61話 ダンジョン財宝『笛』
ドラゴンを倒し終わると、真ん中に大きな転移の魔法陣と同に大きな虹の箱が現れた。
「「大丈夫ですか!皆さん!!」」
俺たちのところへ二人の男の人が来た。ナノハさんたちの護衛の人たちだろう。
「あぁ。私たちは無事だ」
「「大丈夫そうには見えないですけど・・・」」
カランコエ陛下はナノハさんに背負われている。っていうかこの二人、息ぴったりだな。双子か?
「ははっ!まぁ、私以外は無事ということだ。ナノハも怪我はしていないのだろう?」
「はい。お父様!」
「二人も怪我はしていないか?」
「「俺たちも大丈夫です!」」
そんな感じの会話を10分した。長すぎる・・・。まぁ、久しぶりに会ったのだから話したいことはたくさんあるだろう。
会話が終わると俺たちは虹の箱のところに来た。
「これは、金の宝箱だ!初めて見た!!」
ダンジョンの歴史で、今までは銅の宝箱と銀の宝箱しか見つかったことがなかったらしい。
だから、皆はこの虹の宝箱からどんな物が出てくるのかをワクワクしている。
「それじゃあ、開けますよ・・・」
皆の心臓の鼓動が聞こえてくる中、ナノハさんがゆっくりと虹の宝箱を開けた。
・・・・・・
・・・・・・
「それじゃあ、皆、魔法陣の中に入ろう」
金の宝箱に入っていた物を取った俺たちは、カランコエ陛下の言葉通りに転移の魔法陣に入った。
魔法陣に入ると、先ほどと同じ通り目の前が光に包まれて、光が消えるとダンジョンで転移した転移の魔法陣の前に俺たち七人は居た。
「皆、地上へ戻るぞ」
カランコエ陛下はナノハさんに背負われながら、『再誕地』をポケットから出した。
「そうですね。早く戻りましょう」
「え、何でですか?進みましょうよ!このメンバーならまだまだ行けますよ!!」
まぁ、確かに、このメンバーならまだまだ行けるだろうが、俺とカタリナしか知らない早く戻らないといけない理由がある。
俺はカタリナに地上へ戻らないといけない理由を話そうと目で言った。
カタリナは、理由を迫っているナノハさんの肩に手を乗せて言った。
「姉様。早く戻らないとアキレア王国が富豪たちに奪われるのです」
「「「「「な、なに~~!?!?!?!?」」」」」
俺とカタリナ以外の五人は腰を抜かして尻餅を付いていた。いや、カランコエ陛下はナノハさんが尻餅を付いたので、カランコエ陛下も尻餅を付いている。あれ?ルニアも知らなかったっけ?
あぁ、このことは俺とカタリナそして、ロウバイ陛下の三人のみ知る事だった。
「カ、カタリナ、奪われるってどういうことだ!?」
「そのままの意味です。お父様の王位という地位も奪われてしまうのです」
それ聞いたカランコエ陛下は、ポケットから『記録球』を取り出して『記録球』に32層を記録すると、『再誕地』を右手を広げて置いた。
「み、皆!急いで戻るぞ!」
俺たちは光る『再誕地』を見て、急いでカランコエ陛下に触った。
・・・・・・
・・・・・・
『再誕地』で地上に戻った俺たちは今、どうやって帰ろうかを話し合っている。
俺たちが乗って来た馬車には七人も入らない。入って四人。きつきつに入っても六人しか入らず一人余ってしまう。
なら、俺が『空間転移』を使えばいい話なのだが、俺は今『空間転移』を出来る程の魔力を持っていない。魔力ポーションも予備が一つしかない。
「あ!」
「何か、思いついたか、ルニア君!」
「はい。虹の宝箱で手に入れたあの笛を今こそ使うべきじゃないですか?」
あ、確かに!本当に「今」使うべきじゃないか。笛を使えば富豪たちなんて・・・いや、そんなことしたらアキレア王国が崩壊するな。やめておこう。
しかし、笛を使うのはナイスアイデア過ぎる。流石、真剣ルニア。
笛はナノハさんのポケットにしまってある。ナノハさんはポケットから笛を取り出すと、取り出した笛を鳴らした。
「ヒゥゥ!!」
・・・あれ?来ない。
説明書には、『この笛を鳴らすと「ファイアドラゴン」がお前たちのところへ来るだろう』と、書いてあったのに・・・
索敵魔法使ってみるか。・・・これは!!
上空から転移の魔法陣で転移した魔法空間で戦ったドラゴンと同じ気配を感じた。
「ワ"ァ"ァァァ」
迫力のある声と同時に、上空から強風が俺たちを襲った。俺たちは吹き飛ばされないように踏ん張っている。
ドラゴン、いや、ファイアドラゴンが地面に着地すると強風が収まった。
「こいつがファイアドラゴン。そうか!私たちが戦ったドラゴンはファイアドラゴンだったのか!!」
カランコエ陛下はファイアドラゴンを見て、そう言った。
『誰が、我を呼んだ』
ファイアドラゴンがそう言ったが、誰も答えようとしない。驚いて言葉が出ないのだろうか。
『?あいつを倒したなら我と話せる奴がいるだろ。誰が我を呼んだ』
ファイアドラゴンの息吹が俺たちを襲った。だが、皆が答えることはない。もしかして、皆は聞こえていないのか?
「ルニア、何て言っているか分かるか?」
「は?分かるわけないだろ!?」
やっぱり。
と、いうことは皆、ファイアドラゴンの声は聞こえているが、何て言っているのかが分からないから答えれないのだろう。なら、この場で何て言っているのかが分かるのは俺だけ。
俺はファイアドラゴンの目を見て言った。
『あなたを呼んだのナノハと、いう人だ』
『ほう。お前が・・・。ハハッ、確かに、これはあいつが負けるわけだ。それで、何の用で我を呼んだ』
これは、正直に答えてもいいのだろうか。「乗せて行って」なんて言ったら、丸焦げにされたりしないだろうか。
『俺たちをアキレア王国に送ってほしい』
『ほう。我を乗り物代わりか。ハハッ、良いだろう。お前の頼みなら聞いてやろう』
ファイアドラゴンはそう言うと、羽を地面に落とした。
『ここから、我の背に乗れ』
『あぁ、ありがとう』
俺はファイアドラゴンに言われた通り背に乗るために、羽を踏もうとすると皆から引っ張られた。俺は尻餅を付いた。
「ファイアドラゴンと話したのか!?」
「え、あ、はい。背に乗れって」
「そんな会話が行われいたんですね」
「え、俺はいつも皆と話している言語でファイアドラゴンと話していたんですが・・・」
「そうだったのか!?俺たちには全然別の言語に聞こえたんだが」
そんな、言語自動変換なんて俺にはないと思うのだが・・・。しかも、ファイアドラゴンというか、ドラゴンと話すのも初めてなんですけど・・・
「ま、まぁ、そう言われたんで皆、この羽から背中に乗りましょう」
俺は皆を先に行かせて、俺は最後に背に乗った。
『準備はいいか』
『あぁ』
俺がそう言うと、ドラゴンは羽をはばたかせて飛んだ。
ファイアドラゴンは馬車の何倍も早い。
『ちょっと早くないか?』
『急いでいるのだろ?』
『まぁ、それはそうだけど』
すると、ファイアドラゴンは更に速度を上げた。俺たちは必死に背中にしがみついた。
・・・・・・
・・・・・・
『どこで降ろしてほしい?』
『あ~、なら、王城の前とか出来るか?』
『もちろんだ』
目的地の王城の近くに来たので、ファイアドラゴンは速度を落とした。下を見ると、門番の二人が王城の中へ入って行くのが分かった。
まぁ、これを見たら逃げるのは仕方ないな。
ファイアドラゴンはゆっくりと地上へ降りていく。
『着いたぞ』
『あぁ、ありがとう』
地上へ着地すると、ファイアドラゴンは羽を地面に落とした。そして、俺たちは乗った時と同じ順番で降りて行った。
『用はこれだけか?』
『あぁ、これだけだ。ありがとう』
『なら、失礼する。久しぶりに人間と話せて楽しかった』
ファイアドラゴンはそう言って、羽をはばたかせて飛んで行った。




