とよばれ親しまれている女性だ。

クリーム色の髪で、蒼い目をしている。


その女性が学生証を配り、俺の元にもくるので、それを言われるがままに開いてみる。

そうすると魔方陣が浮かび上がり、文字が書き込まれる。


『検索』


「これは、口でいえば自動で検索されます。ではみなさん――」


「先生。」


先生がおそらく『言ってみましょう』とでもいうつもりだったであろう言葉に、割り込む生徒がいた。ピンク色の髪をした少女、その隣にいるのは蒼い髪の少女がいた。


「あら、メリアールさん、なんでしょうか?


「――言葉が話せない人はどうすればいいのですか?」


そう聞いてくるメリアールさんとやら、その少女に向けられたのは嘲笑だった。


『魔法は言葉というものが大切ですからね…といってもこの向ける態度はあんまりだと思います。』


俺の制服のポケットにいるルビーが布により閉鎖されている場所にいるせいか、あまり聞き取れないが、グチグチと不満をいった。布によりあまりみえていないだろうが、嘲笑の声に怒りを覚えたようだ。


「――その人は心で念じて魔方陣を触って頂ければ大丈夫ですよ。」


そういって先生はクルリと一回転する。そして話を初めて行く。

俺は後ろで、小さくメリアールさんが、蒼い髪の少女の背中をポンッと叩くのをみて、蒼い髪の少女が嬉しそうにしていたのをみていた。


「(――機会があれば話してみようかな)」


本当に、機会があれば、だけど。


「学院施設」


そういうと、魔法陣が起動し、幾つもの項目が出る。


【魔法学】


その項目を押せと言うから押してみると、幾つもの説明が始まった。



めんどくさいからまとめさせていただく。


『学習』

『研究』

『実践』


この3つからなる魔法学。


『学習』

・四号棟、一階~四階

・魔法を学習する授業

・心構えについて


『研究』

・四号棟、五階から~八階

・魔法を研究する

・心構えについて


『実践』

・魔法実践館(体育館の奥にあった、試験場所

・魔法戦闘を学習する

・心構えについて

・注意事項



―――それのみだった。


正直、これ以上いうことはなにもないだろう。そのまま連れられて施設見学をやればすでに昼休みへと入っている時間帯、先生は、じゃあがんばってね、なんていってどっかへいってしまった。


「――さてどうするか?」


飯を食べる、というのは代わりはないが、誰と一緒にたべようか。

セレミアさんの視線を感じ、そちらに目を向けると、一瞬で目の前に来ていた。


なんだこの速さはッ、彼女にとってすでに常識とは蜃気楼か!?

そこにありそうでないものなのか!?


呆然としていると、セレミアさんが声をかけてくる。


「いっしょに食べません?」


そう聞いてくると、俺のほうにいっきに視線を感じた。

推測するに、セレミアさんはこの学院の孫だ。つまりこの国の代表と言える。

しかもこの国は中立国家にして一国ほどの権力をもつという。

三国が共に統治している、だが、この国はどこにも属さない国家だからこその権力と言える。

お近づきになれば、結構優遇されるかもしれない、そういったものからだろう。

睨みつけるような視線を感じながら、俺はどう拒否するか、なんて考えてみるが、腕をつかまれる。


「ほら、セレミアがいいっていってんでしょ?」


そういう少女は、ミーナさん。

さらに騒々しさが強まるが、これを引き起こしている二人はとくに気にしていないようだ。


なんだかわからない、が――なにか危機のようなものも感じる。


「――ミーナさんは、なぜここに?いなかったよね?」


そういうと、ミーナさんはお退けて顔を赤くする。


「寂しかったのですか?」


「うっさい!」


セレミアさんの言葉に顔をさらに赤くして否定するミーナさん、あぁ和むわ。


「あぁもうこい!こいちくしょー!」


本当に貴族なのだろうか、と思える自棄糞な感じの言葉で俺はひっぱられていく

視線は永遠と続いた。







視線を受けながらの昼食、気にしない二人に対し、気にするのはおかしいのだろうか。

そう思ってしまう俺はおかしくないと思う。


二人のモフモフとサンドイッチを食べるところをみて、セレミアさんもいつもこのくらい普通だったらなぁ、と思いながら俺も頼んだ料理をたべる。

スパゲッティー、ミートソースくらいならあると思ったらそんなことはなかったんだよ。――自然の旨味をいかした料理、それがこの世界の料理だ。

調味料はあまりにも少なく、それだと単調な料理の味しか考えられないが、旨みなどを活かし、そこから美味しくする。

魚介類のスープとか、にぼしのダシで作ったみそしるとか、ああいうのは調味料のみではできないだろう。

調味料に頼らないのに、味はたくさんあり、飽きることがない、――でもその例えをすると味噌汁が飲みたくなってくる。


食べ終わり、ミーナは優雅に紅茶タイム。

セレミアさんも紅茶で、俺はコーヒーを飲んでいる。


「そういえば、お兄さんにあった。」


ゴブァッという音をたててミーナさんが紅茶を吹いた。


「あ、あらあらぁ?私に兄なんていませんよ!?」


あまりにも同様していってくるミーナさんをじっとみてみると、顔をそらされる。


「変わった――お兄さんだったね。」


「うぐぅっ…もういいですわ、あの変態のことはなにもいわないように!」


あ、妹も変態認定?


「でも、いい人ではあるよな。」


「馬鹿正直で馬鹿なのよ…」


「寂しがりやは似ていた。」


「いっしょにしないで。」


真顔で怒るところをみると、マジで嫌っているのだろう…なにをやったんだ。

そうして話していると、気配が背後にした。

振り向いてみると――ジェイク。


「ここにいたのはマイエンジェル、アンドマイフレンド」


そういってこちらにやってくるジェイク。もう慣れた。

あからさまにミーナがゲェッという声をだした。――貴族の上女性がはしたない。


「うむぅっ、ミーナがこんなにもぼくに反抗的な視線を向けるなんて――昔は『おにいちゃーん、私ね、私ね、お兄ちゃんのお嫁さn「わーっわーっ!」…まったく、静かにしなさい。」


「あんたのせいでしょうが!」


「こんな子に育ってしまって…」


ヨヨヨ…と崩れ落ちるジェイクをみて、ミーナがひたすらに「うるさーい!うるさーい!」と叫び続ける。なぜだ、なぜほのぼのとする。


「本当に仲がよろしいようで――」


「なにいってんのよセレミア!?」


心外そうにミーナが叫ぶと、復活したジェイクがキュピーンッという音をたてて回転する。


「永遠に仲良しさッ!禁断の愛!」


その言葉に、この場にいる他生徒が、「え、本当に!?」などと噂をしはじめる。


「違う違う違うんだからぁぁっ、バカァァァ!」


その叫びとともに、昼食は終了した。









昼食は終了し、別れた。

そのまま中庭でも歩いてみようか、と思ったが、あまりこの学校に慣れてないのか、迷ってしまった。


ついでに今日の授業はもうない、やることはやってしまったようだ。


とりあえず歩いていると、三人の男が目に入った。

なにをやっているんだ、と思ってみると、教室いにいた、あのピンクの――メリアールさんといったか、あと蒼い髪の少女がいた、その人たちが三人に囲まれているような状態だ。


「お前、しゃべれないんだってな。」


その言葉に、蒼い髪の少女はひどく傷ついた顔をして、メリアールさんは憤慨した。


「どうでもいいでしょ!?目障りなのよ!」


そう叫ぶと、少年たちは嘲笑する。


「貴族に逆らうつもりなのか?平民が。」


「そうだそうだ、生意気なんだよ。」


そういっている三人に不快感を感じた。ルビーがポケットの中からはい出てくる。


「なんなんですか、あれ…」


そういって不快感をあらわにするルビーに同意したいところだが、これからどうしようかと思う。

行ってもいい…だけど、俺はあまり目立ちたくはない。


――いや、そんなことをいっている場合ではないだろう。


「口も訊けない出来損ないが、なんでこの学院にいるのかわからない、同情でも買ったのか?」


そういって嘲笑をし続ける男子生徒、ギャハハと笑う声の不快さは果てし無かった。


「ルビー、いくぞ。」


「はいっ!」


そういって外にでようとしたとき、男子生徒が魔法を構成するのをみた。


「だからさ、出来損ないはどっかいけよっ!」


――なんて傲慢。

怒りで毛が、肌が、ザワッという音を建てた気がする。

怒りをもって、瞬間的に男子生徒と、ピンクと蒼い髪の女生徒の間へと割り込んだ。

8秒ほどかけて出来上がった魔法は、小さな水の龍だった。

俺に驚いてはいたが、共々に吹っ飛ばせばいいなんて思っていたらしい、俺は剣を鞘から抜き出し、一撃で水の龍は消滅した。


「なッ、お前、貴族に逆らうつもりか!?」


「通りすがりで、なんか魔法がきたから斬っちゃいました。」


魔法が剣で吹き飛ばされる――その光景を見て、驚きながらも貴族のご子息様とやらは俺を睨み付けて喚くように言ったので、平然とかえしてやった。


「そもそも、魔法学院内では理由無き魔法の使用は禁止されておりますが。」


「バカじゃねぇの?ここは裏庭だッ、学院内じゃないぞ、バァーッカ。そもそも役たたずを廃棄する理由なんだよ、すばらしいだろ?俺がみんなの代わりに捨ててやるんだよ!」


バカはお前だろう、学院内というのは敷地内であって、建物内ではないし、私用じゃ理由にはならんだろう。


そう思って冷たい目でみると一瞬怯えるが、すぐに後のやつらに声をかける。


「お前らもうてよ!」


そういうと、少し怯えていた後のやつらも、笑いながらうってくる。それを剣で吹き飛ばす。


「おや、この程度でしょうか。」


三人の攻撃をただの剣でひとふりで消去。それをみた男子生徒は怯えを含んだ顔で俺をみる。

――ジェイクは変態でも、いい奴なんだな。

ちゃんと友達になれる、なんて底辺をしった俺は思った。


「チッ、なんなんだよお前ェェッ。」


ルビーに目を向けて、後の奴の保護をしてくれという視線を送るとコクリとうなずかれた。

それをみて安心すると、後でジェリッという音をたてた上に、殺気を感じたのでうってくる魔法を対処しながら振り向いて見る。


――修羅がいた。


ピンク色の髪をした修羅が。







「――あんた、名前は?」


殺気を出しながら聞いてくるので、「イリス」と答えると、コクリとうなづいたかと思うと、ギギギッという音をたてて俺の後にいるやつらをみた。


さすがに殺気に気づいたのか、貴族ご子息は怒りに震えていた。


「あんたたち、ねぇ…ッ!」


ゴゴゴゴゴゴゴッという音がたっているような感じがする。怖い、ありえないほどに怖い。


「アイリスゥッ…」


目を向けられた女性、蒼い髪の女性はビクビクとしながらもコクリとうなづいた。


「教えてあげるわ…何故しゃべれないのにここにこれたか、だったわねぇ…たしかに言葉は大切だわ…追尾せよ、なんて言葉は策略に使えるもの。」


首をゴキンッという音を立てて曲げると、元に戻し、さらに逆の方向に動かす。


「でも、アイリスわねぇ…それを凌駕するの…」


そういうと、アイリスは魔法を高速で構成する。

あいつらは8秒だったところを2秒程度で構成を完了させた。


すると、水の龍が、あいつらの80倍はありそうな水の龍が現れた。

小さな龍などどうでもいいといえるくらい、まるでそれは本物のように。


「魔力が、普通の300倍くらいはあるのよねぇッ!」


「ひっご、ごめんな「問ッ答ッ無用ッ!」ひぃぃぃ!」


「トラウマにでもなってろっ!」


怖ェ…。

茫然としながら俺とルビーが同時にそう思った。


ドゴォォォンッという音をたてながら、水の龍は直撃し、あっけなく男子生徒は吹っ飛ばされた。

爆風から身をまもるために、魔法を高速展開し、後のアイリスさんとメリアールさんを護るために大きく展開した風の盾により、魔法は防がれた。

――あれ、俺ここに来なくてもよかったんじゃね?なんて考えながら先生たちがかけてくる音を聞いた。






理由を聞いた先生たちは、男子生徒三人は寮に謹慎させ、アイリスさんとメリアールさんは厳重注意となった。

今度やったら、たとえ理由があったとしてもかばいきれないぞ、といって先生は去っていった。


男子生徒は次からアイリスさんをみると恐怖で顔がひきつり、メリアールさんをみると悲鳴をあげて逃げていくことになる。


俺はなぜか知りあってしまったのを後悔しながら、もうどうにでもなれ、と開き直り、先生から止めたことによるお褒めの言葉を頂いた。

さすがに剣は危険だからあまり多用するなとは言われたが。


運が良かったか、けが人がいたとしても軽傷だということ。


ルビーがいうに、魔力をみると、俺よりも多いくらいらしい。ルビーには叶わないらしいが、そういって誇らしげなルビーをみて、現実逃避していた。

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