163話 竜消滅未懸大戦
課題ようやく終わったべ
ワーダストには、戦争時のためのワーダスト軍司令基地とヤマモエッジ軍司令室がある。
ワーダスト軍司令基地は地上にあり、ヤマモエッジ軍司令室は地下にある。
そして、ワーダスト軍司令基地はドラゴンの攻撃であっさりと崩壊した。
ある建物の地下室。ヤマモエッジ軍司令室。
そこでは、光の入らない部屋に松明八本を壁に掛けて、軽装備を着ている四名が会話をしていた。
「やはり、ディアは敵だったか」
「はい。・・・一度魔法を交わした仲なので思うところはあります。ですが、戦うことになったら手は抜きません」
「いや!今すぐワーダスト軍から抜けて、向こうにつくべきです!ディアはヤマモエッジ全兵士と同等以上の力を持っています!」
「私も魔法師団長に賛成です。ディアが居る時点でほぼ負けと言っているようなものなのに、ドラゴンまで相手するとなると向こうにつくのが最善でしょう。幸いに、もうワーダストの王は死んでますから」
「はぁ!?あんたは私が負けると思ってるの!?」
「はい」
そのシンプルな返答が、更に怒りのボルテージを高めていく。
四人が囲んでいるテーブルにあるたくさんの報告書が、「バンッ!」とテーブルを叩いたことで、積まれていた報告書が崩れ、テーブルから落ちたのもあった。
「あの時は魔法だけだったから負けた!でも、今回は己の全て出して戦う総力戦。私の『本当』の戦い方なら絶対に勝ってた!」
「・・・短期決戦ならあなたに分があると私も思います。でも、ディアですよ?魔法師の弱点をすべて克服してるんですよ?」
魔法師は遠距離から攻撃をすることを得意としている。それを逆を言えば、近距離で攻撃することは得意じゃない。
魔法師は近距離で戦う騎士とは違く、体を鍛えていないから詰められるとほぼ確定で負け。
魔法を習いたての者は、「そんなの無理」と言うことが多い。だが、それを詰められないように戦うことが「一流の魔法師」への第一歩だ。
だが、ディア・シュラストという魔法師・・・いや、魔法師の枠に入れていいものか分からない化け物は、その魔法師の弱点を克服している。
それは決して、ディアの間合いに詰められないわけではない。
ただ、詰めれてもディアの膨大な魔力量の前では、騎士達の魂を込めた渾身の一撃でも悠々に物理障壁で防いでしまう。
さらに、ディアは魔法師としてトップクラスの実力があるのにも関わらず、剣を持つ騎士としてもそれなりの実力を持っている。
だから、ディア・シュラストという人間は、人間の中で欠点らしい欠点がない、完璧な人間。
「そんなの知ってるわよ!でも、私のこの装備と武器なら勝てるわ、絶対に!!」
そう言うと、腰の白色の鞘に収めているプラチナ色をしたレイピアを抜いた。
そして、レイピアの剣の部分全体を手で触れた。
「付与魔法『魔力妨害』『魔力減速』『限界魔力値低下』『魔法霧散』『魔法減速』」
そう言い終わると、プラチナ色をしていたレイピアはプラチナ色を保ちながら輝き出した。そしてレイピアを鞘に収めていた。
黙っていたテーブルの真ん中に座っている男性が口を開けた。
「・・・俺も、ディアとの戦いは望ましくないと思っている」
「!国王までそのようなことをおっしゃるのですか!?」
「・・・これは、何の為の戦いだ?」
国王と言われた男性は、反発してきた女性にそう問うが、女性は口を開けたまま答えられずにいる。
そして、十秒ほど経ったが女性から答えは帰ってこなかった。
「始めはお前の考えてる通り、人間同士の戦いだ。でも、今はもう違う。もっもやるべきことがある・・・お前なら分かるはずだ」
そう言われた女性は、先程とは違く口を閉じて黙っているが、国王の腕を組む仕草を見て意を決したのか、閉じていた口を開いた。
「・・・敵対するのではなく、ドラゴンを倒すために協力する」
「そうだ。お前が元から戦争じゃなくてディアにしか興味がないのは知っている。そして、なぜディアにこだわるかも分かっている。戦争だからディアが本気で来てくれると思っているのだろう。・・・さあ、答えを聞こう」
そう言い終わると、外の衝撃が地下の部屋にまで伝わって来る。
壁に掛けている額縁が落ち、ガラスが割れる。
ここでどう答えるべきか。分からない者はいない。脳からの伝達が来ずとも、勝手にこの言葉が口から出て来る。
「・・・私はドラゴン退治に協力します」
女性の答えを聞いた国王は組んでいた腕を机に置き、そのまま立ち上がり、黒い手袋をした。
そして、国王に続くように他の三人も黒い手袋をした。
「・・・では、行くとしよう。ドラゴン退治へ」
沼るってコワイ・・・




