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目の色で能力が決まる世界。この世界で俺はオッドアイ  作者: 北猫新夜
虹目赤子争奪戦争

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150話 千年前の竜との契約

 本当なら、俺たちはスカシユリ王国に帰っているのだが、先程の竜事件で帰ることが出来なくなった。


 竜の対策もそうだが、俺が『空間転移』を使える魔力が無い。トゥルホープに頼もうかとも思ったが、ナノハさんとの眠りを邪魔するわけにはいかない。


 「ディア、どうたった?あの竜」


 「一言で言うなら、最強」


 今回の赤目の竜は弱点の傷口があって、向こうが自分に協力してくれたから、その傷口に魔法を当てて、倒すことが出来た。


 でも、これから来る竜は、今回来たような竜ではないだろうな。皆が皆、傷口があるわけでもなければ、死にたいとも思っていない。


 今回の赤目の竜が特殊だっただけだろう。


 はぁ。本当にこれから先が不安になるばかりだ。


 ダンジョンでのファイアドラゴンは、『エクスプロージョン』で倒せたが、あれはヴァレルスの力の半分を持った分身体だったから。


 こういうのは、弱いものから順に出て来るのがお決まりだと俺は思っている。


 赤目の竜を倒すには弱点の傷口があってもなお、魔力消費四〇〇の『レイ』を使わなければ、ならなかった。


 なら、弱点も無く、俺に協力してくれるとも分からない竜には、魔力消費が四〇〇では済まないだろう。もしかしたら、竜を一匹倒すのに俺の全魔力を使うかもしれない。


 あぁ!!こんなこと考えると、更に不安が募っていく。


 あぁ、やばい…。頭痛もして来た・・・


 『おいおい!俺たちの救世主がこんなところでへばってくれちゃあ困るぞ?それに、お前が思っているようにはならないぞ』


 あぁ…。頭痛に更に変な声まで聞こえて来た・・・あれ、この声。つい最近聞いたような・・・?


 『・・・!俺が救世主って、俺からすればあなた方の方が救世主ですよ。・・・それより、思っていることにならないとは?』


 『・・・お前、一瞬僕が誰か忘れただろ!?』


 『いやいやいや!神を忘れるわけないじゃないですか!』


 『お前が焦っている時は、「いや」が三つ出る。つまり、図星だったわけだ。それに、僕たちは皆が考えていることが分かるんだ』


 ・・・それを早く言ってよ。なら、頭の中を真っ白にしてたのに。


 『もう、覚えました!・・・それより、俺の質問の答えはどうなんですか?』


 『だ・か・ら!お前の思っていることにはならないと言っているんだ!』


 「お前の思っていることにならない」ということは・・・


 俺の考えていた「弱点も無く、協力も出来ない竜が来る」ということが、起きないということか?


 一瞬、なぜそんなことが分かるんだと思ったが、ファスターのさっきの言葉でその言葉がとても信用出来るようになった。


 ファスターたちの「皆が考えていることが分かる」という能力は、きっと、人限定などの縛りはないのだろう。縛りがあるなら、事前にそう言うだろうし。


 『あ、でも、竜は来るよ!』


 『・・・信じた俺がバカだった!』


 『え!?』


 『竜が来るってことは、また、こんな戦いをしないといけないってことだろ?無理無理!竜が来るたびに、トゥルホープの所に行って、魔力を回復してもらうなんて出来ないぞ!』


 『別にトゥルホープじゃなくても、君の妻のステナリアに魔力回復してもらえばいいじゃいか。金目だろ?』


 ・・・この人は一体何を言っているんだ?


 「ステナリアに魔力を回復してもらえ」「光目だろ」・・・やっぱり、神っていうのは人とは違うんだな。回復魔法を神が使えば、更に回復魔法は万能魔法に変化する。


 『ファスター様、人間の光目は・・・魔力を回復できないんですよ』


 『な!なんだと!?!?』


 そりゃ、俺たちも何度思ったことだろうか。回復魔法で魔力が回復しないかって。


 何度ステナリアに頼んだだろうか。魔力を回復できるか、確かめてみてくれって。


 この世界は、まだまだ未知数だらけだ。そして、それは魔法も同じ。


 俺が大陸最高峰の学園であるクルミナで習って来た事が、どれだけ小さなことだったかを何度も実感した。


 しかし、回復魔法で魔力の回復は出来ない。それは、俺が何度もステナリアから確かめたことだ。


 『う~ん。それは困ったな。こうなると、ディアの傍にはいつもトゥルホープが付いてないといけない』


 『それは無理だ』


 『分かってる。・・・はぁ、こうするしかないか。・・・セトラ、竜との繋がりを解除するんだ』


 『えぇ!?そ、そんなことしたら、ワーダストが危ないじゃないですか!!』


 『そのワーダストのせいで、トゥルホープが死ぬかもしれないんだぞ?まぁ、お前がワーダスト出身だから、自国を危ない目に遭わせたくないのも分かる。でも、僕たちの使命を知っているだろ?』

 

 『・・・虹目を守る…こと』


 『あぁ、そうだ。千年前にワーダストが竜と契約したのも、ワーダストにセトラという虹目が誕生したからだ。でも、今回はメアロノロス王国にトゥルホープという虹目が誕生した。・・・お前も見たいだろ?虹目が成長する姿』


 ファスターの言葉に、セトラは何も返さない。ずっと黙っている。


 でも、さっきのセトラの声は、泣くのを我慢しているようだった。俺は口から言葉を発せずに脳内で会話することが出来るから、そのような声になることはない。でも、ファスターとセトラは実際に言葉を発して会話している。


 セトラは泣き声が聞こえないようにするために、黙っているのかもしれない。まぁ、俺にはこの脳内会話がどういう原理で出来ているのかは分からないが。


 いつも、俺からじゃなくて、向こうから話しかけてもらっているから、話が出来ている。


 「では、その方針で行こうか。ディア、よろしく頼むぞ」


 「えっ…あ、あぁ」


 ファスターとセトラとの会話に意識を集中させ過ぎたせいで、ルニアのその「よろしく頼むぞ」という言葉の意味が分からない。


 俺は一体何をよろしくされたんだ?


 とりあえず、何か返そうと思って、絶対分かっていないような返事をしてしまった。


 『トゥルホープのことをお前に任せるらしいぞ』


 そう思っていると、ファスターが教えてくれた。


 「トゥルホープのことは、安心して任せてくれ」


 絶対分かっていないような返事に、この言葉を付け加えた。これなら、俺が分かっていると証明できただろう。


 俺がそう言うと、ルニアは安堵したかのような顔になった。不安にしてスマンな。


 そして、会議室での会議が終わったので、ようやく、スカシユリ王国へ帰ることが出来る。


 席から立つと、かるく背伸びをして、その場でかるくジャンプをした。


 これは、席に座っていたから体が硬くなっているというわけではなく、これからの戦争に向けての準備運動。


 こんな体育の授業前・・・いや、体育の授業前の方が準備運動の質は高いだろけど、これが戦争に向けての準備運動だと言ったら、皆に笑われるか、怒られるだろうな。


 そして、プロテア陛下の準備を待っていると、急に頭の中に大きな女性の声が聞こえて来た。


 『やります!!解除します!!』

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