145話 竜・・・早過ぎじゃない!?
時間が・・・時間が・・・
「空?」
「あぁ。空だ」
俺は右手の人差し指を上に向けて、ルニアにそう答えた。
周りを見ると、俺の「空」という言葉に納得いってないのが伝わって来る。
「皆さんは、ワーダストの近くに住んでいる生き物を知っていますか?」
「竜だろ?」
俺の質問にルニアがそう答えると、俺は「正解だ」と言うように頷いた。周りを見ると、皆もこのことは分かっている反応だ。
「なら、その竜が「なぜ、ワーダストの近くに住んでいるか」知っていますか?」
「千年前の戦争で、虹目の力で従えられたからだと言われてますね。そして、虹目である主を失った竜は、従われたワーダストの近くに自分たちの巣を作った」
「はい。そして、これは、ファイアドラゴンから聞いた話なんですが、虹目が現れると再びワーダストが竜を操れるらしいんです。」
俺が「ファイアドラゴンから聞いた話」と言うと、ルニア以外の皆は目を丸くしていたが、そのファイアドラゴン聞いた話を聞いた皆は頭の上に?を浮かべている。
まぁ、話の流れだとそう思うのが普通だろう。
「その話からなら、千年前の虹目に従われた竜を虹目のトゥルホープが操れる流れじゃないのか?なぜ、操れるのがワーダストなんだ?」
ルニアが皆が思っていたであろう疑問を俺に聴いてくれた。
「竜を従わせるときに、ある契約をするらしいんですけど、その契約に竜を操れるのは「ある一族のみ」という契約をした。だから、竜を操れるのはその「ある一族」だけなんですよ」
「しかし、ディアにその話をしたあのファイアドラゴンは、ダンジョンの宝箱から出た「竜笛」で呼ぶことが出来るだろ?これは、操れていると言えるんじゃないか?」
ルニア・・・お前は頭が良いのか悪いのか本当に分からない奴だな。
俺はそう思いながら、ルニアに答えた。
「あのファイアドラゴン・・・ヴァレルスは千年前の戦争の後に生まれたらしい。だから、虹目に従わされなかったが、三百年前にある人間と仲良くなり、自分を呼ぶことが出来る竜笛を渡した。竜笛は「呼ぶこと」が出来ても「操る」ことは出来ない。でも、ヴァレルスに認められれば、完全には操れないが少しは操れるだろうな」
俺がルニアにそう説明すると、周りから「おぉ~」という声が聞こえて来た。
「ふ~ん。そうなのか。・・・ディア、全然関係ないんだが、そのヴァ・・・「ヴァレルス」そう!ヴァレルスって何歳なんだ?」
いや、本当に全然関係ないな。そんなに気になるか?と思ったが、答えないとこれから先の話が進まない。
「それは俺も聴いたんだが、ヴァレルスに「女性に年齢を聴くんじゃない!!」って威圧されながら言われたから、年齢は知らん」
あの時の俺が思ったのは「お前・・・女性だったの!?」だった。
口調や太く迫力のある声から完全に立派な男性と思っていた。そこで「人間の姿とかになれないのか?」と聴くと、「なれるが・・・それは、今じゃない」とよく分からない理由で断られた。
でも、最低でも三百年が経っているので、年齢は相当行っているだろうと思っている。八百歳か九百歳かな?
「ということは、警戒すべきは迷界の森と空か」
「はい。そうだと思います」
俺がロウバイさんにそう答えると、ワーダストに対する話が進み、兵たちの割り振りやルニア一家の行動について話すこと二時間。会議室での会議が終わった。
これからは、各国に戻り、準備をしないといけないが、俺とステナリアとルニアは分娩室に来ていた。
なぜなら・・・
「ナノハとトゥルホープのために死んだんだ。ちゃんと埋葬しないとな」
分娩室で起こった悲劇「ワーダストの二人組男、襲撃事件」で亡くなってしまった、二人の男と五人の女性助産師を埋葬するため。
埋葬する場所は、メアロノロス王家の歴代国王が埋葬されている場所。そんな所に一般人が埋葬されるのはどうかと思うかもしれないが、次期国王のトゥルホープのために亡くなったなら、この場所に埋葬されてもおかしくない・・・とルニアがロウバイさん説明していた。
俺は『エイロック』で地面を、人が七人入るくらいの大きさの穴を掘った。
そして、俺たちは七人の死体を綺麗に並べて、『エイロック』で掘った時に出た土を埋葬するのに使い、七人を埋葬した。
土魔法で埋葬してもいいと思ったのだが、ルニアに「それは失礼だ!」と言われて、こういう埋葬の仕方になった。
埋葬し終わると、埋葬した所の前で手を合わせ、目を閉じた。
「ありがとう。君たちの犠牲は必ず世界を救う」
ルニアがそう言い、俺たちはその場から去り、皆が待っている王城に帰ろうとした時・・・
「ワ"ァ"ァァァ」
「「「!」」」
ダンジョンで得た竜笛を鳴らし、ヴァレルスが来た時の声とよく似ている。だが、ヴァレルスよりも迫力がある。
やはり、空から来たか。でも、早くない!?・・・いや、竜なら一瞬か。
メアロノロス王国に俺たちが会議室で話していた、この世界の最強種である竜が来た。
俺は竜の声がした方を向くと、目を丸くした。
なぜなら・・・
「赤目の竜・・・」
欲しい




