173話 頑張ったよな?
「「「「「ウォォォォ!!!!」」」」」
『皆。俺はスカシユリ王国シュラスト家当主のディア・シュラストだ』
一応、四国最強決定戦という四国の猛者が集う大会で優勝してるから、それなりに知名度はある。それに、スカシユリ王国のシュラスト家というブランドもあるため、俺の名前を知らない人はほとんどいないだろう。そして、俺が魔物を除いた者たちの中で、一番強いということも。
『ドラゴンが急に落ちてきたことで驚いた者も多いだろう。だが、安心してくれ。そいつらは死んでいる』
拡散魔法を使って皆を落ち着かせる。そして、一番大事なことを伝える。
『ファイアドラゴン、スノードラゴン、ストームドラゴンの族長。そして、それぞれの一般ドラゴンたち、全てを排除した。これが、どういうことが分るよな』
まだ落ちている途中で、人影は見えるが、流石にその表情までは見えない。
『俺たちの勝利だ』
「「「「「ウォォォォ!!!!」」」」」
俺がそう言った数秒後、地上からそのそうな声が聞こえてきた。
声が聞こえるまでに数秒かかったのは、地上までまだ距離があるから。音速は有限だからしょうがない。
俺は今までとは逆に、下へ早く下りるために『ウィルド』を頭から下向きに放った。
「ヴゥッ」
やばかった。普通の『ウィルド』ならここまで威力は出ないが、今の『ウィルド』はいつもより多くの魔力を込めていて、威力が高い。
俺の僧帽筋が丈夫で助かった。普通の人なら首逝ってたわ。絶対。
これはステナリアによる理不尽な暴力を受けまくった怪我の功名だ。
ちゃんと『ウィルド』の設定を通常に戻しておく。
ドラゴンとの戦いをほぼ無傷で通り抜けたのに、こんなしょうもないことで怪我をするのはダサすぎる。
『ディア。これからはどういう流れになるんだ?』
『う~ん。まぁ、そこらへんはアルスさんとかルニアが決めるだろうな。俺は取り敢えず、この戦いの後始末だろう』
『じゃあ、僕たちはその間、優雅にベットで眠っておこうかな』
『いや?もちろん、付与を使ってもらいますよ。あれがないと、俺はもう生きれない体になったんです』
この世界に青目と水目のオッドアイとして誕生してから、赤ん坊の時は守られる側だった。だが、十歳くらいを過ぎると俺は守られる側でなく、守る側に必然となっていた。
それは、オッドアイという神から貰った能力を持つ者としての責務だと分かっていたが、十歳って早くないか?まぁ、そのくらいから強い大人とかフルボッコにしてたからな~。
という感じで、十歳から今までずっと守る側をやっていて、守られる側の感覚を忘れていた。
だから、今日、ファスターからトゥルホープを通して付与を受けて、久しぶりに守られる側の温かみを感じた。
「自分が勝てないなら皆勝てない」これが俺の常識だった。
この常識がようやく終わる。トゥルホープという虹目が誕生したことによって。そして、トゥルホープがこれから生きていくから。
まぁ、オッドアイに生まれたからには、トゥルホープが生まれたからといって守る側から離れることはない。ただ、少し肩の荷が下りた。
『アッ、そういえば、竜笛をどうやって貰ったんだ?ドラゴン、しかもファイアドラゴンの竜笛なんて』
『アキレア王国にダンジョンがありますよね?そこの隠し部屋みたいな所にヴァレタスっていうファイアドラゴンが居たんですよ。そして、ヴァレタスを倒したら貰えました』
『ダンジョンにドラゴン・・・それっていつの話だ?』
『え~と、クルミナ卒業してすぐだから十五、六歳ですね』
この歳になると、自分の歳、誕生日が分からなくなる。だから、大きな出来事「入学式」「卒業式」「アキレア王国の内戦」「四国最強決定戦」「火災」などを時系列順に並べて、今の自分の歳を思い出す。
今の年齢は・・・うん。めんどうだから二十歳前半でいいや。
『十五、六でドラゴン討伐・・・本当に、ディアの近くで生まれてよかった。ルニアとナノハには感謝してもしきれないな』
そう、ファスターは言う。
確かに、こうして生きていられるのが、ルニアとナノハさんの間に産まれたから。もし、俺から少しでも遠い場所で産まれていたら、ワーダストに虹目の赤子を強奪されていた。
分娩室を守っていた人も決して弱いわけではない。王族の分娩室の門番を任されるからには、冒険者ランクAくらいは必要だろう。
警戒十分な王城に誰にもバレずに侵入し、Aランク冒険者を倒すほどの実力者。
俺がギリギリ『物理障壁』を張ったからトゥルホープが助かったと考えると、マジでオッドアイでよかった。しかも、青目と水目という相性抜群の目の色で。
っていうか、この世界、俺が居なければヤバかったよな?
ナノハさん救出、アキレア王国内戦、スカシユリ王国火災事件。そして、この戦争。
初めは虹目の赤子をワーダスト・ヤマモエッジから守るための戦争だったが、次第にドラゴンとの存続を懸けた戦いになった。
この大きな事件すべて、自分が居たから解決できた。自分が居なかったら、この世界の情勢は大きく変わっていた。
自分で言うのもなんだけど、頑張ったな・・・
「最近席替えをして、ボッチになってしまいましたが、いまだに元気にやっています」男①




