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第1話
わたくしの人生の終盤は間違いなく不幸と言えるだろう。
富を失った。
生活は崩壊した。
家族は殺された。
友人は去り、わたくしは皆の敵となった……。
そうして持っていた全てを失った果て、世界滅亡を迎えたのだ。
これを不幸と言わずなんとするのか。
しかしわたくしの人生の最終盤は間違いなく幸福だった。
なぜならこうして最愛の人の胸に抱かれ、唇を結びながら死ねるのだから。
スカートを翼のようにはためかせながら、水面に向かって二人で落ちる。
水平線に光。
その光が広がって全てを覆い尽くすまで、わたくしは彼女を目に焼き付け続けた。
あなたとの馴れ初めは確か……。
来世で誰かに語るのも悪くないと、わたくしは彼女との七日間に想いを馳せた。




