44話 王熊の肉は高級食材と同じ
「お湯神様、さぁ、どうぞ、たくさん食べてください!!」
「あ、ありがとうございます」
俺は皿に盛り付けられた、鍋で茹でられた何も味付けられていない王熊の肉と野菜を貰った。俺の皿は他の人よりも多く盛り付けられている。
盛り付けられた皿を貰った俺は地面に座った。
「よしっ、皆に行き渡ったな」
目の前で立っているホロストがそう言った。この町では、皆と一緒に食べる時はホロストが食事の挨拶をするらしい。
「皆!感謝を込めていただこう!」
ホロストがそう言ったのを聞いて、俺たちは目をつぶって、手を合わせた。
「・・・よし!」
ホロストがそう言ったのを聞いて、俺たちは王熊の肉と野菜を食べだした。
・・・・・・
・・・・・・
「いや~、魔物って美味いんだな!!しかも、何か強くなった気がするしな」
「確かに、味付けが何もされていないのに、あれだけ美味いとはな。それに、力がみなぎってくるのも分かる」
ただ茹でたものがここまで美味しいとは思わなかった。しかも、魔物の肉が。
噛む度に王熊の肉の風味が伝わってきて、飲み込むと噛む度に伝わってきた王熊の肉の風味が、一気に脳に伝わってくる。
「俺たちの中では王熊は、皆さんからすれば「バイガレオ」と、同じくらいの価値なんですよ」
「バイガレオ」とは、滅多に手に入らない高級も高級食材。
「バイガレオ」は、竜の胃の下にある謎の部位らしい。竜を狩っていいのは50年に一度。竜の増加を防ぐために狩る。
俺は食べたことないし、見たこともない。ルニアも食べたことはないだろう。
そういう肉は、基本的には市場には出てこないため、オークションでしか手に入らない。
そのオークションでは日常では聞いたことがないような値段を聞ける。俺は表のオークションしか行ったことないから分からないけど、裏のオークションなら、よりすごい値段を聞けるだろう。
その値段とは軽く国家予算を超えるほどだ。「バイガレオ」を買える人は大体がアキレア王国の者だろうな。なら、カタリナは食べたことがあるのだろうか?
「カタリナはバイガレオを食べたことあるか?」
「食べことはありませんが、見たことはあります」
アキレア王国の王女でも食べれないとは・・・
「どんな見た目だったんだ?」
「「バイガレオ」全体が白くて、とても・・・美味しそうには見えなかったです...」
まぁ、見た目が美味しくなさそうなほど、中身は美味しいと、よく聞くしな・・・?
そう考えると、「バイガレオ」と「王熊」はよく似ているな。
1、どちらも、同じ価値。
2、どちらも、美味しそうな見た目ではない。
3、どちらも、食べてみれば美味しい。
「魔物である王熊の肉がこれだけ美味いんだから「バイガレオ」も美味いに決まっているな!」
「あぁ、一度は食べてみたいものだな」
竜は2年前に、50年ぶりに狩られて、次に狩れるのは48年後。表で「バイガレオ」を食べようとするならば、俺は63歳になるはずだ。
裏のオークションでは、「バイガレオ」は50年に一度出る貴重な食材なのに、一年に2、3回出ているのを友達に聞いたことがある。
もし、食べたくなったら裏のオークションにでも行こうかな。でもその前に、国家予算並みの金を集めないといけない。俺は今、国家予算どころか一家予算すら持っていない。先は長いな・・・
「皆!終わりの挨拶だ!」
ホロストのその言葉で皆の話声が聞こえなくなった。
「感謝を込めていただきました」
俺たちは目をつぶって、手を合わせた。
「よし!これにて、王熊パーティーを終了する!」
「「「「「おぉぉ!!」」」」」
この叫びには俺も加わって言った。こうして、王熊パーティーが終わった。
・・・・・・
・・・・・・
「ディアさん!」
王熊パーティーが終わって、皆が家へ帰って行く中、俺たちがどこで寝るかを相談していた時、ヒノリに声を掛けられた。
「ディア…この人は?」
「この女性はヒノリ。この町唯一の水目だ」
ルニアの質問に俺はそう答えた。ルニアとカタリナは、この町の来てから初めてヒノリを見たらしい。
「初めまして、ヒノリと申します」
ヒノリのことを俺がルニアたちに紹介すると、ヒノリは緊張しながら、ルニアとカタリナに自己紹介した。
「それで、俺に何か用か?」
「は、はい!・・・私はディア様に魔力の増やし方を教えてもらいたいです!」
ヒノリはすごい早口でそう言うと最後に「お願いします!」と、身体を90度にした。
魔力の増やし方って…そもそも魔力は15歳までしか増えないという決まりがある。
「・・・ヒノリは・・・何歳だ?」
女性に年齢を聞くのはわずかながら抵抗はあったが、魔力は15歳までしか増えないのは世界の常識。ヒノリもそのことは知っているだろう。
それでも、魔力の増やし方を聞いてくるということは、まだ15歳ではないか、水目が生まれた時のためか。
俺が魔力の増やし方を聴いてきた理由を考えていると、ヒノリから答えが帰って来た。
「12歳です」
「「「・・・え"」」」
俺だけでなく、ルニアとカタリナも俺と同じ反応をした。
マジか・・・。これが12歳。・・・マジか。
俺が初めてヒノリと会った時に15歳くらいと判断した理由は、身長が俺と同じくらいで声も雰囲気も大人びていて、なりよりそう感じされたのがその大人ボディー。
どこを見てるんだと思われるが、これから視線を逸らすのは至難の業だ。
ルニアも俺に質問をする時に、ヒノリの大人ボディーを見てしまったんだろう。途中で言葉が詰まっていた。
「12歳・・・か」
「え、もしかして、12歳ではもう大きな魔力の成長は見られないんですか?」
ヒノリは少し震えながら俺にそう言ってきた。
「いや、そういうわけではない。俺も最後一年ですごく増えたからな」
「で、では、それはどうやって増えたんですか?」
「確実性はないが、いいか?」
「はい!」
これから言う魔力の増やし方は本当に確実性が0に等しいくらいのことだ。それは俺がクルミナでの最後の一年で311も魔力量が増えた時にしていたことをヒノリに言った。
「魔力を増やす方法は魔法を使い続けること。それも何回も。魔力消費の大きい魔法じゃなくて、魔力消費が少ない魔法を何回も」




