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11件目 巨大蜘蛛のレバニラまでの談笑

夜中の公安6課のオフィスに2人の男がいた。水瀬と課長の羽場だ。

水瀬が課長席の前に着くなり話し始める。


「終わらせてきてくれてありがとね、まさか詰み案件(レベルブラック)だとはびっくりしたよ。怪我人はどのぐらいだい?」

「重傷者4名、死傷者1名だ」

「ん?ああ、佐目木君は残念だったね、何年目だっけ」

「3年目だ、最近二十歳になったばかりだった」

「そりゃ尚更残念だ、こっちが寄越してあげた酒も飲めずじまいか」

椅子に寄りかかり、おどけた調子で言う。銀崎とは違った嫌悪感、おそらく煽るつもりではない発言だ。


「残念とも思っていないだろう、俺の前で嘘ついても無駄だ。素でいいぞ」

「じゃあ今回の案件について説明して、何があったとかほとんどこっちに回ってきてないから」

「首謀者はアトラック・ナチャの巣と神曲の原本の一部を利用した儀式魔術で幻夢郷とこっちを繋ごうとしていた、暴走したニャルラトホテプの化身の一つが起こしたと思われる。巫女個体を用意していたあたり、結構昔から準備していたらしい。最後は俺の神代回帰(エルダー)で巣ごと破壊した」

「へぇ、神代回帰ってことは聖弾使ったんだ、どおりで白髪が増えてると思った」

「驚いた、まだ人の変化とかわかるんだな」

「辛らつだなぁ、じゃあ二つ目」


この質問は水瀬は想定していたが、まさか聞かれるとは思っていなかったので面食らった。

「火野君は、ヒュプノスとついに深層契約をしたそうじゃないか」

「ええ、もう本人から経緯は聞きました。やむにやまれぬ事情でしたよ」

「いやいや、危険視してはいるけどそこじゃないよ、そりゃ詰み案件で深層契約の条件を満たすだなんて普通にあり得ることの範疇だろう?僕が聞きたいのは家系の方だよ」

家系?と聞き返してしまった。これも来ると分かっていてもいざ来るとたじろぐ気持ちになる。


「つい最近まで民間案件(レベルイエロー)のインキュバス程度で手こずってた違法仲介者(ネゴシエイター)が、いきなり上位の神格と契約して地方案件(レベルレッド)の青龍まで相手どれるようになって、ついには今回みたいな案件にも五体満足で生き残れただなんて出来すぎだ。そこはいい。意外だろうがいいんだ。上位の神格と契約できれば馬鹿みたいに強くなるのは当たり前のことだ」

ここで置いてあるお茶を一口飲んで緊張感を演出している。


「問題は深層契約で()()()()使()()()()ことだ。たまたま条件を満たせてたとしても、そもそも深層契約は基本は人間用じゃない、巫女個体みたいな砂丘の中の砂金のような逸品(レア物)だからできる行いだ。魔術師に毛が生えた程度の彼じゃ神気で四肢が分裂しちゃうだけさ」

無言を貫く、下手に出てはいけない。


「でもこう考えてみれば合点が行く。1つ、御三家のような2000年以上前から土壌を築いてきた家系。2つ、耐えうる器を持っている魔術師の子。1つ目は皆無だろう、土壌をいくら築こうと分家にそんなことは出来ないしできるものなら目ざとい本家は引っ張るはずだろ、それにこっち側にすぐバレる。2つ目はあり得る、そう公安6課の原型たるルキフグスの初代にして最後の団長、ひの」

水瀬はやれやれといった具合の表情で溜息を吐いた。白髪の多くなった髪を掻いている。

「ここからがいい所だというのに、そんなことされたら冷めちゃうよ」

羽場は肩を竦めて笑っている、溜息の理由を聞けばリンゴが木から落ちるぐらい当たり前のように返す。


「団長の子供は大災害前の2024年に死んでます、公的記録でそう書いてますよ。もし幻夢郷に行ったとしてもあんな魔境で生き残れるとは思えない。まあ今の治安ならそっちで生きた方が幸せでしょうけど」

2人して大きく笑う、そう羽場という男は悪い冗談を聞くのも話すのも大好きなのだ。だが立場というものがあるのでこうして真に受けなかったり嘘だと分かるような相手にしか話さない。


「ごめんごめん、つい与太話の一つでもしたくなっちゃって」

「もし止めなかったらその後、団長の名前と火野君の名前が似ているとか、アナグラムにすると、とかそんなアホみたいなこと考えてたんだろう」

予想は当たっていたようでさらに大きく笑う。手を叩いて笑う。ああそれと言って書類を手渡す。

「これは?」

「んー新しい案件って言ったら怒る?」

「ハハッ、殺すぞ?」

食い気味で言うほかない、もうすぐ連勤が四桁になるから怒っても仕方ないはずだ。そしてもう一個、正当性があるものがある。


「新しい特区建設の警備だと?こんな任務に一カ月かけなきゃならないのか」

「東北付近に盆地があってさ、そこを利用して食料の生産に特化させた区を作ろうって計画らしい」

いや、それよりもこっちの方なんだが。

「仲間を弔った直後にこれは正気度が無いんじゃないのか?」

「もしこれが事実だった場合、ここどころか世界の終わりだからね。頼んだよ水瀬君」

「一応聞くが土地神との交渉と地鎮祭は済ませてるか?」

氷よりも冷たい、疑いという質量でないはずのものがぎっしりと、少なくともポテトチップスのお徳用パックよりは詰まった眼差しで見つめている。

それにたいして

もちろん、と快い生返事が返ってきた。

「最後に3つ目、エントランスで君に約束を果たしに来たと、戸神家の秘蔵っ子が大量の蜘蛛の死骸を持ってきたそうだけど。何の約束をしたの?黒魔術?」


そういえばそんなことを言ったことを思い出した。

前回より2時間以上早く投稿できた(早けりゃいいってもんじゃない)

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