6件目 探索
今度こそ本編か
銃撃の後や、家からも、人の気配は無かった。その為、私たちはジグラットまで行くこととしました。
そのまま入ろうとしたが、透明な壁に阻まれました。これは障壁でしょうか、つい先ほどの雷撃で脆くなったようですが、それでも力押しだと骨が折れそうです。
「かなり高位のものだな。やっぱり神がいるのは確実、いくら俺らの専門が詰み案件とはいえ、これは酷すぎるぜ、どこもかしこも人手不足なのかねぇ」
そう世知辛いことをぼやきつつ、先輩が障壁に触れると、魔力の流れが私たちの前を避けるように開ける。
「よし開いた、魔力の流れが穏やかで助かったよ」
「今のは魔術を応用した魔力制御ですか?」
「いや?ただ魔力の流れを動かしただけだよ、のれんをくぐるイメージだね」
先輩はとんでもないことを言っている。荒れ狂う濁流を、道具も使わずに、のれんをくぐる要領で軽く押しのけるようなものだ、はっきり言って人間業じゃない。これが謁見者の力の一端なのかと、最高傑作と謳われていた自分との格の違いを、まざまざと見せられたような気がした。
「戸神?お~い、意識がどっか遠くに飛んでんぞ」
「あっ、ごめんなさい。ちょっと考え事を」
「そうか、さっさと行こうぜ。ほら、のれんをずっと上げとくと腕と肩が痛くなるだろ?」
駆け足で入る。でもこれって、敵の胃袋に入っていくようなものなのではないだろうか。先輩が言うには、障壁の種類から察するに、外界を拒絶するタイプだから警報の類が鳴る心配はない、とのことらしいが、ここは神殿の類だ、下手に動いたらまずいのでは。そう思いながら少し進むと、霧が辺りを包む、神殿の姿はどこにもなく、鬱蒼とした林が広がるばかりだ。先輩は、最悪だ、と頭を抱える。
曰く、これは魔術の中でも儀式魔術、なにかと照応させることで疑似的な世界とし、その世界内では魔法じみたことも可能とさせる魔術の最高位。しかも今回は純度と完成度が高いらしく、推定でもかなりメジャーな物語だそうです。おそらく付近の家々はその物語当時の町の再現だそうで、どうやら心当たりはあるらしい。
「大方見当は付いたが独自の展開を介入させても崩壊しない辺り相当準備していたのだろうな、だがあの物語と合致するなら俺のもとに詩人が来るはず。そもそもなぜ獣の声すらしない、まさか」
多分二人ともゾクリとした、久方ぶりに感じた気配、神気だ。どこかで神が顕現したのか、これは違う、契約だ。誰かが今ここで、神と深層契約をしたんだ。深層契約、神の作った無理難題とさえ思える条件を突破した存在に与えられる名誉、両者が真の名を教え合い、互いが互いを支配する五分五分の契約。どちらかが一方的に押し付けられる表層契約とは引き出せる力の量も質も圧倒的に違う。
「俺の部下に神憑かれがいるんだが、多分そいつだ!」
「どの神かによってはちょっと躊躇しますよ」
「少なくとも殺し返すぐらいはできるから安心しろ」
付近に何か痕跡が無いか探せ、と大慌てで急かしてくるが霧が魔力をかき乱してくる、こんな時は八卦と金剛杵の出番です。
ミニ八卦を土に押し込み八卦図を展開する。
―――八卦・後天式、金剛杵共鳴、我が行く道、その御手に指し示せ―――
1つ1つ明かりが消えていく、最後に残ったのは南西。魔力の濃い所がある、おそらくそこにある旨を伝えると、一目散に駆けだした。
西洋式の彫刻の巨大な門、福岡辺りで見たものに似ている気がする。
そこに違和感を感じる。
―――開いてる?―――
水瀬さんはそのままは入ろうとするが誰かが言った。
「天に座する父の僕よ、巡行の生者は旅立った。汝は何を為す」
門だ、門が喋っている。水瀬さんは慣れているのか驚きもしない、まるで前に見たかのように。
「ここを壊しに来たけど、まだ罪はないだろう、通してくれるかな?」
「…罪なき者よ、通るが良い」
「穴作っとくから入ってきてね!」
ヒッっと空気が張り裂ける音を立てて、弩弓の如く隙間に向かって行った。
「ちょ、まってくださ」
「異邦の奇跡使いよ、汝はあの詐称者の天女か、それとも詩人か?」
「いえ、私は私です、それでは」
「なるほど、永劫を詐称する者よ。通るが良い」
バレた、本質を見る力があるのは確かに異常だ、お言葉に甘えてさっさと行かせてもらおう。
「待って下さいよ先輩!」




