167話 最後の戦い
なんか書けた。自分でも驚き。
「『ウィルド』、ッ!?」
ドラゴンたちの真正面に行くために『ウィルド』を使うと、一気に十メートル以上飛んだ。
いつも通りなら『ウィルド』は三メートルくらいしか飛ばないから、急な三倍上昇でバランスを崩しかけたが何とか保った。
多分ファスターがトゥルホープを介して俺に魔法性能アップのバフを掛けたんだろう・・・あ。
『ファスターってデバフ掛けれる?』
『・・・あれ、様わ?それに敬語も無くなってる』
『説得に失敗した。これはまあしょうがないにしても、更にドラゴンたちの怒りというか殺る気を高めた奴に様も敬語も使うわけないでしょ。それより、デバフ掛けれるか掛けれないかどっち?』
『え、あのデバフって『相手の能力を下げる効果のことだ』なるほど・・・理解はした』
『よし。それで三回目だけど、出来るの?出来ないの?どっちなの?』
『はいっ!出来ます!』
『ファスター、敬語復活おめでとうございます』
これはデカい。デカ過ぎる。
ファスターのバフのおかげでいつもの三倍以上の能力アップ。そこに、出来れば魔法耐性を下げれるデバフを掛けれるなら、この戦い俺たちの勝ちだ。
そうじゃなくても、攻撃の威力を下げたり、移動速度を下げれるデバフでもこの戦いの勝率を高めれる。出来るなら全てのデバフを掛けて欲しいが、高望みはするものじゃないと習ったばかり。
このバフ・デバフは失った敬語を取り戻すのに充分な物だ。にしても、デバフの説明をした時の反応・・・
『ファスターって今、俺に何かしてますか?』
『何もしてないけど?』
『じゃあ、このバフは無意識なんですね』
ファスターのこの戦いを一秒でも早く終わらせたいという思いが溢れ、それがバフへと変わっている。
『ディア!』
「『魔法障壁』」
俺たちを見下ろしているスノードラゴンとファイアドラゴンの融合ブレスを『魔法障壁』で余裕を持って防いだ。
魔力をいくら使っても、トゥルホープが居てくれれば魔力切れになることはないから、『魔法障壁』にいつもの三十倍の魔力を使った。
これだけでもいつもの三十倍の安心感があるが、ここに三倍以上アップの魔法バフがあるから、いつもの九十倍の安心感がある。
負ける気がしない。この『魔法障壁』に関しては。
融合ブレスの中を『魔法障壁』を張りながら『ウィルド』に魔力を追加して進むけど、ブレスの中でドラゴンたちがどこに居るのか分からないから、取り敢えずブレス吐かれている方向に飛ぶ。
普段の俺なら魔力を使いたくないから、ブレスに当たらないようにするけど、いくらでも魔力を使ってもいいなら、使わなくてもいい場面でも使いたくなるってのが人間という生き物だ。
・・・・・・
・・・・・・
もう、千メートルくらい飛んだと思うけど、ブレス長すぎじゃね?
射程が長いのは何となく分かってたけど、これだけ長い時間吐き続けれることに驚いた。
ファイアドラゴンさんとスノードラゴンさん口開けたままは辛いだろうな。
それにファイアドラゴンはファイアを吐いてるから乾燥とかしないだろうけど、スノードラゴンは雪を吐いてるから乾燥して、もう口の中は干からびてるだろうな。
『ディア、もう少しで着くぞ』
『分かりました。じゃあ、変わりに『魔法障壁』張ってください』
『いいけど、なぜ?』
『そりゃあ、こんな素晴らしいブレスを吐いてきたんですから、あいつらにお返ししないといけないでしょう?』
『あぁ・・・うん。よしっ、一発デッカイのをかましてやれ!!』
『アイアイサー!!』
これは命令。そう、俺がしたくてするんじゃなくて、ファスターに命令されてする攻撃。責めるなら命令したファスターを責めてください、ドラゴンたち。
ドラゴンたちに放つ大きな一発ならあの魔法しかない。その魔法は、無属性魔法の最上級魔法『レイ』
メアロノロス王国に来たファイアドラゴンが、倒してほしいからと俺に放たせた魔法。
あのファイアドラゴンが勧めてきた魔法だから、これがドラゴンという最強種を倒すのに一番適しているのだろう。
あの時のファイアドラゴンは、腹に大きな急所があるにも関わらず、俺が魔力の半分以上を使わないと倒せなかった。
これから相対するドラゴンたちは、万全で急所なんてものはないし、『レイ』が絶対に当たるなんて保証はない。
でも、生き物は脳を貫かれたら死ぬから、取り敢えず脳を狙う。
俺は『魔法障壁』を解いて、『レイ』の準備に入る。
あの時と同じように右手を銃の形にして、人差し指の指先に魔力を集める。
指先に集める魔力は、俺の魔力上限のギリギリ。少し残す理由は、トゥルホープを守り、俺の腕への負担を減らす『物理障壁』を保つため。
『ファスター、デバフはここから掛けれますか?』
『いや、姿が見えてないと掛けれない』
『じゃあ、ドラゴンたちの姿が見えたらすぐに掛けてください』
そう言い終わり、俺は心の準備をする。
魔法バフのおかげで魔力の流れがスムーズになったから、指先に半分以上集めるのに十秒掛かっていたのに、今回は十秒も掛からなかった。
ここからは少しでも気を抜くと命を奪われかねない。
このブレスの先に何頭のドラゴンたちが居るか分からないが、この一発の『レイ』で全体の二割は持っていきたい。
まぁ、一直線に放つ魔法だから難しいけど。
『ディア!ドラゴンたちが見えるぞ!』
ついに来た。最終決戦の地。いや、地じゃないから最終決戦の空か。
『ファスター!一気に行きますよ!』
俺はそう言って、『ウィルド』に魔力を一気に込めて、ブレスの中から飛び出した。
そこには、ファイアドラゴン、スノードラゴン、ストームドラゴンと様々なドラゴンたちが見れるだけで五十頭は居る。
思ってたより少ないと思いながら、俺はドラゴンたちが一番重なっている場所を探している。こういう少ない時間で考えないといけない時に青目はとても役に立つ。
ッ!見つけた!
『ウィルド』で目的地点に、最短時間と最短距離で着くと、ファスターがデバフを掛けてくれていることを信じて、俺は人差し指の先端を一頭目のドラゴンの脳に向け、少し斜め上に放った。
「『レイ』!」
さぁ、始めよう。最後の戦いを。
明日からもこのモチベ保ちたいな。




