151話 必ず、守ってみせる
昨日投稿しようと思ったんですが、疲れていて、投稿する前にぐっすりと眠ったのです。
でも、これは誕生日に投稿するためだったのかもしれない・・・
今まで黙っていたセトラが、大きく、覚悟を決めたかのような声でそう言った。
ただ、急にその覚悟を決めたような声が聞こえて来たので、俺の心臓は死にかけている。
「はぁ、はぁ、はぁ」
この声は、耳から聞こえるのではなく、脳内から聞こえて来る。耳からなら、急に聞こえて来ても、音は空気が振動することで聞こえて来るから、急に聞こえて来ることはないだろう。
だが、脳内からは、本当に急に聞こえて来るので、こっちの方がビックリ感は強い。
今、会議室は静かじゃないのに心臓に手を当てなくても、自分の心臓の鼓動が激しく、「ドクッ、ドクッ」と聞こえて来る。
「フォーーフゥーー」
俺はゆっくりと深呼吸を三回した。これで、激しい心臓の鼓動が治まってくれた。
『ご!ごめんさない!!』
あ、元のよわ・・・優しい声に戻った。やっぱり、セトラはこっちの声の方が合ってるな。キャラ的に。
『ハハッ!マジでビビったよ、セトラ!でも、その覚悟は十分に伝わって来るよ。・・・じゃあ、竜との契約解除を始めようか』
どうして、最初にファスターが笑ったのかは分からないが、ファスターがそう言うと、セトラは「はい!」と言った。
こうして、セトラの竜との契約解除が始まった。
・・・・・・
・・・・・・
セトラが竜との契約を解除するのは、時間が掛かるらしいので、その間に俺は自分のことをする。
プロテア陛下もちょうど帰る準備が終わったので、俺たちはスカシユリ王国に帰る。
だが、俺たちは帰る前に寄らないといけない所がある。そこには、真の希望が眠っている。
ルニアに案内してもらっているが、もう、何となく分かって来た。
まだ遠いが、俺たちの視線の先には、部屋の扉の前に十人以上の武器を持った人たちが見える。
「多いな!」
「護衛は多いに越したことはないですからね」
マンガスさんがそう驚いた声で言うと、ルニアがそう説明した。
そして、その中護衛たちの中には会議室で見た顔が並んでいる。トゥルホープ親衛隊の方々だ。
俺たちはトゥルホープ親衛隊の方々が居る部屋の前まで行くと、俺たちに気付いたトゥルホープ親衛隊の方々が、守っている部屋の扉を開けてくれた。
「ありがとう」
ルニアがトゥルホープ親衛隊の方々にそう言った。そして、俺たちは立ち止まることなく、ナノハさんの寝室に入った。
寝室にもトゥルホープ親衛隊の方々が居て、俺たちが入って来ると、驚いたような顔をしていた。
・・・それにしても、流石は大国の王妃様の寝室。壁の装飾品やベットが、スカシユリ王国の王宮の寝室の何倍も掛かりそうだ。
そして、二倍はある部屋の大きさ。これが、小国と呼ばれている国と、大国と呼ばれている国の差。
この国の差に、スカシユリ王国の国王であるプロテア陛下を見ると、何か決心したかのような顔をしていた。
流石は俺たちの国の国王だ。驚いてはいるだろうが、怯んではいない。
寝室には、一つのベットがある。でも、そのベットが俺の部屋のベットの四倍くらいの大きさ。存在感がすごい。
ベットの周りに雄黄色の薄いレースカーテンが掛かっているので、薄らとナノハさんが眠っているのが見える。
「・・・おい、そうまじまじと見るな、変態め」
「俺は変態じゃない。それに、親友の妻にそういう感情は湧かないな」
俺の言っているのは本当のことなんだが、もう一つ、そういう感情が湧かない理由がある。
それは、俺の右に居る妻からの圧だ。
今、俺の右からとてもつもない圧を感じる。だからこそ、そんな感情になる余裕がない。
この圧を向けられれば、誰だって頭の中に残るのは「圧」だけになる。常人が受ければ、意識を保つことも出来ないかもしれない。
これが、赤目の中では最強の者だけが持つ圧。・・・羨ましい。
俺も圧だけで人を倒せたり、抑制したりしてみたい。
俺が前進するだけで、周りの居る敵を一掃するとか男の夢だろ。
そんなことを考えていると、ルニアが雄黄色のレースカーテンを開けた。
レースカーテンを開けると、出産の時から着ていた軽いワンピースを着ながら、トゥルホープの顔が見えるように眠っていた。
ナノハさんの来ているワンピースは、出産のための服なので、薄い。そして、今のナノハさんはそのワンピースしか着ていない。
ステナリアに回復魔法を掛けてもらってはいるけど、眠たいのか、隙がすごい。
俺は少しだけ背伸びをしたら、先程よりも凄まじい圧が俺に向けられた。
そして、俺はすぐに背伸びをやめた。いや、止むを得なかった。これが、俺の生存ルートだから。
「・・・トゥルホープは行っちゃうのね…」
「あぁ。でも、ディア以上の護衛は居ないだろ?」
ルニアがそう少しだけ笑って言うと、ナノハさんも軽く「ふふっ、そうね」と笑って返した。
そして、ゆっくりとトゥルホープを抱いて立ち上がったナノハさんは、俺の所までゆっくりと歩いて来た。横にはルニアが。
「トゥルホープをよろしく頼みます」
ナノハさんはそう言うと、ルニアと同時に頭を下げた。
トゥルホープ親衛隊の方々は、国王と王妃様が他国の貴族に頭を下げるという行為に驚いている。だが、俺の周りの人たちは驚いていない。この二人の思いが分かるからだろう。
俺もこの二人の思いをしっかりと受け止めて、トゥルホープを預かった。
「必ず、守ってみせる」
俺がそう言うと、ルニアとナノハさんは安堵した表情を見せた。
そして、プロテア陛下とステナリア、マナガスさんとビュリさんが俺の肩に手を乗せた。
俺はそれを確認すると、『空間転移』を使って、スカシユリ王国に帰った。




