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目の色で能力が決まる世界。この世界で俺はオッドアイ  作者: 北猫新夜
虹目赤子争奪戦争

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160話 戦場と思いきや

 シーーーーーン。


 周りには古びた家。その他にも、井戸や農地と思われるものがあるが、どれも使えなさそう。


 時間はまだ暗くなる時間じゃないのに、ここの空はもう暗い。そのせいで、古びた家が幽霊屋敷に見えてくる。


 空耳だと思うが、家の中や井戸の底から、音が聞こえてくる。


 俺は『空間転移』を使ったものの、『空間転移』は使用者である俺が一度行ったことがある所でないといけない。それは、『空間転移』するには、その転移したい所の周りの風景を思い出さないといけないからだ。


 街道が造られた時にワーダストへ行こうとしてたけど、プロテア陛下に「行くな。絶対に行くな。ディアは行くな」と三連続釘でを刺された。


 そのせいで『空間転移』でワーダストに転移してすぐ戦争!!・・・なんてことはなく、魔法王国ヤマモエッジの郊外にある古びた村に転移した。


 この村は、俺が学生だった時から村人が一人も居ない。三年の時に来たときは、村長夫妻二人が居たけど、来年行くともう誰も居なくなっていた。

 国王曰く、村の子供のほぼ全員が出稼ぎ先である王都に来て、そのまま結婚して、王都に住む。ということが起きて、残っていた村長や大人たちもそれにつられて王都に住み着いた。

 その他にも、出来ちゃった婚もあると言っていた。


 なので、この村は約五年間、掃除されずに放置されている。


 俺がこの場所を知っているのは、ヤマモエッジの国王にワーダストに一番近い場所と紹介されたから。

 ここから、約二キロメートルほどでワーダストの領土内に入れると国王からは言われている。


 「ワーダストに着く前に呪われて死んでしまいそうだな」


 「そうなったら、俺たち大戦犯ですね」


 ワーダストへ向かうために森に入った俺たちは、現在進行形で戦場となっている場所に向かっているとは思えないような軽い会話をしている。

 でも、本当に呪われそうな雰囲気がある森だ。冗談では済まされないかもしれない。


 『ディア!そんな会話しながら歩いていないで急げ!予想以上にドラゴンたちはストレスがたまっていたらしい』


 『分かった』


 ファスターからの知らせを聞いた俺は速度を上げた。


 「皆さん、急ぎますよ」


 そう言って、一秒でも早くワーダストに着くように最大出力で『ウィルド』を使った。


 ・・・・・・

 ・・・・・・


 ウ"ォ"ォォォォォ


 『ウィルド』で一気に二キロメートルという距離を跳ぶと、貴族街らしき豪華だった家たちが燃え上がっているのが見える。

 

 ・・・ワーダスト初めての入国なのに、初めて見る景色がこんな火事なんて。しかも、ここは火事だが、もう少し奥には入ったら凍え死ぬのではないかと思うくらい寒そうな場所がある。某冒険漫画のあの炎と氷の島に似ている。

 こういう光景を見ていると、この世界は異世界なのだと再認識する。


 空には十頭くらいの竜が口から炎やら、吹雪やら、暴風やらを吐き出している。この異常気象はあいつらが原因だな。気象にも干渉できるという自慢か?


 『まずは住民の避難だ!』


 『住民?ここに住民が居るとは思えないんだが』


 『ここじゃない。もっと奥にある黒目町という平民たちが住んでいる場所がある。あそこはまだ被害が及んでいない。あいつらには何の罪もない。そんな人らまで貴族たちに巻き込まれるのは我慢ならない』


 ・・・これだけファスターが怒りを露にするのは初めてだ。


 『了解。黒目の人たちは必ず守る』


 「おい!!そこのお前!!私を助けろ!!!俺はアサエン公爵家の跡取り息子フューガ様だぞ!!」


 漲っていた闘志が一気に活性化された。


 俺は『拡散魔法』で、叫んでいるフューガとやらに問うた。


 「公爵家の跡取りなら超人・・・お前、黒目か」


 「ッ!黒目だからなんだよ!!公爵家の跡取り息子だぞ!俺は!」


 「公爵家が重要のは分かる。でも、滅亡寸前の国の公爵家の跡取り息子がそれほど重要とは思えないんだが」


 ・・・初めは助けに行くつもりだったが、あいつの発言の一言一言がマジでイラつきすぎる。

 命の危機の前に頭が回らず焦っているのは分かるけど、アサエン公爵家・・・知るか。跡取り息子フューガ・・・知るか。そんな言葉を並べられても俺には分からないし、助ける気が失せていくだけ。


 というか、超人至上主義であるワーダストでは、黒目は必要ないだろ。

 超人同士の子供は、九十パーセントの確率で超人が生まれる。それが、黒目と超人となると、一気に下がり二十パーセントになる。


 だから、いくら公爵家の跡取り息子だとしても、ワーダストで黒目なら投手にはなれなそうだし、結婚はできないだろう。


 「滅亡?ワーダストを舐めるな!!ドラゴンの十頭くらいワーダストの魔法士なら楽勝だ!!」


 「お前こそ、ドラゴンを舐めるな!!」


 俺がそう言うと、フューガが居るところに火が全体にまとわり付いた大きな板が倒れた。

 そして、フューガはそれに気付いたのは、俺がフューガに『物理障壁』を使った後だった。


 ワーダストの貴族、しかも国王の次の公爵家の跡取り息子を助ける筋合いなんてない。むしろ、助けたくなかった。

 黒目街の人間だけ助ければいいとおもっていたけど、火の板がフューガに当たる直前ファスターに「助けろ」と言われたような気がした。


 「時間がないんだ。後は自分で何とかしろ」


 俺はそう言って、『魔法障壁』をフューガに張り、水の最上級魔法『フラリュージ』を放った。


 フューガの周りで炎が燃え上がり、火花が散っていたのを『フラリュージ』の最大火力で消化した。『アクアタイダル』でもよかったけど、『アクアタイダル』を使うのはしんどい。それに津波の想像はもうしたくない。


 トゥルホープが居るから魔力面での心配はない。心配なのは俺の精神が持つかどうか。


 「早く逃げろ。お前は見逃してやる」


 俺がそう言うと、フューガは自身に身体魔法掛けたようで、俺たちが来たヤマモエッジ側に逃げて行った。


 「ふぅ・・・これからが本番だな」


 初め見た時よりも被害が広がっているのを見て、最大出力で『ウィルド』を使った。

 

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