159話 いざ、戦場へ
少しずつペースを戻していきたいな~
『空間転移』でアキレア王国の王城の謁見の間に転移すると、予想外な者たちが居た。
「おい!なんでお前が!・・・ッ!そいつが虹目の奴か」
転移してきた謁見の間には、四国最強最強決定戦で俺たち人間を見下していたバヴが居た。バヴはメアロノロス王国騎士団長のアルベルトや、学園長のロレアスを破って準決勝まで来た実力者だったが、上位種族でドワーフのベルモンドに倒された。
俺としてはバヴを敬っていたアルスを倒すことが出来たから満足したけど、他の人たちはバヴに言われたままだからやり返したい気持ちがあると思う。
まぁ、今はそんなことをしている時間はないが。
「カランコエ陛下、急で申し訳ないのですが、私たちはこれから戦場であるワーダストに向かいます。そのために、騎士団長や魔法師団長、そしてカランコエ陛下自身もワーダストへ着いて来てはくれませんか」
無茶の要望だとは分かってる。でも、俺たちがこの戦争に勝つには、この人たちは必ず居ないといけない。
「ハハハ!ディア、その誘い,もちろん受けよう」
カランコエ陛下は豪快に笑いながら、王座の後ろに立てかけていたカランコエ陛下の相棒「大剣デルワイス」を右手で握って持ち上げた。
「虹目が生まれた影響か分からないが、力がみなぎってくるんだ。この力、そなたたちに授けよう」
そして、カランコエ陛下は騎士団長ケトラセスと魔法師団長ロジックを招集した。
騎士団長のケトラセスと魔法師団長のロジックは、元々四国最強決定戦の物理戦選手と魔法戦選手で出場予定だったけど、急遽団長案件が発生したので出場不可能になった。
この二人の代わりに召集されたのがナノハさんとヴィター。
「おい!その戦い、俺たちも参加させろ」
「・・・それはいいけど、絶対に生きて帰れる保証なんてないぞ」
俺がそう言うと、バヴと横にいるウヴはいつしかの光景を思い出させるように、指をボキボキ鳴らし始めた。
「お前を見てると思い出すんだ、魔法王国ヤマモエッジ。己の肉体ではなく、魔法でしか戦うことが出来ず、魔法にしか脳を使うことが出来ないあの連中を」
魔法王国ヤマモエッジ。学生時代に、魔法研究会の野外研修で五回ほど行ったことがある。そして、ワーダストと同盟を結んでいる国。
俺たちが来る時・・・というか、ヤマモエッジでは月一のペースで魔法士最強決定戦をやっているから、「楽しそうだな~」の軽いテンションで参加したら、無双してしまった。
しかも、その大会にはヤマモエッジの魔法士団副団長が参加していたのを知ったのは、大会の表彰式の時に国王から言われた時だ。
そして、優勝した大会から一年が経って再び魔法士最強決定戦に参加すると、今回は魔法士団長が参加していた。もちろん、その大会でも優勝した。
自分の自慢の魔法士たちを相手に無双してしまったからか、卒業してからも、ヤマモエッジの国王直々に招待されたりした。
でも、ワーダストとの一件後、ヤマモエッジの国王からは招待は来ていない。
魔法王国と言っているが、あの国ではワーダストと同じように超人が優遇される。
だが、ヤマモエッジでは青目、水目に生まれたなら、将来は絶対安泰。人生出世コースに乗ることが出来るが、他の目ではそうはいかない。
魔法王国だから、魔法関連の目を求めている。
「俺のどこをみたら思い出すんだ?俺は魔法だけじゃなくて剣も使えるぞ。俺はオールラウンダーだからな」
「ハッ!なら、今からでもあの時の続きをするか?」
「続き?続きも何も、君は物理戦の準決勝で負けたじゃん。それに、俺は格闘戦が大の大大得意なんだ。毎日のように命の危機に陥ったのを思い出すよ」
ステナリアに何度も骨を折られ、その度に回復魔法を掛けてもらったからなのか、俺の骨は頑丈になり、折れてもすぐに治るようになった。
今みたいに急いでいる時でないなら、バヴに人間様の恐ろしさを刻み付けてやろうと思っていたが、バヴも今はそんなことをしている時ではない事は分かっているらしい。
「この戦争が終わったら、その自信過剰を粉々にしてやるよ!」
バヴはそう言うと、謁見室の扉を思いっきり開けて出て行った。
そして、出て行ったバヴの後ろを追うようにウヴとシュウリュウ二体が出て行った。
「頼もしいですな」
「はい。でも、後が大変ですけとね」
そんな会話をカランコエ陛下としながら待っていると、騎士団長と魔法士団長が来た。
「紹介しよう。騎士団長ケトラセスと魔法団長よロジックだ」
カランコエ陛下から名前が出ると、二人は会釈した。それに、俺も会釈して返した。
「では、行きましょうか。ワーダストへ」
俺の肩にカランコエ陛下、ケトラセス騎士団長とロジック魔法師団長が手を乗せた。
「カタリナさんはいいんですか?」
周りに居るアキレア王国の重臣たちと一緒に見ているカタリナさんが「私も行きたい!」みたいな目でこちらを見てくる。
俺としては連れて行ってもいいと思っているけど、それを決めるのは親であるカランコエ陛下。
「カタリナには・・・まだ、荷が重過ぎる」
一瞬だけカタリナさんの方を向いてそう言うと、すぐにこちらに顔を戻した。
俺はそれを見て、ワーダストへ『空間転移』を発動した。




