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5件目 地底支糸橋神都アトリック・ボリア

前回までのあらすじ、雷を家にぶっ放してキレられた。

逃げろ、とにかく走って逃げ続ける。後ろにはめちゃくちゃキレてる時計男。

これだけだったらさして急ぐ必要はない。

そういえばこの状況は、ある程度戦って、なおかつ危険が迫っているので逃げたい、か。条件は満たしてる、あれも使うか。

「戸神、これ使え!」


水瀬はそう言って鹿のスカルフェイスを取り出す。もちろんこれも魔術具だ。


「それの起動条件は単純明快、被って魔力通すだけ、簡単だろ」

「どういう効果なんですか?」

「透明化、うってつけだろう?」


戸神の手をガシッと握る。

「先輩⁉」

透明鹿の頭骸骨(スロブロスキン)は手を繋ぐだけでも伝播する。あっちの廃墟まで逃げ込むぞ!先頭頼んだ!」

「わかりました、振り落とされないように注意してくださいね!」


さて、廃墟まで約2300mってところか。戸神なら速度を上げれば10秒で着くだ


直後に目の前に廃墟のレンガが見えた、そして廃墟に音を立てて()()する。


ぐぇ、とカッコ悪い声を出して倒れる。宇宙船の訓練並みのGのかかり方をした気がする。

周りを見渡すが敵影は無し、何とか撒いたか。


「ありがとう戸神。でも、今度は振り落とされる以外の心配もしてほしいな」

「注意します」

「これも終わったらメンテナンスだな」

仮面の土煙を手でぱっぱと掃う。


ドタドタと地下から登ってくる音がして身構えたが、出てきたのは一人の男だった。

「おっ、第一村人だ」

「お、お前ら何もんだ!」

「君こそ誰だい?あんま大きな声出すと蜘蛛が出るぞ」


ギシャアアアアアアアアアア


ほらね

節足を大きく振りあげたところでコンテンダーの16インチ弾を首にぶち込み、そこを起点に外皮ごとナイフで一周し切り落とす。仲間を呼ぶ前に一呼吸で仕留めれた。我ながら悪くない捌き方だったが、あちらの顔を見るに…なんか、こう、ファーストコンタクトに失敗した気がする。


「これ以上こじれる前に自己紹介させてくれ。俺の名は水瀬福郎」

「私は戸神八千代といいます。」

「日本というところで公務員をしている。今は状態が不明なので現状を聞きたい」

「み、水瀬?、謁見者と御三家の破壊兵器か!」

「そうそう、話が早くてとっても助かるよ」

「助かるのはこっちの台詞さ、だって増援にビッグネーム2名が来てんだろ?勝ったな!」

「いや、話を聞いて」

「シャーリー、助かったぜ俺たち!」

「だからね」

男の肩をガッと掴む。


「情報共有したいんだけど、いい?」

極めて素晴らしい営業スマイルをキメながら話しかける。これは我ながら上手く決まったな。


―――水瀬さん、魔力を隠しきれてないので本気でキレてるように思われてます。シャーリーさん?がうわぁって顔をしていますし、男性の方は動揺で冷や汗を滝のように流して目が泳いでます―――


―――あっ、泡吹いて倒れた―――


「おい大丈夫か⁉ちょっと今から運ぶから」

「いえ、私が運びます。それより先輩は魔力を抑えてください」

「えっ、ほんとだ。はずかしぃ」

「お疲れですか?先輩」

834連勤96徹は流石にヤバいか?と聞きたかったが聞ける雰囲気ではなかった、年下の女子2人から白い目で見られている中で言える男が居るとするなら元上司ぐらいだ。


廃墟の奥の方で間食にすることにした。

「先ほどは失礼しました、俺の名前はレイザー、こちらはシャーリーっていいます。イギリスから来たんですけど部隊が壊滅してしまい逃げてここまで来ました。シャーリーは足をやってしまい動けずといった感じで」

軍服の女が軽く会釈する、太ももに深い傷を負っている、包帯から滲む血の色からして、時間はそこまで開いていないものと思われる。

「それは災難でしたね、私たちは気づいたらここに」

「待て、部隊だとかそっちが軍服じゃないこととかは詮索しないよ。俺が聞きたいのは、ここはどこで、お前らはどういう経緯でこうなって、なぜ奴らがいるのかだけだから」

「そこからですか?ここはハイパーボリア大陸の地底に位置するアトラック・ナチャの巣。通称、地底(ちてい)支糸橋神都(ししきょうしんと)アトリック・ボリア。最近ここで、ヤバいことがあったのはご存じですよね?」

「アトリック・ボリア?なにそれ知らない」

「えぇ、うっそだぁ。だって国連で連絡貰ってますよね」

「ミスカトニック大学に来いとしか言われなかった」

「はぁ、謎ですね」


戸神はシャーリーに対して治癒の魔術をかけていた、肉の再生するミチミチとした音がかすかに聞こえる、結構魔力を使うはずだが顔色一つ変えない辺り、相当すごい魔力量らしい」


「謎だねぇ、でそのヤバい事って?」

「それを話す前に、アトラック・ナチャの習性は知っていますか」

「ひたすら幻夢郷への橋を作るんだろ?よくやるよなまだ500年はかかるだろ?」

「それがあと3日なんですよ」

「…今からドバイのホテルに予約を取ろうかな、世界が滅ぶ前にバックレて豪遊してみたいね」

「スマホ使えませんよ、あっ無線もできませんよ」

「どういうことだ」


そう聞くと、シャーリーと呼ばれる金髪の女がトランシーバを外に投げると、落ちることなく浮かんで空へ向かっていこうとして、レイザーはそれを見て慌てて覆いかぶさるように取り押さえた。


「多分、地上の謎の銃の束を見ましたよね、あれは突入した部隊の重火器がついさっきのように奪われてできた物なんです。神と呼ばれる存在が確認されたことから巫女個体の存在の可能性も高いかと」

「辺りのミンチになった死体もそれだったってわけか」


上位の神格になるほど現世への依り代や仲介が必要になる。偶発的か神が発注する形で生み出されるのが巫女個体ってわけだ。


「じゃあ神はまさかあのジグラットに?」

「魔力の流れから見てそう思われます」

「ありがとう、ちょっと下見に行ってくるよ」

「気を付けて」


廃墟の屋上から見渡しながら話す。改めてみると、囲う岩と光源となる剥き出しの鉱石が地下であることが鮮明に理解させてくる。


「戸神」

「はい」

「俺ら、バリバリに喧嘩売ったね」

「雷ぶちまけましたね」

「でもまあ、正当防衛に当てはまるでしょ」

「殴られたから家にロケットランチャーを撃つのが正当防衛ならそうでしょうね」

「わかりやすい例えありがとう。お陰で許されないことがわかったよ」


戸神が何かをほおばっている。手には何かか大きなものを持っているがきっとそれだろう。


「そういえば、先輩は食事を済まされましたか?」

「俺の魔術具の一つ、機械仕掛けの宿業機関(カルマ・ハグルマ)の効果でね、なんやかんやの理由で食事をしなくていいのさ。戸神は?」

「これを」


持っていたのは、大きな、触肢?まさか食ったのか

「アトラック・ナチャを⁉毒とかなかった?」

「障害となるのは硬さだけでした。レバーに似て好き嫌いが分かれる味ですが不味いわけでは無く、もしかしたらレバニラにするといいかもしれませんね」

「…そんな詳しい食レポまでは聞いてないよ」

「ご、ごめんなさい。久しぶりの外食だと思って」

「ニラと調味料があったらたんまり作ってやるよ」

最近作った料理が卵かけご飯ぐらいなのだがそれは言わない。


さぁて、こっからどうすっかなぁ

ぐぅっと伸びをする。生存者がいるとわかった以上、他にも誰かいないか捜し、情報を収集するのが先決だろう。夢にしては整合性が取れていて、現実にしては支離滅裂すぎる。

こりゃあれだ、悪夢ってやつだ。そう考えることにした


「先輩」


ふと目をやる、ちょうど戸神も同じ考えになったらしい。


「ああ、ちょうど似たようなところ考えてたところだよ、ついてきな」

「はい!」


一旦俺たちは、あのジグラット。神とやらの居場所に向かうことにした。爆竹と火薬を携えて

現代のコマ回しはベイブレード

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