21話 親友(男)とお風呂
『ヒッツ』と言う魔法を放ったのは、本棚の裏に隠れていたであろう、ルニアだ。
「思ってたより、早かったな!」
そしてルニアは俺に近づいて来てこう言った。
「それで?俺の誘いは乗るか、乗らないか、どっちだ?」
ルニアは俺に笑いながらそう言い、握手の準備している。こいつ、絶対答え分かっているだろ・・・
「もちろん・・・」
俺はそう言いながら、握手を求めているルニアの手を強く横から叩き、強く握った。
「その誘い、乗らしてもらう」
俺がそう言うとルニアは歯を見せて笑い、握手の力を強めた。
「待っていた、その返事!!」
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俺がルニアの秘書になるとルニアに言ってから時間が経ちもうすぐ晩ご飯の時間だ。
晩ご飯の時に俺が18歳までルニアの元で秘書をすると言うつもりだ。
だが、俺たちにはそれよりも先にする事がある。それは・・・
「俺たちが飯を食う前にすることはやっぱり風呂だよな!!」
そう、風呂に入ることである。
クルミナの寮では、帰ってくるのが遅くて腹が減っていても、必ず風呂に入ってご飯を食べる。これが俺たちの毎日の日課だった。
俺はそうではなかったのだ、ルニアと生活するうちにこうなった。
だが、俺はこうなって良かったと思っている。お風呂に入ると言う大きな行事が一つなくなったと思うと気が楽になりご飯が美味くなった。
俺たちは王宮の大浴場で服を脱ぎ、腰に布を巻いた。
「それにしてもディアって本当に身体すげぇよな!」
ルニアはそう言うと俺の腹を軽く叩いた。
「まぁ、身体は鍛えてるからな・・・」
俺はそう言って心臓の部分を手で抑えた。
俺が心臓の部分を手でさすっているとルニアは先に大浴場の扉を開けた。俺もルニアに着いていくと目の前には凄い景色が広がっていた。
前来たときはこんなんじゃなかったはずだけど・・・
まず、この世界のシャワーとされる魔道具が驚異の20個!これは寮にあった魔道具の2倍だ。こんなにいるのか、と思ってしまうがやはりここは王族。俺の家は家族の人数に合った4つしか魔道具がない。
そして、驚くべきことはお風呂の種類。前来たときは、普通の風呂と、入浴剤でも入れたのか黄色い風呂の2つだけだったが今は、4個に増えている。
まぁ、これは後からルニアに教えてもらおう。俺は風呂に入るために身体を洗い始めた。
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「ディア、驚け!これが俺が開発した風呂だ!!」
そう言って紹介するルニアに俺は「おぉ~」と言いながら手を叩いた。
「しかし、前来た時からめっちゃ変わったな」
「そりゃ、お前の言っいた風呂に入ってみたくなったからな」
しかしまぁ、1年で風呂って言うのはこんなに完成するのか?いや、この仕事の早さこそ王族の特権だろう。
ルニアが最初に紹介したのは、前からあった普通の風呂。ルニア曰く、普通の風呂ではなく身体の疲れを癒してくれるらしい。
次に紹介されたのは、良い匂いのするただの風呂。これについて説明された時俺はなんて言ったらいいのか分からなかった。
「ここからが、進化した俺の風呂だ!」
そう言って紹介されたのは・・・
「これはディアが前、言っていた水風呂だ!」
水風呂だ。
確かに前、ここに来た時に・・・
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『水風呂ってないの?』
俺はルニアは聴いた。それにルニアは首を傾げた。
『なんで風呂が水なんだ?風呂はこの暖かいのが気持ちいんだぜ?』
『はぁ~、これだからお子様は困る』
『ディアも子供だろ!』
俺はこのお子様ルニア君に水風呂の良さを教えてやることにした。
『水風呂の良さは、水風呂で冷えた身体をこの暖かい風呂に入るととても気持ちいこと。そして、この逆もそうだ。暖かい風呂であったまった身体を冷たい水風呂に入る。これがいいんだよ』
俺が水風呂の良さを話し終わってルニアを見ると、ルニアの目は凄く輝いていた。そして、ルニアは俺の肩を両手で握り俺に聴いてきた。
『ディアって風呂に詳しいのか・・・?』
それに俺は「うん」と言うとルニアは、風呂に入りながら土下座をし始めた。もちろん、頭も風呂のお湯の中に入っていて、呼吸の出来る状態ではない。
バカだ・・・こいつはバカだ・・・
『俺に風呂を教えてくれ!』
風呂のお湯の中で何を言っているのか分からないが、多分こう言っているだろう。
俺は『いいよ』と言ったがルニアは顔を上げてこないので、もっと大きな声で言ったが上がってこない。
そこで俺もルニアのように風呂のお湯に顔を入れてルニアの頭を叩くと、ルニアは俺の方を見て何か言っているようだがさっぱり分からないので、俺はルニアに向かって「ヒッツ」を放った。
「ヒッツ」を受けたルニアは即座に顔を上げた。
「ヒッツ」とはこの世界にある魔法で一番簡単な魔法。体内の魔力を集めて、集めた魔力を玉にして撃つと言うシンプルな魔法。だが、この魔法は魔力量によって威力は何倍にも跳ね上がるから、俺の愛用している魔法の1つである。
俺も風呂のお湯から顔を上げるとルニアが怒りの顔をしていた。
『なぜ、この中で「ヒッツ」を放つんだ?』
『なんとなくだ』
ルニアは大体のことは怒らずにスルーする。ルニアは今回のことは怒らないだろう。
『はぁ~、それで、教えてくれるのか?』
『もちろん』
俺がそう言うとルニアは早速俺に風呂に関する質問をたくさんしてきた。
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「それで、水風呂の感想は?」
「最っ高だ!」
俺たちはお互いにサムズアップをした。
「最後はこの風呂だ!!」
俺はルニアは入るように勧められたので入ってみることにした。
「どうだ?何か感じることがあるだろ?」
確かに・・・何かを感じる。
「・・・魔力が回復している・・・!?」
「あぁ、そうさ!この風呂は魔力回復風呂だ!!」
ルニアは風呂から立ち上がり、腰に手を添えて自慢げに言った。
と、言うか魔力回復風呂って凄いな。これは、自慢したいのも無理ない。
「凄いな!魔力の回復がいつもより・・・2倍くらい早いか?」
魔力の回復はこれも個人差はあるが俺は一日に550回復する。俺の魔力量723を一日で全回復しないのは残念だ。
この世界には、冒険者のための魔力ポーションなどがあるので、回復しようと思えば一日で回復できる。
だが、これからはこの魔力風呂に毎日入るなら、一日に回復する魔力量は550の2倍の1100と言う俺の魔力量を超えた魔力を回復することになる。
(風呂に入っている時だけ2倍になるから全回復するのかな?)
こうして魔力回復風呂に入っているといつの間にか今日消費した魔力203を全回復していたので俺はルニアに風呂から出ようと言った。
「よし、ルニア、魔力も全回復したしもう出るか」
「後少し待ってくれ。もう少しで俺の魔力も全回復するんだ」
あ、確かに。ルニアが放った『ヒッツ』はたまにルニアの魔法練習で俺が受けている『ヒッツ』より強かった気がする。ルニアの魔力量は23。ルニアは『ヒッツ』にほとんどの魔力を使ったんだろう。
「分かった」
俺はそう言ってまた魔力回復風呂に入った・・・のではなく、身体の疲れを癒してくれる風呂に入った。
そして俺はある魔法を使った。
『ライデント』
この魔法は雷魔法『ライデント』
『ライデント』は自由自在に出力を変化出来る魔法。魔法は基本、自身の魔力量に対して勝手にその魔法に必要な魔力を放出される。魔力を自分でコントロールするのはとても難しいことだが努力次第でコントロールできるようになる。
ルニアも魔法の才には恵まれなかったが、努力して5年の半ばくらいに魔力のコントロールが出来るようになった。俺も3年の最後に出来るようになったので、中々に難しい技術だ。
俺は魔力をコントロールして人体に影響がないほどの弱い電流を放った『ライデント』は風呂のお湯に直撃した。
そして身体に電流が流れたなと感じたら『クリア』と言う指定した範囲内で魔法がなくなると言う魔法を使い、お湯の中で流れている『ライデント』を消した。
そしてまた、魔力をコントロールして『ライデント』を使い身体に電流が流れたらまた、『クリア』を使う。この繰り返しを何度もした。




