8件目 嘘つきだらけ
「それにしてもここの風景もそうだが魔力もひどい、無理やり融合させたんだろう煉獄と魔力が反発しあってる」
魔力は煮ても焼いても無味無臭は変わらないものだが味付けがごちゃごちゃだった、中途半端に焦がした砂糖の味なので不味い。味があるだけいいかもしれないが。
さて見上げると光の橋に船が浮かんでいる。乗って大丈夫か?という顔をしている火野達にヒュプノスが
「原典だとこれに乗って死んだという描写はされていないぞ?そうかそうか知らなかったのか
勉強不足だな」
乗ってくれた、きっと大丈夫といった感じのことを伝えてくれたのだろう。
ぶらぶら揺られていると中心の光球に近づいていく中、皆復讐者みたいな顔をしている。佐目木がやられたことがそんなにショックだったか、俺は
見すぎて慣れてしまったな。
光球の中心に椅子に座る存在がいる、その存在は時計頭の半人半機。
あっお前、神だったのね。と間抜けなことを考えていた俺とは違って火野はすさまじい怒気を隠せずにいる、取り調べ室の時の間抜け面とはすごい違いだ。
チック。タック。チック。タック、チック、タックチックタックチックタック
苛立って赤熱して拍子が早くなっていく。
俺は前科一犯だけど他はどれだけやらかしたんだろうか?いや大量殺人してるわけだから罪の数はあっちの方が確実に上だろうけど。さて火野君たちはブチギレて口論を始めているが、この時銀崎ならどうするか考えてみよう、きっと火に薪を焚べて油と水を注ぎ野原に放つようなとんでもない発言をしてくれることだろう。
「そもそも君の思う僕は主観や偏見が混じっていて実際の僕と乖離が少なからずあるに決まってるでしょ?そんなこと考えているほど僕のことを思ってくれているなんて、実際の僕に知られたらきっとそれ関係で死んでもいじられるよ?」
いやなほど似ているなと蚊や蠅を掃うようにのけた。
火野は怒りをぶつける。
「お前が、お前が金屋達を、
佐目木さんを
アラネを
あんな目に遭わせやがった元凶だな!」
「あんな目にって言っても情報を流しただけだからそんなに怒られる筋合いはない、怒るなら実行犯だろう」
嘲るような口調で言う、銀崎かよ。
「とぼけるなよ、あの時見つけた録音機でてめぇの声を聞いたんだ!いい加減なこと言ってんならその頭解体して掃除してやるよ、チクタクマン」
火野は血管が浮きだちながらも半笑いな表情、ピキッてるという表現はここでこそ適切だろう。
「こわいなぁ、もっと理性的に話そうよ。こっちも噂は聞いてるよ、あのルキフグスの初代団長のご子息なのに誰にも引き取られずそのまま捨てられたんだって?やっぱそういうところで見捨てられたんじゃない?」
「うまく煽ったつもりか?あとはてめぇの首を切れば終わりだからな、そんで泣きつけばいいだろう、『ごめんなさ~い、失敗しましたぁ』って。だって居るんだろう親?」
刹那、火花が飛び散る。水瀬は定義不能体を剣にし、時計頭、いやチクタクマンは銃剣で応戦する。
カチカチとつばぜり合いが囃し立てるように音を立てて拍車をかけていく。
チクタクマンは空に飛びマシンガンを3対、背中から展開して火野にめがけて撃ち尽くす。
ここで火野はチクタクマンに手を掲げ、岩石の大盾を作るがその圧倒的な弾幕の前には無力であった。土煙が辺りに充満しているので地上は見えないだろう。なかなか頭が回るじゃないか彼。
背後から来る火野の拳に気づかずチクタクマンはもろで喰らってしまう。
ガキンと鈍い音を立てる、いい入り方だ。
砂が火野の手のひらに収束し寒色系のテラコッタを混ぜたようなものに変わっていく。あえて岩石にして撃たせることで視線を地上に誘導したのだ、武器ばかりを使っていたからフィンガーグローブで来るとは思わなかったろう。俺も予想できなかった。
「先輩、彼はどうやって飛んでるんですか?」
「聞きたいことはわかるぞ戸神、足を見て見な」
定義不能体をさまざまな物体に変え足場にしている。
これで地上以上に縦横無尽に動き回れるって寸法だ。
今度は空中戦で戦いが行われている、銃弾と槍が飛び交いながら本体は油断無しの殺し合い。ニュータイプ同士のモビルスーツ戦さながらの高機動で見ごたえがある。
―――おや、何かおかしいぞ―――
水瀬は疑う、逸話の再現を目的にしたのは確定だがかなり巻きで進めているように思えたからだ。
だけどそもそもが海に沈んだハイパーボリア大陸の地下、海から入るほかないという難易度の高い場所な上、魔術によってさまざまな箇所にダミーを設置されており地獄門を通過しなければ地獄にも入れないという完璧に近い仕様だ。
挙句巫女個体までこしらえている、ここまで完璧と言って差し支えない隠蔽と照応ができていながらなぜ見つかった?
銀崎が発見したなら単独かもっと早く報告してきたはず、国連ってのも妙だ、まだ安全だと判断されている場所にパトロールを出せるほどの戦力は保有していない。
ここからは考えても仕方ないか、おそらく事実であろうことの対処が優先だ。
「囃し立てる夜の宴で知らしめる。仮初5節、第3番、月を越える雌牛の猛進」
雌牛の突進で両者の空間を切り裂く、戦いを邪魔された相手方の視線がこちらに向いた。
―――目で人を殺せそうだな―――
「ハイハイそこまで。それだとあっちの思惑に乗っかることになるよ火野君」
「どういうことです」
「チクタクマン、そこまでにしておいたら?
時間稼ぎ」
チクタクマンがキレている理由の大半が水瀬なのは内緒




