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8話「不穏な空気が漂い始めています」

 リマリーローズを追い払い、その席に着くことに成功したルルネだったが、それからというもの王家周辺では不穏な出来事が多発するようになった。


 第一の悲劇は若い王族の連続死だ。


 現国王の兄の子が亡くなった。

 しかもある朝突然。

 病弱な人だったわけではないし、体調を崩していたわけでもない、それなのにその聡明な青年はなぜか急に命を落としたのだ。


 また、それから数日が経った昼下がり、庭を散歩していたまだ二十歳の王族女性が行方不明となる。

 何か事件があったわけではなく、事故的な何かに巻き込まれたわけでもないのに、彼女は忽然と姿を消して――それから三十時間ほどが経った頃、王城前の門に亡骸となって放置されていた。


 以降も、先ほどの女性の二つ年上の姉が自室で謎の死を遂げたり、現国王からは少々離れた位置にある人物ながら十代の王族が複数人続けて命を落としたり、そういった怪しげな出来事が続く。


「ねえ聞いた? また亡くなられたんですって」

「ええっ……そうなの、怖いわね……最近そういうの多過ぎじゃない? 不気味ね……」

「そういえば、リマリーローズ様がいらっしゃらなくなってからよね……」

「確かにそうですわね。それってもしかして罰が当たっているんじゃないかしら。考えたくはないけれど、あのような酷い仕打ちをしたんですもの、罰が当たったとしても文句は言えませんわ」


 王城で働く女性たちの間では近頃そんな話が流行している。

 それまでそのようなことはなかったのに急に王族が謎の死を遂げることが多発しているなんて――誰の目にも明らかな不自然さだ。


「やはりリマリーローズ様をもっと大切に扱うべきだったのでは……」

「そうよねぇ。だって偉大なる女神の加護を受けていらっしゃる方だったのだもの、それをあんな風に……そりゃあ末代まで呪われても仕方ないわよぉ」

「せめてもう少しまともな終わらせ方にしませんとどうしようもないですわ」

「それなそれな」

「あんなことをしてしまったら天罰が下っても仕方ないわよね」


 また、第二の悲劇として、王族が参加している行事での事件の発生というものがある。


 これも今までにはなかったことだ。


 王族の女性がとある集会に参加していたところ、放火魔による放火事件が発生。集会は中止に追い込まれ、また、会場のみならず集会参加者にまで被害が出た。

 この事件では不幸中の幸いで死者こそ出なかったものの、その事件は大きく報道され、国民の間に濃い不安を広げた。


 それとは別の女性王族が挨拶のために出向いた自然と尊ぶ催し物では、無差別殺人を試みる男が暴れる事件が起こる。

 男は奇声を発しながら刃物を手に暴れ回り、結果的に二人の死者と十人以上の負傷者を出した。


 さらに現国王の兄が参加した追悼式典では爆破事件が発生。

 逃げる意思を持っていない様子であった犯人はその場ですぐに捕まったが、その時には既に爆発物数個が爆発しており、結果かなりの負傷者が出ることとなってしまった。


 厳かな空気に満たされていた会場は一瞬にして地獄に。

 最も残酷な紅に塗り潰された。


「ねえ聞いた? また事件あったんですって」

「怖いわねぇ……」

「王族ほんとやばいよな最近」

「しっかりと呪われていますなぁ、なーんて。でも、ほんと、怪しいよねっ。ぜーったいまたややこしいこと起こるよっ」

「んもー、怖いわぁ、言わないでぇ」

「いや言う! だって事実だもんっ。ねっ? 事実を言っちゃいけない理由なんてないもんっ、ねっ!」


 悲劇というのは理由はなくともなぜか続いたりするもの――そしてそれがまた周りの人たちの心に動揺をもたらすものなのだ。

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