89話 四国最強決定戦、開幕!!
あれからまた一週間が経った。ということは、今日からついに四国最強決定戦が始まる。
俺はアルスとエルフのアトリウスの三人を『空間転移』で、事前に知らされていたアキレア闘技場の控室に転移した。転移すると、そこにはもう出場選手が揃っていた。どうやら、俺たちが最後だったらしい。
視界の端には、俺のことを睨んでいる獣人が居る。あれは、俺と戦おうとした奴だな。
そして、転移したアルスは堂々と皆の前へ行くと、俺たちに言った。
「物理戦の選手の紹介をされたら、物理戦に出る選手はこの扉から闘技場に出て行って。そして、魔法戦の選手も紹介がされたら、この扉から闘技場に出て行ってね」
アルスのその言葉に俺たち選手は静かに頷いた。
アルスは皆の頷きを見て笑うと、俺の所に戻って来た。
三分後・・・
『これより、四国最強決定戦の開催、そして、物理戦の選手が出場します』
四国最強決定戦の司会進行であるロウバイ陛下より、四国最強決定戦の開催が宣言され、物理戦に出場する選手は一回戦から戦う人の順番で、闘技場へ出て行った。
そして、物理戦の選手が闘技場に出ると、周りに居る観客から物凄い量と音の拍手が聞こえて来た。
俺たち選手は闘技場の真ん中に集まる。なぜなら、俺たちは既に知っているが、観客はまだトーナメント表を知らないから、そのトーナメント表をここで発表するということ。
一回戦から戦う順番で出ても、観客はトーナメント表を知らないので大丈夫。
皆、観客に手を振りながら、目的地に向かっている。でも、ドワーフや獣人はそんなことをせずに、目的地に歩いている。
『選手紹介しましょう。まず、メアロノロス王国よりディック、ロレアス、アルベルト、トリヴィト!!』
ロウバイ陛下がそう言うと、その名前を呼ばれた四人は観客に向かって手を振った。
『次にスカシユリ王国よりステナリア、カリュウ、ロノル、マルカ!!』
俺たちの国の物理戦選手たちもまた、観客に向かって手を振った。
『次にアキレア王国よりベトラー、ナノハ、ハトライト、ゲパルト!!』
アキレア王国の物理戦選手も観客に向かって手を振った。
『最後にリソウス王国よりベルモンド、バヴ、ドゥーラ、ウヴ!!』
観客の皆は拍手していたが、リソウス王国の物理戦選手は観客に向かって手を振らなっかった。まぁ、分かってたけど…
それでも、観客たちの拍手は他の四国とそん色のないほどだった。
『では次に、魔法戦の選手が入場します』
ロウバイ陛下のその言葉に俺とルナギを先頭に、闘技場へ出て行く。
出て行くと、先ほどの魔法戦の選手と同じような拍手が聞こえて来た。
俺たちは観客に向かって手を振りながら、闘技場の真ん中に着くと、ロウバイ陛下より紹介された。
『魔法戦の選手の紹介!メアロノロス王国よりミセラ、アナス、ブギー、ガリオ!!』
魔法戦も物理戦と同様に、紹介された選手は観客に向かって手を振った。
『次にスカシユリ王国よりディア、ノヴェル、ヘイホン、ウェスト!!』
紹介された俺たちは観客に向かって手を振った。
そして、アキレア王国とリソウス王国の順で選手の紹介は進んで行った。魔法戦のリソウス王国の選手は物理戦の選手と違い、紹介されると観客に向かって手を振った。
『では選手について分かったところで、トーナメント表を発表しましょう!!』
「「「「「ウォォォ!!!」」」」」
次に観客からは拍手じゃななく、興奮している声が聞こえて来る。
そのトーナメント表はアルスから借りた、いや、俺が個人的に貰った魔法スクリーンで発表される。
この魔法スクリーンは、最先端魔法研究に協力してもらうお礼として、初日にアルスから貰った。それを俺がロウバイ陛下に言うと、「四国最強決定戦の時だけでも貸してくれ!」と、言われたので、貸しているということだ。
そして、魔法スクリーンに物理戦のトーナメント表が映し出された。
「「「「「ウォォォ!!」」」」」
物理戦のトーナメント表を見た観客は驚いたような声や興奮している声を上げた。
俺は魔法スクリーンでトーナメント表を見ると、俺が知っているトーナメント表だ。
『興奮覚めぬ中、次は魔法戦のトーナメント表を発表する!!』
ロウバイ陛下がそう言うと、魔法スクリーンに映っていた物理戦のトーナメント表が消えて、魔法戦のトーナメント表が映し出された。
観客からは、物理戦のトーナメント表が映し出された時と同じような声が聞こえた。
『皆、確認は出来ただろうか?四国最強決定戦は物理戦の勝者を決めてから魔法戦の勝者を決めるという流れで行う。そして、物理戦、魔法戦の勝者には、最後の締めとして戦ってもらう』
・・・えっ?
俺たち選手がその言葉に戸惑っていると、観客からは今までにないほどの声や拍手が聞こえて来た。
いやいや、ちょっと待ってくれ!そんなこと聞かされてないぞ!?
「私も初耳よ」
俺はアルスの方を向くと、アルスは俺にそう答えた。
そして、俺はゆっくりと獣人たちが居る所を向くと・・・やはり、獣人は俺の方を笑いながら見ていた。
もしかして、獣人たちがロウバイ陛下を脅したのか?だから、獣人たちは驚かずに俺の方を見て笑っていた?
う~ん。今のところはそうとしか考えれないな・・・
『では、物理戦、魔法戦の選手は控室に戻って、準備を始めてくれ』
ロウバイ陛下がそう言うと、俺たちは控室に戻った。戻る時も拍手が聞こえて来たが、行くときのように手は降らなかった。
こうして、疑問が残る中、四国最強決定戦が始まった。




