49話 ダンジョン財宝
「ダンジョンにはこの四人で入るんですか?」
「あぁ、他に人が居ても邪魔なだけだからな。」
俺はその言葉を聞いた瞬間、横に座っているルニアを見た。ルニアをダンジョン内で連れて行こうとした理由は、ダンジョンを攻略する際に、ルニアにメンバーを指揮してもらおうとしたからだ。
だが、ダンジョンを攻略するメンバーが四人だと、指揮をする意味はないと思うので、ルニアの出番がなくなってしまう。なら、ルニアに残る者は何もない。
だから、ここでルニアのことを言ったら、ルニアはダンジョンに入れないだろう。というか、ルニアが金目の時点で戦闘には向いていないことは分かっているだろう。
俺はカランコエ陛下がそのことを知っていると考え、口には出さなかった。
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「前線は俺とカタリナ、ディア君は俺たちを物理障壁で守って、周りの魔物を倒してくれ。ルニア君はダンジョンの道を記録してくれ」
カランコエ陛下からダンジョン内での役割を言われた。ルニアはともかく、カタリナは前線なのか。
カタリナと戦った時は、動きは速かったけど俺の目でも追えるほどの動きだった。それに、カタリナは青目なので、戦闘には向いていない。アキレア王国の国民の血が流れていなければ。
「このダンジョン攻略は、これまでのダンジョン最高攻略記録である27層を超えるかもしれない。そこからは私たちには未知の魔物だらけだ。命の保証はない」
カランコエ陛下はこう言っているが、俺は命の心配はしていない。
俺が倒した王熊がダンジョンの深層のボスの実力なら、60層までは行ける自信がある。それに、本当の本当の本当のピンチになったら、皆と『空間転移』で逃げることも出来る。
そして『空間転移』でデイジーの町に転移して、デイジーの中でも強い人を『空間転移』を使って、ダンジョン内へ連れてくることも出来る。
「カタリナは前回は何層まで行ったんだ?」
「私は21層までしか行けませんでした。21層から魔物の数も力も倍以上になって私はついていけませんでした。なので私は『再誕地』を使ってダンジョンの外へ戻りました」
カタリナはそう話すと手を強く握った。
「『再誕地』って何ですか?」
再び地上に誕生するから『再誕地』って言うのか?って、この魔道具があれば誰でも帰ってこれるのか?だったら、皆に持たせているだろうな。何か理由があるから一つしか持っていなかったんだろう。
「『再誕地』は、ダンジョン財宝の一つだ。『再誕地』はダンジョンではよく出る魔道具だ。その能力は自分が行ったことがある所を考えると、瞬時にその考えた場所へ使用者と使用者に触れている人が転移できる。この時、曖昧な想像でもかまわない」
カランコエ陛下が説明してくれたことから分かったことは、『再誕地』は、俺の『空間転移』と、とても似ているということ。
『再誕地』も『空間転移』も、行きたい所を頭の中で考えると、その場所へ転移出来る。それでも、性能は『再誕地』の方がいいな。
『再誕地』は曖昧な想像でも転移できるが、『空間転移』は曖昧ではなく、完璧でないと転移出来ない。その点、やはり、ダンジョン財宝と言うだけある。
「『再誕地』は今回も持ってきてるんですか?」
「あぁ、一つ持ってきている。ナノハを見つけ出して、すぐにでも地上へ帰り、治療するためだ。そのために、光目を持つ超人を高い金で雇ったんだからな」
俺はカランコエ陛下の言葉を聞いた時、一人の光目を思い出した。
「ステナリアか・・・」
俺は小さな声でそう言った。
「ステナリア?・・・あぁ、ステナリア・スカシユリ王女のことか。確かに、ステナリア王女も光目を持っていたな」
確かに、ステナリアは光目を持っていて回復魔法を使えるが、俺がステナリアを思い出した理由はもう一つある。
「はい。それに、ステナリアは赤目も持つオッドアイです。その実力は俺をボコボコに出来るほどです。回復魔法が使えて、実力もある。どうですか?ステナリア」
俺がそう言うと、カランコエ陛下は右手の人差し指を俺に向けてこう言った。
「採用だ!ステナリア王女を連れて来てくれ!!・・・あ、ステナリア王女ってスカシユリ王国にいるのか?・・・はぁ、私は何を言ってるんだ・・・」
まぁ、確かに、「普通」ならスカシユリ王国からアキレア王国まではめちゃくちゃ時間が掛かる。だが、俺には「普通」を覆す魔法を持っている。
「大丈夫です。俺には『空間転移』と、いう魔法を持っていますから」
「く、空間転移…名前からすごそうな魔法だな・・・」
「はい。ですが、『空間転移』はダンジョン前に着いた時に使いましょう」
俺がそう言うと、カランコエ陛下は窓を開けて、馬車を引いているロオに「速度を上げろ!!」と、言った。




