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六話

…お久しぶりです………お久しぶりです(汗)


 待っているという方がいらしたので投稿、なんかもうこんな駄作に申し訳ありません……


「お前、東雲さんに何をした」


「……何も」


 嘘だ。した。


「……あのな拓馬。お前が東雲さんに話しかけて、東雲さんの雰囲気が一変したのはみんな気づいてる。しかもその後二人でいなくなって、お前だけずぶ濡れで帰ってきた。それで東雲さんに何もしてないってのは嘘じゃないか」


 クラスメイトの纏わりつくような好奇の視線が、粘るような視線が、気持ち悪い。気色悪い。

 ……ああもう関わるなよ。これは俺と慧の問題だ。部外者がでしゃばるな。


「お前が誰かに乱暴するような奴じゃないことは分かってる。けど、如月慧? だっけ。その人を探すときは見境がなくなることも分かってる」


 ……知ったような口を聞くな。その名を呼ぶな。なにも分かってない癖に。お前が関わっていいことじゃない。


「だからどうにも不安なんだ。お前がもしかして東雲さんに何かしたんじゃないかって」


 うるさいなぁ。俺はこれから東雲京とどうやって向き合ってくか考えないといけないのに。

 第一、お前はともかくクラスメイトは確実に疑ってるじゃねぇか。俺が寝てる最中に包囲網完成ってか。自業自得感が否めないが。遠目にニヤニヤしてる馬鹿や、勝手に噂してる馬鹿を減らしてからそういうことを言えや。例え、貧乏くじを引かされたとしても。


「なぁ拓馬? 本当に何もしてないんだな? 俺はそれを信じていいんだな?」

「……ああ」


 俺がそう口を開くとあからさまに敏之がほっとした。……なんだ。こいつは意外といい奴なのかもしれん。


「--なわけねぇに決まってんじゃん!」


 ぎゃはは、と耳障りな笑い声が上がった。似非不良はどうやらこの結果が気に入らないようだ。気持ち悪い。ああ、しかもそれに追随するように馬鹿共が勝手なことをほざき始めるし。


「どうせ襲ったんだろ?」「やったのか」「楽しかったか?」「混ぜてくれよ」「美人だったよな」


 などなどetcetc……頭の悪い発言を複数で俺に言って来やがる。寄るな触れるな近づくな。お前らの臭い口臭がつく。あれか? 仲間とでも思ってんのか? 流石馬鹿。気持ち悪い。


「おい!」


 敏之が止めるが馬鹿はニヤニヤとした顔を崩さずにある提案を始めた。


「今度、俺たちでも襲うか」


 瞬間的に沸騰した。この馬鹿は今なんて言った? 


「……ざけるなよ……!」

「ああん……?」


 俺は、自分が慧に、京にした仕打ちを忘れて怒りに燃えた。

 似非不良のリーダーの胸ぐらを掴み、にらみ合いを始めた。喧嘩になるだろうな。いつぶりだろうか。慧との喧嘩なんて口げんかばっかだったし、慧に口で勝つことは出来なかったから、そもそもしなかったしな。だけど、それもどうでもいいと思えた。イライラを誰かにぶつけることが出来ればそれでいいと。


「どうせ手前ぇも襲ったんだろ? 今更なにを嫌がんだよ。ああ、おまえも混ぜて欲しいってか?」


 この馬鹿は、まだニヤニヤした顔のまままだ馬鹿な提案をする。ああ、それにしても一片殴らないと気が済まない。

 他のクラスメイトは、遠巻きに見てるだけで何もしようとはしていない。好都合。喧嘩を止めるものも誰もいない。


「ふざける「私は何もされてませんが?」


 だが、喧嘩を止めるものは現れた。俺にとって歓迎しない事態。会いたくて仕方がなかった、でも今はもう少し時間をおいてから会いたかった、その人に。

 しかし考えれば数奇な話だ。京に対する噂から喧嘩に発展しそうになり、その喧嘩を止めたのも彼女だなんて。彼女はドアを開いたままにして、そこで立ち止まった。

 教室が、しんと静まる。まさか本人が登場するとは思っていなかったのか似非不良の顔も心なしかこわばった。俺? 俺は顔面蒼白だろうよ。どうやって関係を作ろうか考えてるその人に 突然会ってしまったのだから。

 京は教室を一通り見渡したあと、口を開いた。


「もう一度言います。私は何もされてません。私の外聞を汚すような勝手な噂を立てないで頂けないでしょうか?」


 京の視線は、俺の前にいる不良へと向いた。


「特にそこの似非不良さん。気持ち悪いです。どういったらそういう発想が出てくるのか、少し頭の中を覗かせていただきたい程です」


 京は一度言葉を区切ると息を吸い込んだ。


「────というか見せろ。はぁ? なんで私がそいつに襲われないといけない。あり得ない。なにがあろうとそいつだけは絶対にあり得ない。意味が分からない。お前のその醜悪な顔で臭い息を吐きながら人のこと馬鹿にするな。鏡を見てから出直せ。そして、世の中に絶望しながら死ね。それがお前のような社会のゴミができる、唯一最後の社会への貢献です。空っぽの頭で理解したならとっとと死に腐れ」


 親指を下に向けながら京は言い切った。

 放心していた似非不良がようやく鈍い頭で自分のことを言われてることに気づき京へと突っかかる。


「なっ、こっちが黙ってりゃいい気になりやがってーーー」

「──へぇ、意図的に黙ってたんですか? びっくりです。あなたのような低脳に黙っているだけの知恵があるなんて。てっきり私は、私に言われてる内容をすぐに理解できなくて、あなたの頭が処理落ちしているんだと思いました。まさか違いますよね? 考えた結果ですもんね? あなたのちっちゃいちっちゃい脳味噌で必死に考えた結果ですもんね? くそ気持ち悪い」

「野郎……!」

「野郎? まさか私の性別すら認識できなくなりました? 哀れですね。あなたのような万年発情猿が男女の性別の違いを認識できなくなったらどうなるんでしょ? 大丈夫。おホモ達はすぐにたくさんできると思いますよ? 少なくとも世の中のそういった方々を軽蔑はしませんし、むしろ自らの意志を貫く様は尊敬すらしますがあなたは軽蔑します。私の全力を以てあなたの存在価値を否定します」

「…………」

「黙った。黙りましたね? あはは、なにも言い返せないんですね? 仕方ないですよ。あなたのような低脳発情猿には、言語を操って私の言葉を否定することはできませんものね? 屑で生きる価値がカスほどにも存在しない、馬鹿には叫んだりするしか方法はありませんものね? 弱いやつほどよく吠える。威嚇するのは弱い動物の証拠ですよ。キャンキャン吠えるな似非不良が」


 ……東雲京はやっぱり慧なんだな……一返せば十返り、黙った所で追い打ちをする。京が言ってる内容は、聞いてみれば同じようなことを繰り返してるだけなんだけど、反論させてくれない、いや反論を許さないで一気に喋るから恐ろしい。あれだけ言われ続けりゃ反論する気も失せるんだ……経験者は語るって奴だな。笑い声は聞こえるのに、無表情なのが一層恐ろしいぜ。

 まぁ、あれには欠点があってな。……欠点というか、当たり前なんだが……


「……ナメるなよ、くそアマがぁああああ!!」

 

 ────こうやって言われた奴は大抵キレて慧を襲うんだよ。だからこそ、俺の役割があるんだが。

 似非不良が体を震わし、京に向かって走り出す。

 

「流石似非不良。すぐ暴力か。ところで俺の存在を忘れてないか?」

 

 俺の役割は、慧が精神を叩いた後の武力制圧。心に余裕がないから、たとえ強かろうといともたやすく倒せてしまう。

 後ろからってのも卑怯かもしれないが、こいつには腹がたってたから問題ないだろう。うん。

 

「あん? がっ!」

「吹っ飛べ」


 こんな大振りの回し蹴りも当たってしまうからびっくり驚きだ。心の余裕って大事だね、うん。

 似非不良様はいくつかの机椅子を巻き込みながら倒れた。

 ふん、すっきりした。

 とは言っても、似非不良は一人じゃないので──


「てめえ、やりやがったな!」

「この野郎!」

「ぶっ殺してやる!」


 ──こうなるのは当然の帰結でして。


「……ちっ! 東雲! お前だけでも逃げろ!」


 その時せめて東雲だけでも逃がそうと画策したんだよ俺は。慧の性格を考えれば、それが杞憂だってことも忘れてさ。俺道化。

 東雲は無表情のまま、小型マイクを取り出し再生し始めた。


『なあ、お前がしかけたカメラどうよ?」

『バッチリだ』

『ぎゃはは! まさかあんな所にカメラがあるなんて思わないだろ』

『うへへ……女子更衣室……女子更衣室……ジュルッ』

『うはっきたね!』


 再生を止める。

 その機械から流れてきた声は、似非不良たちの声で、言ってる内容は盗撮についてだった。うん、内容は最低だけど、なんかセコいな。

 教室の時が止まる。

 似非不良たちは顔面を真っ青にして顔を背けた。

 ややあって一人が口を開く。


「なにが望みだ」

「私の望みはあなた達の醜悪な顔を一生見ないことです。というわけでさようなら。もう二度と会わないことを願います」


 教室にいる全員がクエスチョンマークを頭に浮かべた。二度と関わるな、という意味だろうか? 

 恐らく不良達はそうとって、教室を後にしようとドアを開けた。


「よお、お前ら。ちょっと職員室に来てもらおうか」


 と、言ったのは30歳独身体育教師。開けたドアの前にいい笑顔で立っていらっしゃった。


「じゃあ、用がない連中はさっさと帰れよ。さよならだ」


 そういってドアを閉めると、後に残ったのは状況を理解できない俺たち。

 いや……認めるのが怖いというか、つまり東雲は先にあの音声を教師に聞かせ、自分は教師が来るまでの時間稼ぎを行い、タイミングを見計らって切り札をきる。どうあがいても絶望。なにそれ怖い。まじ怖い。

 

 東雲は何事もなかったかのように、ついと教室を見回した。みんな罰が悪そうに顔を逸らしていく。当たり前だ。あんな噂を面白おかしくたてようとしていたんだから。

 その視線は俺の所で止まった。

 つかつかと無表情のまま歩いてくる。朝あんなことがあった為、俺としてはもう少し時間を置きたかったのだが仕方がない。

 ここは思いの丈をぶつけて、無理矢理にでも関係を持とうと、俺が口を開こうとしたその瞬間の出来事である。

 東雲は立ち止まらず、それ所か俺の頭の後ろに両手をまわして──


「──むぐっ……!」

「……ん」


 ──誰かこの馬鹿で愚図な俺にお教えください。

 再会して、泣かした親友にキスをされたとき、どうしたらいいのでしょうか?

 

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