第五話
星空を見る願いは、思わぬ形で叶えられた。
十二月のある夜、エドヴァルトがエリアーナの部屋を訪ねてきたのだ。
夜の十時を回っていた。彼女が読書をしていると、扉が叩かれた。
「今夜は流星群が見られる」
「本当ですか!?」
エリアーナは急いでショールを羽織り、踵を返すエドヴァルトの後を追う。
エドヴァルトは王宮の最も高い塔へと続く階段を登った。
塔は天文台として使われており、大きな窓が空に向かって開かれている。
塔の上に出ると、冷たい空気に包まれた星空が、息をのむほど美しい。
王都の灯りの中でも、今夜は特別に澄み、星々が鮮明に瞬き、その間を流れるように光の筋が走った。
「ああ……きれい……」
エリアーナは感嘆の声を上げた。
流星だった。長い尾を引いて、夜空を横切っていく。
もう一つ、また一つ。
次々と流れる星々。
エリアーナは欄干に両手をつき、空を見上げ、胸の中で何かがゆっくりと満ちていく感じがした。
「ありがとうございます。こんな日があるとは知りませんでした」
「ルードヴィヒが調べた。今年最大の流星群だそうだ」
「また、ルードヴィヒさんですのね」
「あいつは気が利く」
「殿下がお好きなのですね、ルードヴィヒさんのことが」
エドヴァルトはわずかに顔をしかめた。
「好きというような話ではない。有能だということだ」
「よく似た意味だと思いますけれど」
エリアーナは流れる星を目で追いながら話す。
「昔から、こういう光るものが好きでした。蛍も、花火も、星も。消えるから美しいのかもしれません」
エドヴァルトは黙っていた。
「殿下は、何かそういうお好みのものはありますか。美しいと感じるもの」
「……夜明け前の空だ」
「夜明け前」
「完全な暗闇でも、朝の青でもない。その間。一瞬しか続かない」
エリアーナはエドヴァルトを見つめると、彼は空を見たまま言った。
「それが美しいと思う」
「殿下も消えるものがお好きなのですね」
エドヴァルトは何も答えなかったけれど、エリアーナにはそれが否定でないことがわかった。
二人は流星群が流れる間、塔の上に立っていた。
エリアーナが体の冷えで震え始めると、エドヴァルトがエリアーナのケープの上から自分の外套を掛けた。
何も言わずに。
エリアーナも何も言わず、ただ、外套の重みと温かさを感じながら、流れ続ける星を見ていた。
三つ目。叶った。
ブックマーク、★★★★★、リアクション
よろしくお願いします( *・ㅅ・)*_ _))ペコ




