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戦場の開幕と運命の矢

灰色の朝焼けが広がる城の一室、サラはひとり窓辺に佇んでいた。手には祈りの珠が握られ、その目は遥か彼方の城門を捉えている。そこにはアルフレッドが出陣していく姿があった。


彼女は感じたことのない感情に胸を締め付けられていた。戦地へ赴く人を見送る不安。帰還を祈る希望。そして、いつの間にか自分の中に芽生えた、彼への特別な思い。


「無事に帰ってきて……」


その囁きは、朝霧に溶けて消えていく。


パレディア平原の夜明け。大地を埋め尽くす兵士たちの陣営には重い空気が漂っていた。


副団長アルフレッドは、紺碧の空を見上げながら一筋の溜息を漏らす。戦場に散る運命を背負う者たち。ここにいる兵士たちの中で、いったいどれほどが再び故郷へ戻れるのか。


馬蹄の音が背後から近づいてきた。振り返ると、白虎騎士団副団長のロレインが馬上から軽口を叩く。


「どうした、怖気づいたか?」


「お前がそんな気遣いをするとはな。らしくない」


「今夜、酒を酌み交わせる保証なんてないからな。皮肉くらい許せ」


さらにテントには、久しく会っていなかった旧友たちが訪ねてきた。地方遠征から戻ったオーウェンと、陽気な笑みを浮かべるペアレスだ。


「アルフレッド、久しぶりだな!」


「おい、あの噂、やっぱり本当なのか?」


ペアレスがニヤつきながら問いかける。


「何の話だ?」


「宮廷の連中が騒いでたぞ。あの"アルフレッド様"が、女性を連れてるってな!」


「違う、その子は捕虜だ。守らざるを得ない状況で――」


アルフレッドは必死に否定するが、二人の笑いは止まらない。


そんなひとときも束の間。戦いの合図が鳴り響き、三人は固い握手を交わして別れた。


平原の中央では、ミケア軍の将軍ホルコーンが指揮を執っていた。彼は槍の達人として名高く、厳格な信仰のもと聖女奪還を使命として燃えていた。


だが、視界に入った奇妙な光景が彼を惑わせる。処刑台のような木造の台座が建てられ、その上にサラと特徴が一致する女性が拘束されていた。


「レグネッセスの卑劣な手段か!」


ホルコーンは叫び、救出部隊を送り込む。だが、それは白虎騎士団の副団長ロレインが仕掛けた罠だった。


「食いついたな」


ロレインは木陰から冷笑を浮かべ、攻撃の合図を出す。伏兵が森の中から現れ、救出部隊を包囲した。


「隊長!囲まれています!」


「ここまでだ。お前は生け捕りにしてやる」


ロレインの策略は成功し、ミケア軍は混乱に陥った。


その頃、アルフレッドは右翼の騎馬隊に加わり、敵本陣への突撃の準備を整えていた。隊を率いるのは美しき女性騎士、アイラ。冷静で鋭い指揮能力を持ち、彼女の存在は隊員たちの士気を高めていた。


「隊長、弓兵がこちらを狙っています!」


突如、敵兵がアイラを狙い矢を放つ。アルフレッドはとっさに馬を走らせ、アイラを庇った。


「アルフレッド!」


叫び声とともに彼の胸に一本の矢が深く突き刺さる。


「これは……まだ、終わりじゃない……」


崩れ落ちる彼を見て、隊員たちの怒号が戦場に響いた。


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