16話 入学式
俺が学生寮に入りルニアに出会って三日が過ぎてクルミナの入学式の日を迎えた。俺は今、クルミナの学生服に身を纏い、たくさんの生徒の一番前でこれから入学式が始まる会場で待っている。空は晴天。
俺の後ろにステナリア、その後ろにルニアと成績順で並んでいる。そして俺の前にはロレアス学園長が立っている。
ちなみに俺とルニアは走ってここまで来たがここに居る生徒で一番遅かった。
会場ではステナリアの兄であり、クルミナの生徒会長のプロテアの声が聞こえてくる。ステナリアを見ると、目をつぶりながら静かに待っている・・・いや、プロテアの声を聞くことに集中している。
「ディア、何でステナリアは急に黙り出したんだ?」
ステナリアは先ほどまでルニアと話していたが、プロテアの声が聞こえてくるとその話をやめてプロテアの声を聞くことに集中しだした。
「こいつの大好きな、大好きなお兄様が今会場で話していて、その声を聞きたいからだよ」
「へ、へぇ~」
ちなみに先ほどステナリアとルニアが話していた内容はプロテアについて。
ルニアとそんな会話をしていると会場内で凄く大きい拍手の音が聞こえて来た。
「皆!これから順番に会場内へ入っていく。座席は前に言ったどうりだ」
ロレアス学園長がそう言うと会場の門の左右に立っていたクルミナの教員らしい二人に向かってロレアス学園長は頷いた。それに頷いた二人は同じ歩幅で歩き、同じタイミングで門の取っ手を握り、同じタイミングで門を開けた。揃いすぎだろ・・・
門を開けると先ほどの拍手の音がさらに大きくなり、会場の中ではたくさんの人が俺たちの方を見ていた。そして門が全開されるとロレアス学園長が歩き出したので俺たちはロレアス学園長の後ろを着いて行く。
俺は生徒では一番最初に会場に入るのでとても緊張している。
そして会場の中に入ると拍手がまたさらに大きくなった。俺は緊張を隠すために無の感情で指定された座席に行く。俺の目は今頃虚ろだろうな...
角を曲がる時にステナリアやルニアを見ると、こういう場に慣れているんだろう。緊張などは一切しておらず笑顔で歩いていた。
歩き続けていると自分の座席に着いたので「着席」と言われるまで立たないといけない。
早く着席と言ってくれと思いながら待っているとプロテアから着席と拡散魔法で言われたので俺たちは座席に座った。
そして少しするとロレアス学園長が皆の前に出て入学式の始まりを宣言した。
そして司会進行するのは生徒会長のプロテアと紹介された。
入学式の最初は入学主席の言葉。俺はこれを聞いた瞬間気絶しそうになった。いざ、本番になってみると余計に緊張してくるがこれを乗り越えないと次へ進めないので覚悟は決めている。
「では、これからか入学式を始めます。初めに入学首席によるあいさつです」
名前が呼ばれたので俺は席を立ち、階段を上がり、皆の前に立った。
俺は息を整えるために一度深い息を吐いた。そして拡散魔法を施してあるマイクのような魔道具を手に持った。
・・・・・・
・・・・・・
「以上、入学首席ディア・シュラストでした」
俺はそう言い終わると魔道具を置き、一礼した。俺は皆からの拍手を受け取りながら階段を降り、席へ着いた。
今、俺の心臓部分に耳を当ててみると皆絶対驚くと思う。よく噛まなかったなと、自分を自分で褒めてやりたい。
俺が席に座り心臓をさすっているとプロテアが次に驚きなことを言い出した。
「次に、入学主席からのあいさつです」
ん?普通こういうのって首席だけがするだけじゃないのか?俺はこの入学式の流れを知らずに今、ここに居るので次に何がくるのか分からない状態である。
ステナリアはプロテアにそう言われると席から立ち上がり、俺と同じルートで皆の前まで行き、挨拶を始めた。
・・・・・・
・・・・・・
「以上、入学次席ステナリア・スカシユリでした」
ステナリアはそう言って一礼をしたところ俺の時の何倍も大きな拍手がステナリアに向けられていた。
・・・これはいじめ?いや、これはプロテアが元々俺の挨拶が成功するとは感じていなかったのだろう。だから、ステナリアに挨拶を言わせて入学式を大成功させようと言う算段か・・・
俺は会場の隅に居るプロテアに物凄い殺意を送った。これなら俺、挨拶しなくてもよかっただろ。
俺がプロテアに殺意を送っているとステナリアが席に戻ってきた。ステナリアは嬉しそうな顔をしていた。そりゃ、あんだけの拍手を貰えば嬉しくもなるか。
俺はステナリアにも殺意を送った。するとステナリアは俺の方を見て「まぁ、まぁ」みたいな手の動きをした。てめぇのせいでこうなってんだよ!
そして入学式は進み、入学式最後のロレアス学園長の挨拶の時間になった。
ロレアス学園長は笑顔で階段を上がり、魔道具を持って、皆の前に立った。
「ご入学おめでとうございます。この学園の学園長のロレアス・マナガリオです。今回も皆さんのおかげでとても良い入学式になりました。
私はこの学年は粒ぞろいが多い印象がとても強いので全力で教育に携わらしていただきます。
クルミナでの5年間が有意義なものであったと皆さんに言われるように全力を尽くします。
保護者の皆さま、五年後の子供たちを楽しみに待っていてください」
ロレアス学園長はそう言って魔道具を置き、一礼するとステナリアの時よりも大きな拍手がロレアス学園長に向けられた。
そしてロレアス学園長が階段を降りると、プロテアによって入学式終了された。
入学式に来た保護者達は会場から出て行ったが、俺たちはその場に残れと言われたので残っている。
「ディア、何でそんなに怒ってるんだ?」
「いやいや、怒っているんじゃないよ。ただ、これだったら俺じゃなくステナリアでよかったじゃんって思っているだけだよ」
ルニアから問われた質問に俺はそう答えた。
すると二人は驚いたような顔をした。
「私だけでよかったって、クルミナでは男女のそれぞれの主席が入学式で挨拶をするんですよ?」
「え、」
「まさか、知らなかったのか?男女の主席が入学式で挨拶するのはクルミナの伝統だぞ?」
俺は少し間をあけてステナリアを見て・・・
「ステナリア、すまん」
「もういいんですよ。まぁ、でも分かります。拍手の音は私の方が大きかったですもんね?落ち込むのはよく分かります」
「お前・・・ぶっ殺・・・」
危ない、危ない、ステナリアにそんなことを言ったら余計に煽られるに決まっている。どうせ「殺せるものなら殺してみてください。殺せるのならね?」とか言われて返り討ちに遭うのが分かる。
そして俺がステナリアへの怒りを落ち着かせようと深呼吸をしていると、ロレアス学園長が俺たちの前に来た。
「これから君たちにはクラスに別れてもらう。一クラス20人の五クラスに別れてもらう。まずは最前列の20人起立!」
俺たちは立ち上がった。
「君たちは、A組になる。そして、あの黒い服を着た口元に髭が生えているのが君たちの5年間の担任だ」
ロレアス学園長が指を指した所には黒いロングコートを着て、手をポケットに入れ、身長も175くらいあり、口元に髭が生えており、髪は黒色でオールバックで、水目を持った超人が居た。
この人が俺たち5年間の担任・・・
そして俺たちは担任になる先生の前に集まっていた。
「ほぉ、オッドアイの持ち主が二人か。これは腕がなるな。俺は「ソルバト・ラルネイ」だ、よろしく」
俺たちA組の生徒は「よろしくお願いします」と合わせて言った。
「早速だが、これから教室に行く。俺の後ろを着いてこい」
そう言ってソルバト先生は歩き出した。
これから俺のクルミナでの学園生活が始まる。楽しみだ!
次の話は一気に飛びます




