63話 富豪たちと会議
王宮から出た俺たちは馬車で王城へ行く。
歩きでもいいのだが、なぜか馬車で行かなくてはならない。理由は分からないが。
王宮から王城までは馬車で一分掛かるくらいの距離なので、すぐに着く。ほら、もう着いた。
俺たちは急いで馬車から降りて、王城へ入る。会議室にはゲパルトさんとダンジョンで居た男性の二人、そして、ナノハさんとカタリナが居るらしい。
カランコエ陛下がなぜこんなに急いでいるかというと・・・
「皆!無事か!?」
「は、はい。私たちは無事です」
急いでいた理由は、富豪たちが先に来ていたら、富豪たちの強兵たちに、殺されていたかもしれないからだそうだ。
でも、その富豪たちはまだ来ていない。
俺たちは富豪たちが来るまで待つことになる。こういうのって、陛下が後から来るものではないだろうか。陛下が待つって中々珍しいのではないだろうか。
並び順は両端にナノハさんとカタリナ、その間にルニアとカランコエ陛下が座っている。俺とゲパルトさんはそれぞれ二人の間に立っている。
「トン、トン」
扉を誰かに叩かれた。
「はい」
「モデラです。陛下、入ります」
そして、扉が開かれると中にいかにも金を持ってそうな人たちが三人入って来て、その後ろからカランコエ陛下が言っていた強兵が五人も入って来た。その強兵の五人は歴戦の戦士のような傷や顔をしている。
そして、最後に女性が入って来た。しかも、その女性は光目を持っている。
三人が用意された椅子に座ると、左に座った男から言葉が発せられた。
「久しぶりでございますな、陛下。それに、ご無事でなりよりですナノハ様、カタリナ様」
「あぁ、久しぶりだな。ナマス」
カランコエ陛下はそう言い、ナノハさんとカタリナはお辞儀をした。
そして、次に右に座った男から言葉が発せられた。
「ナノハ王女殿下、カタリナ王女殿下、どこか怪我をしておりませんでしょうか?」
「私は手首が少し痛いだけですが、カタリナはどうですか?」
「私は大丈夫です。姉様」
ナノハさんがそう言うと、右に座っている男ノマルコンが光目の女性をナノハさんに紹介した。
「なら、このマリノに直してもらうといいでしょう」
光目の超人の女性はマリノというのか。
「マリノと、申します。ナノハ王女殿下、手首を見てくれませんか?」
マリノという超人は、ナノハさんに近寄ると優しく笑いかけてそう言った。でも、この人・・・
ナノハさんはマリノの言う通りに手首を見せた。三人の富豪たちを見ると、口元が笑っている。こいつら、何かやっているだろ。
一応、索敵魔法を使っておこう。
「では、これから、治癒を行います」
マリノはナノハさんの手首を左手で持つと、右手を手首に向けて広げた。そして、俺はやっぱりなと、思った。
俺はナノハさんの全身を範囲で設定して、『クリア』を使った。
「はい。これで、大丈夫ですよ」
マリノはそう言うと、後ろへ下がった。
「ありがとうございます。でも、痛みはまだあるような」
「ふふっ、そのうち痛くなくなりますよ」
そう言って、笑うマリノを俺は睨んだ。そして、俺からの視線に気づいたマリノが俺に聴いてきた。
「な、なんですか?」
「いや、すごいなーと、思っただけですよ」
俺は笑顔でそう答えた。
「そ、そうでしょう?」
「えぇ」
俺はまた、笑顔でそう答えた。
そして、次に最初に入ってきて真ん中に座ったモデラという人が言葉を発した。
「陛下。では、本題に入りましょう」
「あぁ、そうだな。それで、お前たちが私たちをここに呼んだ理由は?」
「それはもちろん・・・ん?」
モデラは笑いながらそう言いかけると言葉に詰まった。そして、モデラはマリノの方を向いた。ナマスとノマルコンも一緒にマリノの方を見た。
「どうした、モデラ」
「あ、あ~、すみません、陛下。忘れてしまいました」
「・・・忘れたのか?」
カランコエ陛下は鋭い目つきでモデラを見ている。三人の富豪たちは皆、汗を流している。
「は、はい。ですので、今回はお開きにしましょう」
モデラはそう言うと、急いで席から立ち上がった。そして、ナマスとノマルコンも一緒に立ち上がった。
「お開きだと?」
「え、えぇ。本題を忘れてしまっては、話のしようがないですからな」
「いやいや、本題などなくとも話ならあるだろう。たくさん」
そう言って、部屋から出て行こうとするモデラたちをカランコエ陛下はそう返して、止めた。
「た、たくさん?」
「あぁ、たくさん。じゃあ、話をするとしよう。・・・お前たち、聞くところによると、このアキレア王国を奪・・・!」
「キィィン!!」
「バァァン!!」
カランコエ陛下がそう言いかけると、富豪たちの後ろに居た強兵の五人が一斉に剣や魔法で俺たちを襲った。
しかし、その攻撃は俺の物理障壁と魔法障壁によって防がれた。だが、火魔法を使われたことで魔法障壁に当たった時に煙が出て、扉が開けられた音がした。
俺は急いで収束魔法『モクアウト』を使って煙をなくしたが、富豪の三人とマリノたちはもう居なくなっており、強兵たちも四人が出ていて最後の一人の一番強そうな奴が出ようとしていた。
俺はこいつだけでもと、思い、手を向けると、そいつは俺に向かって魔法を放ってきた。放ってきた魔法は『ウォルキーン』
俺は魔法よりも防御を優先して、魔法障壁を張った。魔法は防いだが、魔法障壁にはヒビが入っていた。流石、水目の超人。




